eぶらあぼ 2015.9月号
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65©オノツトム小曽根 真 クリスマス・ジャズナイト 2015シンフォニックジャズ モーツァルト×ガーシュウィン12/22(火)19:00 Bunkamuraオーチャードホール問 Bunkamuraチケットセンター03-3477-9999 http://www.bunkamura.co.jp小曽根 真(ピアノ)モーツァルトとジャズが出会うゴージャスな一夜取材・文:藤本史昭Interview おそらくは、年末恒例のメイン・イべントに据えている人も少なくないだろう。世界的ジャズ・ピアニスト、小曽根真のセルフ・プロデュースによるジョイフルでラグジュアリーなコンサート、『クリスマス・ジャズナイト』が、今年もBunkamuraオーチャードホールで開催される。 毎年趣向を凝らした編成と演出、プログラムで我々を楽しませてくれるこのコンサートだが、「シンフォニックジャズ モーツァルト×ガーシュウィン」と題された今回は、5年ぶりに小曽根率いるビッグバンド、No Name Horsesが登場。しかもメイン・ディッシュはピアニスト自身がビッグバンド用に編曲したモーツァルトのピアノ協奏曲第9番「ジュノム」とくれば、ジャズ・ファン、クラシック・ファン、双方ともに聴き逃すわけにはいかないだろう。 「これは3年ほど前、スコティッシュ・ナショナル・ジャズ・オーケストラからのオファーで書いたものです。モーツァルトとジャズをどこでミートさせるか、特に冒頭部分をどうするかで2年半ほど悩みましたが、いったん決まってしまえばあとは一気呵成に書き上げました」 2014年、スコットランドでおこなわれたその初演は大絶賛を博したが、今回は小曽根が「自分のファミリー」とまでいうNo Name Horsesでの本邦初披露。 「まるで“どこでもドア”でニューヨークとザルツブルクを目まぐるしく行き来する感覚と、ビッグバンドの男性的な艶っぽいサウンドでモーツァルトを聴くというアンバランス感を楽しんでいただきたいですね」 一方、第1部ではガーシュウィンやバンドのオリジナル曲などジャズの醍醐味が味わえるナンバーがふんだんに演奏される予定。曲目は現時点では未定だが、例年思いもよらない演出でオーディエンスを驚かせてくれる小曽根のこと、ここでもこのコンサートならではのサプライズを用意してくれるに違いない。 さらに今回はもう1つ、特にクラシック・ファンならあっと驚くトピックがある。“神様”とまでいわれるNYフィルの首席トロンボーン奏者、ジョゼフ・アレッシがバンドの一員として出演するのだ。 「NYフィルのアジア・ツアーで仲良くなって、ビッグバンドに興味があるというからダメ元でお願いしてみたんです。そうしたら年末にもかかわらずいろいろやりくりして参加してくれることになって。誘ったほうが驚いてます(笑)」 小曽根真と彼の仲間たちが贈るゴージャスなシンフォニックジャズの夕べ。このクリスマス・プレゼント、受け取らない手はない。10/4(日)16:30 小金井 宮地楽器ホール(小金井市民交流センター)問 プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jpスクリャービン没後100年 ピアノ・ソナタ全曲演奏会ソナタ全曲で堪能する“鬼才作曲家”のピアニズム文:笹田和人アレクサンドル・スクリャービン 今年は、近代ロシアの鬼才作曲家、アレクサンドル・スクリャービンの没後100年。これを記念して、ベテランから俊英まで、第一線で活躍する10人の日本人ピアニストが一堂に会し、ピアノ・ソナタ全10曲を一気に披露する意欲的なステージが開かれる。 当日はまず、西尾真実による第1番に始まり、志村泉が第2番「幻想ソナタ」、村上弦一郎が第3番を披露。1度目の休憩を挟んで、船橋泉乃の第4番、田中正也の第5番、太田由美子による第6番が続く。2度目の休憩を経て、矢澤一彦が第7番「白ミサ」、中野孝紀が第8番、岡田敦子が第9番「黒ミサ」、そして第10番を松山元が弾いて締め括る。リムスキー=コルサコフと親交を結んでいた青年期の1892年に発表した第1番に始まり、ニーチェの超人思想に心酔し、独自の「神秘和音」を編み出した第4番、そして、現代音楽の先駆者と目されるに至った1913年の第10番まで。鬼才スクリャービンの創作と精神の変遷を、一級の演奏で一度に堪能できる、貴重な機会となるだろう。

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