eぶらあぼ 2015.8月号
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32青柳いづみこ1915年のドビュッシー 〈ショパンへの想い〉出演:青柳いづみこ(ピアノ/トーク) 高橋悠治(ピアノ) 金子鈴太郎(チェロ)9/26(土)14:30 Hakuju Hall問 東京コンサーツ03-3226-9755 http://www.tokyo-concerts.co.jp青柳いづみこ(ピアノ)& 高橋悠治(ピアノ)ドビュッシーのエチュードの“新しさ”とは取材・文:宮本 明Interview 2018年の没後100年に向けて昨年からカウントダウンを始めた青柳いづみこのドビュッシー・シリーズ。毎年、公演する年の100年前にフォーカスするのが特徴で、今年は1915年。ドビュッシーとショパンを組み合わせたのが興味深い。2人のチェロ・ソナタ(チェロ:金子鈴太郎)、練習曲、連弾(と2台ピアノ)をそれぞれ並置した。しかし、なぜショパンなのだろうか? 青柳(以下 A)「第一次大戦勃発のショックで作曲できなかったドビュッシーの創作意欲がこの年の夏に突然蘇ったのは、出版社デュランからショパン全集の校訂を依頼されたのがきっかけ。彼が最初にピアノを習った先生はショパンの弟子だったという説もあり、ショパンの革新的な教えを伝授されていたのです。そんな思い出もあったからでしょう。重要な作品を次々に書き上げたのはこの夏が最後です。『12の練習曲』も、間違いなくこの校訂がきっかけで生まれた作品。悠治さんはドビュッシーのエチュードは全部弾いたの?」 そう。ショパンの「4手連弾のための変奏曲」とドビュッシーの「白と黒で」で高橋悠治が共演するのも大きな注目だ。 高橋(以下 T)「最後のはやらなかったかな。弾けないと思って(笑)」 A「どうして弾いたんですか? 頼まれて?」 T「いや。60年代の前衛が行くところまで行った70年代に、ブーレーズがドビュッシーを再発見して、エチュードもその中に含まれていたわけ。それでまあ、どういうものか、弾けるものを弾いてみた(笑)。エチュードは作り方が新しいですよ。コラージュみたいに、行く先がわからないまま先へ行く。そういうのは20世紀後半以降なのね」 A「それを先取りしてた?」 T「先取りというより、今までのやり方では書けなくなって、継ぎ接ぎで書いていくと、それが新しくなるっていうことはあり得るわけですよ。言葉や図式にできない何かに動かされるような」 A「死の間際だから目一杯新しいものを書いた可能性は?」 T「そうかなあ。『月に憑かれたピエロ』が1912年、『春の祭典』が1913年。もうそういう時代だから、自分も何とかしなくちゃという(笑)。たとえば、メシアンが、ブーレーズが台頭してきたので、無理をしてでも新しいものを書こうとした時期がある」 A「乗り遅れまいとね。それは絶対ありますね」 すでに数度の共演歴がある2人だ。 A「『白と黒で』はゴヤの『カプリチョス』という、グロテスクな版画集にヒントを得た作品。一度悠治さんと初見で合わせたら、そういう、ものすごく気持ち悪いものが聴こえてきて、これは面白そうだ! と」 その『白と黒で』を、高橋は以前ピーター・ゼルキンと弾いたことがあるそう。 A「ピーターの次がわたし? かっこいい!」 軽妙なやりとりの中にも興味深い話題が飛び交う。2人の演奏も、きっと同じように刺激的だ。8/17(月)~8/25(火)JMSアステールプラザ 他問 アフィニス文化財団03-5532-1424http://www.affinis.or.jpアフィニス夏の音楽祭 2015 広島トップ・プレイヤーたちが集うユニークなフェスティバル文:笹田和人左より:秋山和慶/四方恭子/ヘンリック・ホッホシルト プロの演奏家を対象に、切磋琢磨の中から音楽を磨き上げる課程にウェイトを置く、世界的にもユニークな“セミナー音楽祭”が『アフィニス夏の音楽祭』。1989年に長野県飯田市でスタートし、21年目からは、プロ楽団を擁する山形市と広島市で隔年開催されており、27回目の今年は広島で開かれる。音楽監督を務める、京都市立芸大教授で都響コンマスの四方恭子に加えて、ゲヴァントハウス管コンサートマスターのヘンリック・ホッホシルトやバイエルン歌劇場管ソロチェリストのイヴ・サヴァリら海外のトッププレイヤーと、国内の楽団から選抜された45人の奏者が参加。8月17日から一般公開のセミナー(リハーサル)が始まり、3夜にわたる室内楽演奏会(8/20~22)で成果を発表する。さらに、広島交響楽団と参加奏者による「祝祭管弦楽団」が合同で、秋山和慶指揮によりチャイコフスキーの交響曲第5番ほかも披露(8/25)。「音楽交流プログラム」と題した、市民に開かれたミニコンサートも随時開催され、音楽を愛する全ての人々に喜びをもたらす。高橋悠治 え・柳生弦一郎

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