eぶらあぼ 2015.11月号
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67CD『鳥の歌~無伴奏コントラバス作品集』マイスター・ミュージックMM-3061¥3000+税10/24(土)発売©Yoichiro Nishimura吉田 秀しゅう(コントラバス)コントラバスの音の“色”や“肌触り”を表現したい取材・文:渡辺謙太郎Interview オーケストラの縁の下の力持ちとしてアンサンブルを力強く支えるコントラバス。NHK交響楽団の首席奏者としてその重要なパートを牽引する吉田秀が、約2年ぶりにソロ・アルバムを発表した。深く艶やかな響きが魅力の無伴奏作品集で、重要作品かつ難曲揃いのプログラムだ。 「編曲ものも考えたのですが、やはりコントラバスの“素の音”にこだわりたくて。オーケストラで絨毯のような役割を果たす、この楽器の音の“色”や“肌触り”のようなものを表現できればと思いました」 冒頭のドラゴネッティ「6つのワルツ」は、3部形式の舞曲風音楽。これに続くのが、チェコ出身の名コントラバス奏者ガイドシュの「カプリッチョ第2番」だ。 「ベートーヴェンと親交のあったドラゴネッティのワルツは、様々な技巧を駆使しますので、練習曲にも適していますね。コントラバスに精通しているガイドシュの作品は、難曲なのに弾き手に無理な技巧を強いないのが流石。美しい中間部は、同郷のドヴォルザークに似たチェコの田園風景を彷彿とさせます」 後半のトゥレツキー「ポエム、ポートレイト、バラード、ブルース」と、ビバロ「舟なき船旅」は、コントラバスと人間の声とのコラボレーションが聴きどころだ。 「アメリカ人のトゥレツキーは、古典、ジャズ、現代音楽と幅広く手がけるコントラバス奏者。彼が敬愛する作曲家や演奏家に捧げたこの作品(全6曲)は、演奏者の語りが出てくるのですが、私は原文の英語を知人に頼んで日本語訳して貰ったものを使用しています」 一方、イタリアのビバロによる作品は、ソプラノ歌手と独奏コントラバスのためのシアター・ピース(全4曲)。共演は日本が誇る名歌手・天羽明惠だ。 「天羽さんとはN響でも度々共演していて、彼女の洗練された色気のある歌声と表現力をずっと尊敬していました。『4つの絵画による4つの夢』が描かれているこの作品の真の姿を伝えられるのは、彼女しかいないと思ってお願いしたんです。録音のための準備期間が折りしも夏の音楽祭シーズンと重なってしまい、僕のいた軽井沢と彼女の滞在する草津を互いに往復しながら練習を重ねたので、思い入れもひとしおです」 そして当盤は、チェロの巨匠カザルスの愛奏曲として知られるカタロニア民謡「鳥の歌」でしめやかに結ばれる。 「様々な編曲があるので、コントラバスで演奏してもいいのかなと思って。実は、チェリストが協奏曲などの後アンコールとしてこの作品を無伴奏で弾くのを、ずっと格好いいと思っていたのです。今回はその“長年の夢”を密かに叶えることができました(笑)」ミカラ・ペトリ(リコーダー) 新たな可能性を拓くリコーダーの女王文:寺西 肇©Søren Solkaer 澄み切った音色と超絶的な技巧で聴衆を魅了する、デンマークのリコーダーの名手ミカラ・ペトリ。クリストファー・ホグウッドら古楽の先駆者のみならず、ジャンルを超えたアーティストとコラボレート。古典作品はもちろん、新作初演なども手掛けて、リコーダーという楽器に新たな地平をもたらしている。その一方、社会貢献活動にも力を注ぎ、普段は家族と共に、ひっそりと地方の街で日常生活を送る彼女のライフスタイルも多くの人の共感を呼ぶ。 来日リサイタルでは、チェンバロの西山まりえとの共演。バッハのフルート・ソナタホ短調を原曲とするソナタト短調、テレマン「音楽の練習帳」からソナタハ長調、ヴァイオリン作品から編曲のタルティーニ「悪魔のトリル」やコレッリ「ラ・フォリア」、ヴィヴァルディのピッコロ協奏曲ハ長調などバロックから、現代イギリスのゴードン・ジェイコブ「ソナチネ」(1985年)まで多彩に披露する。ここへ、西山がバッハ「イタリア協奏曲」など、ソロ曲も添える。12/17(木)14:00 19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 https://www.hakujuhall.jp

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