eぶらあぼ 2016.2月号
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びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136 https://www.biwako-hall.or.jp/滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、関西随一のオペラ劇場として、一流のオペラやバレエに加えコンサートも開催。また、国内外の実力派アーティストが充実したアンサンブルやソロも披露するほか、講座なども開催しています。このコーナーではびわ湖ホールで行われる注目公演をご紹介します。びわ湖ホールPreview 傑作揃いのモーツァルトでも、とりわけ歌劇《フィガロの結婚》は、新進世代のキャストで観ると楽しい一作。というのも、《フィガロ》ほどに「丁々発止のやりとり」が続くオペラはそうそう無く、そうした機敏な歌の応酬も、稽古の時間を十分に取ってこそ成り立つからなのだ。 本作の登場人物は「ひと癖ある」者ばかり。フィガロの婚約者で機知に富むスザンナ、彼女の主人の悩める伯爵夫人ロジーナ、こまっしゃくれた娘バルバリーナ、フィガロを狙う侍女長マルチェッリーナと女性陣からして多彩である。対する男性勢も、男気ある従僕フィガロ、スザンナを狙う好色な伯爵、色気づいた小姓ケルビーノ(女性が男装して演じる)、狡猾な音楽教師バジリオ、フィガロにかつて煮え湯を飲まされ、今は復讐を誓う医師バルトロなど、それは賑やか。台本作家ダ・ポンテの腕前も見事で、各人の言葉に深い人間味が潜むから、どのシーンも見逃せないのである。 そこで筆者が紹介したいのは、来る3月に、びわ湖ホール声楽アンサンブルがこぞって出演する《フィガロの結婚》である。今回は、現役団員のみならず、卒業し各地で活躍するソロ登録メンバーも加わる顔ぶれとのこと。「劇場専属の声楽アンサンブル」というと、日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、ドイツを始め欧州の劇場は必ずと言って良いほど専属の声楽アンサンブルを持ち、その一人ひとりがソリストとして活躍しているのである。また、今回の公演では、気鋭のマエストロ園田隆一郎が指揮台に立ち、フレッシュな歌い手たちと共に音楽を纏め上げるのも注目の的。このオペラならではの生命感を想うと、若々しいアーティスト勢の競演ならば、舞台もいっそう見応えあるものになるだろう。気鋭の逸材たちの覇気ある歌いぶりが、大いに期待できそうだ。 ちなみに、18世紀末の作では類を見ないほど、《フィガロ》の音楽は入り組んでいる。というのも、伯爵と従僕の頭脳戦を代表格に、対立の構図をモーツァルトが誰よりもきめ細かに描いたから。ちょっとした言葉の綾で心模様が激変するさまを、この神童は日常とほぼ同じスピードで音楽に移し替えている。その点を演出家の岩田達宗はこう語る。 「《フィガロの結婚》は大芸術家ダ・ポンテとモーツァルトの人間愛が生み出したリアルな人間描写の金字塔。二人は、(当時の上演水準では)実現不可能かもしれなかった、自分たちの『理想』をそのまま書いたのではないか。そんな超時代的な《フィガロ》で描かれるのは、いわば『矛盾している人々』です。それは、僕たちの周りで現実に生きている、当たり前のリアルな人間たちなのです」 そう、《フィガロの結婚》とは、オペラにおける「リアリティの塊」。今回は2日間の公演で、両日とも岩田の解説トークが開演前に設けられるとのこと。名作オペラの凄みに気軽に接する好機として、幅広い世代に足を運んでいただききたい。園田隆一郎文:岸 純信(オペラ研究家)びわ湖ホール オペラへの招待 モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》フレッシュな顔ぶれで描く多彩な人間模様びわ湖ホール声楽アンサンブル岩田達宗 ©大阪音楽大学びわ湖ホール オペラへの招待モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》(イタリア語上演・日本語字幕付)指揮:園田隆一郎 演出・お話:岩田達宗舞台監督:菅原多敢弘管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団3/26(土)、3/27(日)各日14:00(上演前に演出家によるお話があります)びわ湖ホール 中ホール出演:びわ湖ホール声楽アンサンブル伯爵伯爵夫人スザンナフィガロケルビーノマルチェッリーナバルトロバジリオクルツィオバルバリーナアントニオ*びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー (3/26)      (3/27)林 隆史    五島真澄黒澤明子*     岩川亮子飯嶋幸子     藤村江李奈的場正剛     砂場拓也山際きみ佳    鈴木 望森 季子*      本田華奈子相沢 創*(両日)古屋彰久     島影聖人川野貴之     増田貴寛栗原未和*(両日)迎 肇聡*(両日)

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