eぶらあぼ 2015.10月号
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文:渡辺謙太郎 写真:中村風詩人バーは、日常の疲れや悩みや喜びを打ち明けられる場所 日常とは異なる空間で心を和ませたり、昂ぶらせたりするという意味で、バーとコンサートホールはよく似ている。その2つを上手にはしごできた時、幸せは何倍にも増幅することだろう。日本有数のバーが所狭しとひしめく銀座。そこでひときわ強い個性と魅力を放つのが、「BAR TALISKER(バー・タリスカー)」の内田行洋さんだ。温かみのある木材を基調とした空間に込めた思いを「癒し」と語る。 「銀座はステイタスの高い街ですが、僕はお客様に心地よくゆったりとお酒を楽しんでもらいたい。バーは日常の疲れや悩みや喜びを打ち明けられる場所だと思うのです」 バックバーやカウンターのあちこちに、彼の愛してやまない『ルパン三世』やスティーブ・マックイーンのグッズが置かれ、「癒し」をユーモラスに演出する店内。BGMはクラシックやジャズのアナログ盤が中心で、柔らかな音色がカウンターに染み込むように響き渡る。 店名は、スコットランドのスカイ島にあるシングルモルト・ウイスキー蒸留所の名前。この由来にも「内田さんらしさ」がよく表れている。 「シングルモルトの中でタリスカーが一番好きという訳ではないんです(笑)。でも、スモーキーな甘みとほのかな海の塩の香りを特徴とするこのお酒は、ストレートだけでなく、ロック、水割り、ソーダ割りといった様々な楽しみ方がある。自分もバーテンダーとしてかくありたいなと」 日本有数のウイスキー・バーとして知られる一方、カクテルにも大きなこだわりを持つタリスカー。『マイ・スタンダード・カクテル―ベースの酒の生かし方』というカクテルブックの著者でもある内田さんが、今回お薦めにと作ってくれたのが、「モスコミュール」と「ダークラムのダイキリ」だ。 よく冷えた銅製のマグカップにウォッカとライム果汁を注ぎ、ジンジャーエールを加えて作ることが多い前者。だが、彼は本来のレシピであるジンジャービア(ショウガと糖を発酵させたジンジャーエールのルーツ)を使い、果汁もライムにレモンを混ぜる。さらに生のショウガをすりおろしたり、コショウを使ったりと、常時3種類の「モスコミュール」を用意しているというから凄い。 そして、濃厚なダークラムとライムとグレナデン(ザクロ果汁と砂糖のシロップ)をシェイクする後者。その赤みがかった色彩とまろやかな味わいは、秋冬の人気カクテルのひとつで、銀座のネオンや音楽シーンにもよく映える。BAR TALISKER(バー・タリスカー) 東京都中央区銀座7丁目  5-12 藤平ビル B1F 月~金 18:00~26:00  土18:00~23:30 日曜、年末年始 ¥1000 (21:00までに入店:¥500) 03-3571-1753 ヤマハホール、王子ホールInformationBAR TALISKERVol.2銀座コンサートの余韻を美味しいお酒とともに味わえるホール近くの素敵なバーをご紹介しますオーナーの内田行洋さん235

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