eぶらあぼ 2015.8月号
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38ワレリー・ゲルギエフ(指揮) 東京交響楽団チェスキーナ洋子 メモリアルコンサート音楽界のパトロネージュ精神を称えて文:飯尾洋一第13回 東京音楽コンクール若き才能の躍動を体感する文:笹田和人8/5(水)19:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp第2次予選 8/21(金)~8/24(月) 東京文化会館(小)本選 8/26(水)18:00 木管部門、8/28(金)18:00 声楽部門、8/30(日)17:00 弦楽部門東京文化会館(大)問 東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 http://www.t-bunka.jp 2015年1月、音楽家の支援者として知られるチェスキーナ洋子氏が、82歳で世を去った。新聞等の訃報によって、改めてその功績の大きさを知ったという方も多いだろう。東京芸大ハープ科を卒業し、東京交響楽団のハープ奏者を経て、1960年に戦後初の公費留学生としてイタリアのヴェネツィア音楽院に留学。資産家であるレンツォ・チェスキーナ氏と結婚し、巨額の遺産を文化芸術活動の支援に費やした。ワレリー・ゲルギエフやロリン・マゼールといった名指揮者たちとの親交も深く、ロシア・マリインスキー劇場に隣接する新劇場やコンサートホールの建設、ニューヨーク・フィルの北朝鮮公演などにも多大な貢献を果たしている。 そんなチェスキーナ洋子氏の功績を称えて、8月5日、ゲルギエフが東京交響楽団を指揮して、急遽メモリアルコンサートを開催することになった。故人ゆかりの楽団とマエストロの組合せは、メモリアルコンサートとしてこれ 芸術家としての可能性に富む新人音楽家を発掘し、育成と支援を行うため、東京文化会館や東京都などが主催し、2003年のスタート以来、毎夏開催されている東京音楽コンクール。第13回となる今年からは、出場者の居住地を不問とし、部門審査員に外国人が参加、音源審査を廃止してホールでの演奏審査へ切り替え、本選出場枠を4人から最大6人へと拡大するなどのリニューアルが行われ、門戸を広げると共に、より国際色を深めることになった。 このコンクールでは、東京文化会館の主催公演をはじめ、入賞者が様々なステージのソリストなどに起用されるのも特徴。ここから羽ばたき、国際舞台で活躍中の入賞者も数多い。また、リニューアルの一環で、木管部門と金管部門が従来通り隔年開催の一方、ピアノと弦楽、声楽の各部門は3年に2度の開催に。この結果、08年以来の4部門体制から今年は木管・声楽・弦楽の3部門となったが、応募者数は逆に過去最以上ないほどふさわしい。 第1部としてゲルギエフらから追悼の言葉が述べられ、第2部ではチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が演奏される。チャイコフスキーといえば、彼のパトロンだったメック夫人の経済高で、“リニューアル効果”が表れている。 何より、一般の聴衆も受け入れている第2次予選や本選を、心待ちにするファンは多い。特に本選では、小林研一郎・総合審査員長らが見守る中、梅田俊明指揮の新日本フィル(木管部門 8/26)や園田隆一郎指揮の東京フィル(声楽部門 8/28)、大井剛史指揮の東京交響楽団(弦楽部門 8/30)といった在京3楽団と対峙して、若き才能が躍動。自分だけの“お気に入りの奏者”を見つけて応援するもよし、真剣勝的支援によって創作活動が支えられていたことが知られるが、チェスキーナ洋子氏もまた音楽の世界で大きな足跡を残した支援者であったことが偲ばれる。深い敬意と感謝の念がチャイコフスキーの音楽に込められることだろう。負の緊張感を体感するもよし。普段の演奏会では味わえない愉悦が、ここにはある。チェスキーナ洋子 Photo:Yutaka Nakamura第12回 東京音楽コンクールより ©青柳 聡ワレリー・ゲルギエフ Photo:V.Baranovsky

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