eぶらあぼ 2015.11月号
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59ゲルハルト・オピッツ(ピアノ) シューマン×ブラームス連続演奏会 第1回ベートーヴェンに影響された2人に光を当てる文:高坂はる香カルミナ四重奏団セバスティアン・マンツ(クラリネット)との共演&モーツァルト「レクイエム」大家最晩年の名作が、新たな輝きを放つ!文:柴田克彦11/19(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831http://www.pacific-concert.co.jpウィークエンド・コンサート 室内楽の魅力 ブラームス 第1回~最晩年の出逢い 11/29(日)14:00クァルテット・ウィークエンド カルミナ四重奏団~モーツァルト「レクイエム」 12/5(土)14:00第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net これまでにも日本において、ベートーヴェンのソナタ全曲演奏会やシューベルトの連続演奏会など、得意とするドイツ・オーストリアもので意欲的な演奏会シリーズを行ってきたゲルハルト・オピッツ。この11月にスタートする待望の新シリーズは、シューマンとブラームスを組み合わせた全4回(1年に1回ずつ)にわたる連続演奏会だ。深い親交を結びながらも全く異なるタイプだった二人の天才が、ともにベートーヴェンを崇敬していたことに着目し、それぞれが受けた影響の違いを浮き彫りにするというもの。 前半に取り上げるシューマンからは、作曲家の性格が如実に表れる「子供の情景」と「幻想曲」。とくに後者は、ボンのベートーヴェン記念像建立への寄付のために作曲され、ベートーヴェンの歌曲からの引用などもある、ベートーヴェンと深いつながりのある作品だ。 カルミナ四重奏団は、精緻な構築と柔らかな呼吸感が共生した、稀有の名カルテット。1984年スイスで結成され、世界トップ級の立場で活動を続ける彼らが、晩秋の第一生命ホールで刮目すべき公演を2つ行う。 1つは、モーツァルトとブラームスが名手との出会いに晩年の境地を重ねた至高の名作である2つのクラリネット五重奏曲によるコンサート(11/29)。独奏のセバスティアン・マンツは、2008年ミュンヘン国際コンクールのクラリネット部門で40年ぶりの1位を獲得後、シュトゥットガルト放送響のソロ奏者を務めるドイツの名手だ。カルミナ四重奏団は、ウォルフガング&ザビーネ・マイヤー兄妹との再三の演奏や録音を通じて、両曲に特別な思いを抱いているという。しからばザビーネの弟子マンツと共に、究極の名演を聴かせてくれるに違いない。 もうひとつはモーツァルトの「レクイエム」(12/5)。何と弦楽四重奏だけでこの声楽付き大作を奏でるという驚きの公演だ。楽譜は、モーツァルトと同時 一方、後半のブラームスからは、「2つの狂詩曲」に加え、大曲「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」が演奏される。ベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」と並んで変奏曲の名作と称されるこの曲で、ブラームスがベートーヴェンから引き継いだものが示されることだろう。シューマンが受けたのとは違った形の影響を、はっきりと見ることができそうだ。 3人の作曲家達と深く向き合ってきたオピッツならではの、興味深いプロ代の作曲家リヒテンタールの編曲版に基づき、教会音楽家を父にもつ第1ヴァイオリンのエンデルレがアレンジしたもの。スイスの音楽祭で初演され、好評を博している。ヴィオラのチャンプニーいわく「頭を切り替えて弦楽四重奏ならではの親密さに耳を傾けると、作品の真価がよりクリアに見えてくる。何よりグラム。自然で深い味わいを持つあたたかい音が、作品の内面性を静かに描き出し、新しい発見をもたらしてくれるに違いない。大いに期待しよう。私たち自身が演奏のたびに心を動かされる」との由。まるで想像がつかないだけに、聴いてみたいとの思いひとしおだ。公演日はモーツァルトの命日ゆえ、天才の名作が新たな光を帯びて蘇るに相応しく、また四重奏の「不協和音」も演奏されるので二重の楽しみが味わえる。これは室内楽ファンならずとも大注目!セバスティアン・マンツ ©Christine Schneideカルミナ四重奏団 ©Christian Lanz

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