eぶらあぼ 2015.12月号
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184CDCDCDCDエピソード・キャトリエム/冨岡祐子魔法使いの弟子̶東京六人組DEBUT!新実徳英:弦楽四重奏曲第2番「アスラ」 他/クヮトロ・ピアチェーリクラヴィーアの国“ウィーン”/浜松市楽器博物館コレクションシリーズ54J.S.バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第3番BWV1029/フランク:ヴァイオリン・ソナタ/ジョラス:エピソード・キャトリエム/アーン:クロリスに冨岡祐子(テナー・サクソフォン)佐野隆哉(ピアノ)プーランク:六重奏曲/ルーセル:ディヴェルティスマン/ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲/デュカス:魔法使いの弟子/フランセ:恋人たちのたそがれ/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ、ボレロ東京六人組【上野由恵(フルート)、荒絵理子(オーボエ)、金子平(クラリネット)、福士マリ子(ファゴット)、福川伸陽(ホルン)、三浦友理枝(ピアノ)】新実徳英:弦楽四重奏曲第2番「アスラ」、ピアノ三重奏曲「ルクス・ソレムニス」、チェロ・ソナタクヮトロ・ピアチェーリ【大谷康子、齋藤真知亜(以上ヴァイオリン)、百武由紀(ヴィオラ)、苅田雅治(チェロ)】若林顕(ピアノ)モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタKV526、ピアノ四重奏曲KV478フンメル:ヴァイオリン・ソナタop.50、大七重奏曲op.74 他小倉貴久子(フォルテピアノ)若松夏美(ヴァイオリン/ヴィオラ)武澤秀平(チェロ) 他マイスター・ミュージックMM-3060 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCC-00121 ¥3000+税カメラータ・トウキョウCMCD-28323 ¥2800+税コジマ録音LMCD-2041,2042(2枚組) ¥2900+税テナー・サックスへの固定概念が、覆されてしまうはず。「サクソフォン・カルテット・アテナ」で活躍する冨岡のソロ・デビュー盤。無伴奏で構築する、現代フランスのベッツィー・ジョラスによる表題作を軸に。深遠な響きの宇宙を多彩な音色で創造してゆくのは、ブール=ラ=レーヌに学んだ彼女ならでは。バス主題にバッハを引用した20世紀のアーンでは、しなやかなプレイで聴き手にそっと寄り添う。一方で、弦楽器作品からアレンジしたバッハとフランクでは、原曲の楽器表現をトレースするのではなく、あくまでサックスならではの表現を追求。新たな地平を切り拓いてゆく。(笹田和人)今をときめく若き木管奏者たちと気鋭の人気ピアニストによる、華やかで実力もバリバリな夢のアンサンブルがデビュー。プーランクやルーセルによるオリジナル作品で王道をおさえ、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」やデュカス「魔法使いの弟子」は色鮮やかに。一方で少年時代にラヴェルの薫陶を受けたというジャン・フランセによるパリの街角スケッチ風「恋人たちのたそがれ」では小粋にユーモアとエスプリを効かせてみせる。そして、そのラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」で魅了し、最後は全員が楽器を持ち替えての「ボレロ」(川島素晴編)の驚異的妙技に脱帽!(東端哲也)新実作品はコワい。地霊の潜む大地から、呪いのエネルギーを帯びて立ち上ってくる巨木のような音楽である。この特性は管弦楽曲だろうが、ほかの編成だろうが一貫しているが、コワさという点ではひたひたと迫ってくる室内楽にいっそうのインパクトがあることが、このディスクを聴いて良く分かった。チェロ・ソナタでは、ピアノとチェロの低音が束になってぶるぶると空気を震わせ、重音グリッサンドが平衡感覚を失わせる。弦楽四重奏曲「アスラ」では吹きすさぶ風が地獄の業火へと変貌する。新実の創作のキーワード「らせん」に、思わずジャパニーズ・ホラーの古典的傑作映画を連想してしまった。(江藤光紀)フォルテピアノの紹介と啓蒙に力を注ぐ名手が、1795年モデルによるレプリカと1810年頃に製作されたオリジナル、浜松市楽器博物館に所蔵された、ウィーンの名匠アントン・ヴァルターによる2つの楽器を弾き分けたアルバム。前者ではモーツァルト、後者では彼の弟子フンメルの作品を取り上げ、わずか10年余という時間が、単に音域の拡大だけでなく、ピアノの音色へ劇的な変化をもたらしたことを教えてくれる。楽器ごとの美点を巧みに引き出す小倉に加え、ヴァイオリンの若松ら共演陣のしなやかな音色も魅力的。興味本位の“聴き比べ”にとどまらず、音楽的な愉悦も存分に味わえる。(寺西 肇)

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