eぶらあぼ 2016.2月号
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コンサートギャラリーチケット発売情報News & TopicsNew Release Selection新譜情報TV&FMBooks海外公演情報ぶらPAL今月の注目公演公演情報181クラシック新刊情報モーツァルト 最後の四年 栄光への門出クリストフ・ヴォルフ 著 礒山 雅 訳春秋社 ¥2500+税 バッハ研究の世界的権威であると同時に、モーツァルト研究の分野でも第一線で活躍しているドイツの音楽学者クリストフ・ヴォルフ(1940〜)が2012年に発表し話題を呼んだ著作の待望の邦訳。 本書でヴォルフは、最後期のモーツァルトの作曲活動、とくに宮廷での業務にフォーカスし、これまで主流だった「不遇で貧窮のうちに生涯をとじた」モーツァルト像を大胆に否定して、この時期の彼を「大志に胸を膨らませて幸運へと門出する若者」として描く。 最後の4年間の所産である「新鮮な創意が満ち溢れた」傑作群、すなわち3大交響曲、バッハの対位法的書法の影響下に成立したピアノ作品、ピアノ協奏曲第27番、歌劇《魔笛》、「レクイエム」などは、けっして現世への惜別の辞などではなく、ウィーンの宮廷楽長としての誇りに満ちた若き天才作曲家の創造活動の新たな一歩であるとするヴォルフの主張は、モーツァルト受容に新たな一石を投じるものである。 綿密な作品分析や最新の研究成果が集約されているだけに、たとえば、書きかけのフラグメント(断章)とスケッチを手がかりとしてモーツァルトがいかなる作曲法を用いていたかを探るくだりなど、モーツァルト・マニアならば読んでいて知的興奮をおぼえることうけあいである。しかも文中で紹介されている未完の室内楽作品(弦楽三重奏曲ト長調K.Anh.66、弦楽四重奏曲ホ短調K.Anh.84、弦楽五重奏曲イ短調K.Anh.79など)の楽譜と音源については、本書のために用意された特設サイト*1 から閲覧・試聴が可能なので研究者にとって有益であろう。またそれとは別に日本語版サイト*2 も設けられている。 一般読者の興味から言えば、1791年のモーツァルト作品のなかで、多くの謎に包まれている「レクイエム」を扱っている第5章に関心が集まるかもしれない。今年は偶然にも「レクイエム」を補作したモーツァルトの弟子のフランツ=クサヴァー・ジュースマイヤーの生誕250年にあたり、改めて彼の業績にスポットが当たるであろうから、その意味でも本書は重要だ。 なお、巻末には文中に登場する人名と作品の索引が付いており便利極まりない。モーツァルト愛好家ならば必携の書と言えるだろう。*1 http://www.people.fas.harvard.edu/~cwol*2 http://composed.webcrow.jpオペラでわかるヨーロッパ史 加藤浩子 著 平凡社 ¥780+税大学講師で、“音楽物書き”である著者が、「歴史とオペラの関係」をまとめた。歴史を題材にしたオペラの中から《ドン・カルロ》《トスカ》《ボリス・ゴドゥノフ》など、それらの作品の題材となっている時代と、成立した当時の時代背景、作曲家、原作者など、作品に関わる多くの話題について広く掘り下げ、オペラの魅力を紹介する。イタリアの都市とオペラ福尾芳昭 著 水曜社 ¥2800+税大学教授であり、オペラ・ファン歴60年、16ヵ国104劇場で観劇したという著者が、イタリア14都市とシチリアに縁のある35曲のオペラを都市ごとにまとめ、都市とオペラの関係を考察した。初心者から上級者まであらゆるオペラ・ファンに向けて、各都市の概要、オペラ小史、作曲家、歴史・伝説、舞台、楽派などを解説。シベリウスの交響詩とその時代神話と音楽をめぐる作曲家の冒険 神部 智 著 音楽之友社 ¥3600+税日本シベリウス協会理事を務め、音楽学博士である筆者が「個性的な交響詩の創作を通してシベリウスが目指した表現世界とはいかなるものであったのか」を「フィンランディア」や、フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』をモティーフに書いた「クレルヴォ」「レンミンカイネン」など6つの作品を中心に読み解く。「音大卒」の戦い方 大内孝夫 著 ヤマハミュージックメディア ¥1600+税音楽で培った力は音楽以外の道でも通用する。著者が音大生を指導する中で感じた「音大生の持つスキル」を紹介するとともに、目的をかなえる思考法、年齢別アドバイスなど実践的な手法を交えて人生の「サバイバル」と「豊かさ」について追求する。音大生、卒業生、全ての音楽好きが自立した豊かな人生を送るための新世代バイブル。

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