eぶらあぼ 2015.11月号
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41シアター オーケストラ トーキョー創立10周年&福田一雄指揮活動60周年記念演奏会11/15(日)14:00 Bunkamuraオーチャードホール問 チケットスペース03-3234-9999 http://www.ints.co.jp福田一雄(指揮)バレエの真髄を知る楽団ならではのコンサートを!取材・文:柴田克彦Interview 日本唯一の“バレエのための管弦楽団”として、熊川哲也が芸術監督を務めるK バレエ カンパニーを支え続ける「シアター オーケストラ トーキョー」が、創立10周年記念演奏会を行う。音楽監督・福田一雄は、言わずと知れたバレエ指揮の第一人者。その活動は60年にも及ぶ。 「貝谷バレエ団の『シンデレラ』日本初演で稽古ピアノを弾いた時から数えれば60年以上でしょうか。最初は各バレエ団から稽古ピアノの声がかかり、本番を振る指揮者の横で助言している内に、『福田さんが振った方が踊りやすい』と言われて指揮を始めました。以来多くの舞台に関わり、例えば『白鳥の湖』の演奏は3000回を超えています。ただ、即興的なところは、ジャズやシャンソン、ミュージカルに携わった経験も大いに役立っていますね」 バレエ音楽には「3種類ある」という。 「1つ目は序曲のような“音楽100パーセント”、2つ目は“踊りの伴奏”、3つ目は芝居の後ワルツになる…といった“音楽50+舞台50”のケース。このうち3つ目がシンフォニー指揮者にはできない。稽古ピアノの経験などを通した“あうんの呼吸”が必要です。それにバレエは、衣裳、照明、装置を含めた総合芸術であり、なおかつオペラとの違いは、舞台上にいるのが演奏家ではないこと。だからこそオーケストラが重要なポジションを占めていると思っています」 シアターオケは「音楽に色があり、情景を表現できる日本唯一のオーケストラ」とも語る。 「『劇場音楽の延長線上にあるのがシンフォニー』との観点から演奏するオーケストラは他にないでしょう。今回もその特徴を生かしたオール・チャイコフスキー・プログラムに。『イタリア奇想曲』はイタリアの空に触発された色のある作品、交響曲第5番も歌やワルツなど彼の特色が最も出ている作品ですから、シアターオケだからこそ可能な交響音楽をお聴かせできます」 これら2曲は、「オペラの下稽古など、日本人としては稀な勉強をしている」と福田からの信頼厚い、同楽団の指揮者・井田勝大が振る。そして福田は自身編纂した「チャイコフスキー・スウィート」を世界初演する。 「『白鳥の湖』の序奏、同じく黒鳥の場面のヴァイオリン独奏、『眠れる森の美女』の序奏、ハープのカデンツァ、パ・ダクシオンのチェロ独奏、『くるみ割り人形』の序曲、中国やこんぺい糖の踊り、数あるチャイコフスキーのワルツの中で私が一番好きな『くるみ~』の最後のワルツ、『白鳥~』のナポリの踊りのトランペット独奏等を経て、交響詩的な『白鳥~』のフィナーレに至る35分強の音楽になる予定です。通常の組曲とは違った視点による構成と、同楽団が誇る各楽器の名手のソロを楽しんでいただけます」 他では聴けないチャイコフスキーの妙味を、ぜひ体験したい。12/1(火)19:00 浜離宮朝日ホール問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://www.concert.co.jpベン・キム(ピアノ)挑戦的な選曲に聴く俊英の深化文:長井進之介 アメリカ生まれのベン・キムは、なかなか1位を出さないという厳しさでも有名なミュンヘン国際音楽コンクールで2006年に優勝し、世界的に注目を集めたピアニスト。ショパンを中心に幅広いレパートリーを持つ彼は現在、活動の拠点をベルリンに移しており、ヨーロッパ、アメリカ、アジアで着実にキャリアを重ねている。 09年からは日本でもたびたびリサイタルを行い、既にファンも多い彼が、今年も浜離宮朝日ホールでリサイタルを開く。今回はキムの十八番であるドビュッシー「喜びの島」をはじめ、スクリャービンのソナタ第5番、ブラームスのソナタ第3番など、音楽性と技巧とが試される作品を軸に、ヤナーチェクやジェフスキーといったまだ日本ではメジャーとはいえないレパートリーが並ぶ挑戦的なプログラム。音楽に対する深い洞察力、高い知性と温かい人柄を感じさせるキムの演奏を様々な作品の演奏を通して楽しめる、またとない機会となるはずだ。

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