eぶらあぼ 2015.11月号
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32METライブビューイング2015-16 http://www.shochiku.co.jp/met NYのメトロポリタン・オペラ(MET)の最新公演を映画館で気軽に楽しめる『METライブビューイング(以下METLV)』。年々ファンを増やし、今や世界70ヵ国で上映されている。日本は最初の年に配給された6ヵ国に名を連ねた、“METLV先進国”だ。配給される演目はその年のシーズンのMET公演の看板公演ばかり。それがリーズナブルな値段で楽しめるのだから、支持されるのも当然だ。ラインナップを飾る公演は、「これぞオペラ!」の期待感を満たしてくれる伝統的でゴージャスなプロダクションから、MET初演や世界初演も含めた「今」の空気を伝える舞台まで多彩だが、新鮮な演目でも観客を楽しませる視点を忘れないのがMETがMETたるゆえんだろう。 きら星のようにスター歌手が出演するのもMETの強みだ。METLVを観ていれば、今が旬の、そしてこれから旬を迎える歌手や指揮者がよくわかる。 新シーズンのラインナップも、METの魅力満載だ。10演目中6演目が新制作ということからも、METがライブビューイングにかける意気込みがわかる。ベテランと若手を巧みに配したキャスティングも魅力的。新制作のなかでもゴージャスさではとびきりなのが、第7作の《マノン・レスコー》。“ザ・テノール”、J.カウフマンと、美貌と美声で大注目のライジング・スター、K.オポライスという豪華な顔合わせは、情熱的なプッチーニの音楽にぴったりだ。 前半に控える3本の新制作も必見だ。第2作の《オテロ》は、現地のシーズンオープニングを飾る演目。21世紀のオテロ歌い、A.アントネンコの劇的で剛毅な声、新星、S.ヨンチェーヴァの心に触れる─ネトレプコの《イル・トロヴァトーレ》など2015-16シーズン前半の作品の見どころを中心に─歌、若手指揮者のトップスター、Y.ネゼ=セガンのドラマティックな指揮が揃い踏み。ガラスの宮殿にオテロの心理を具現する、B.シャーの演出もスリリングだ。オペラ史上最強のファム・ファタルを衝撃的な音楽で描く第4作の《ルル》は、上演が常に注目される20世紀オペラの傑作だが、今回のキャスティングも期待大。この役で世界的にブレイクしたM.ペーターセンがルルを歌い、奇想天外なドローイング(描画)で話題を呼ぶW.ケントリッジが演出をするという豪華版なのだから。 ほぼ1世紀ぶりにMETの舞台に復活する第5作の《真珠採り》では、人気実力ともに最高潮を迎えた名花、D・ダムラウに注目。フランス・オペラは「自分に合っていて大好き」と語る彼女、この春にMETでやはりフランスものの《マノン》を歌って大成功を収めている。演技と歌が一体になるダムラウの真価が発揮されるに違いない。男声陣もスター揃い、「海」の香りが立ち上るP.ウールコックの演出も、作品の雰囲気を伝えてくれそうだ。 METの、いやオペラ界の女王と呼んでも過言ではないA.ネトレプコは、第1作の《イル・トロヴァトーレ》に登場。METLV開幕のプリマとしてすっかり定着した。花形バリトン、D.ホヴォロストフスキー、アジア期待のテノール、Y.リーともども繰り広げる“声のバトル”に酔いしれたい。大御所J.レヴァインが指揮する第3作《タンホイザー》も大きな話題だ。本作はレヴァインにとって、1977年以来62回も指揮しているほど重要なオペラ。現代を代表するワーグナー歌手が結集した見応え聴き応え満点のプロダクションだ。文:加藤浩子10周年を迎えたMETライブビューイングの魅力《イル・トロヴァトーレ》 ©Marty Sohl/Metropolitan Opera《ルル》 ©Kristian Schuller/Metropolitan Opera

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