eぶらあぼ 2015.11月号
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56鈴木雅明(指揮) バッハ・コレギウム・ジャパン オール・モーツァルト・プログラムBCJが初めて、モーツァルトのシンフォニーに挑む!文:笹田和人ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団知性派ノットの面目躍如たるプログラム文:江藤光紀11/22(日)16:00 サラマンカホール問 ふれあい福寿会館サービスセンター058-277-1110 http://salamanca.gifu-fureai.jp第89回 東京オペラシティシリーズ11/28(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511第93回 新潟定期演奏会11/29(日)17:00 新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ問 りゅーとぴあチケット専用ダイヤル025-224-5521 音楽監督の鈴木雅明のもと、2013年にバッハの教会カンタータ全曲演奏・録音という偉業を完遂させたバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)。その新たなステージへの幕開けを告げる歴史的瞬間に立ち会えるに違いない。BCJが初めて挑戦するモーツァルトのシンフォニー、中でも最も人気の高い第40番。これまでもバッハのカンタータから鮮烈なサウンドを引き出し、世界中の聴衆を驚かせてきた彼らは、新鮮な感動を与えてくれるだろう。 バッハの作品の啓蒙に尽力したとして、12年にはドイツ・ライプツィヒ市から「バッハ・メダル」を授与され、近年はモダン楽器のオーケストラに客演し、ロマン派の音楽にも取り組んでいる鈴木。BCJとのモーツァルトへの取り組みは06年の「レクイエム」に始まり、2年前にも同曲に挑戦して秀演を聴かせただけに、今回の交響曲は、「満を持して」の感。今まさに、鈴木のモーツァルト観が結実されつつある証と言えよう。 ノットと東響の蜜月ぶりはいろいろな人から伝わってくるし、実際にそれは演奏にも如実に表れている。「東響はいいシェフに恵まれた」とみんな思っているはずだ。そんな矢先、就任2シーズン目にして驚きのビッグニュースが飛び込んできた。ノットが東響の任期の10年延長(2026年まで)を早々と決 今回、交響曲第40番は、クラリネットを含まない初期稿を採用。資料研究を怠らない、鈴木の姿勢が垣間見える。また、これに先立ち、鍵盤楽器奏者としてだけでなく、作曲・指揮・プロデュースなど、マルチな才能を発揮する息子の優人とのオルガン連弾で、音めたというのである。 まだキャリア上昇の余地のあるノットのような指揮者にとって、これはなかなかの英断である。いよいよ油が乗ってくる10年を東響と共に過ごすというのは、それだけこのオーケストラに深く惚れ込み、音楽人生を賭けているという証だからである。高い評価を得てきたドイツ・バンベルク響との協業の軌跡を考えると、ワクワクしないではいられない。 さて、11月の東京オペラシティシリーズと新潟定期も、新しさと古さを組み合わせ、ひねりの利いた音楽の旅へと仕立てた、知性派ノットらしいプログラミングだ。メインは親しみやす楽時計のために書かれた2つの作品を披露。さらに、イギリス出身のソプラノで、2年前のBCJのモーツァルト「レクイエム」でも美声を聴かせた、キャロリン・サンプソンを迎えての「エクスルターテ・ユビラーテ」を添えた、オール・モーツァルト・プロで臨む。く、どこか懐かしいメロディーが満載のドヴォルザークの交響曲第8番。バルトークは音楽の民族的要素をモダンな感性と結びつけたが、「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」でも、そうした精神は十分に発揮されている。そして冒頭にはフェルドマン「ヴィオラ・イン・マイ・ライフⅡ」が置かれた。同じ音型が延々と反復されることで有名な作曲家だが、この作品はアルカイックなたたずまいを持ち、珍しくメロディらしきものも登場する。フェルドマン入門にぴったりだ。ハンガリーとチェコ、東欧の民族性を掘り起こしながら、現代と巧みに架橋させるシェフの腕前を堪能したい。鈴木優人 ©Marco Boggreve鈴木雅明 ©Marco Boggreveジョナサン・ノット ©K.Miura

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