eぶらあぼ 2015.8月号
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25ザ・フィルハーモニクスバラエティに富んだ「ウィーン・スタイル」文:オヤマダアツシアンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団天才が生み出す生気の奔流に酔う文:柴田克彦第868回 サントリー定期シリーズ 9/10(木)19:00 サントリーホール第96回 東京オペラシティ定期シリーズ9/11(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp 2014年、ドイツ・グラモフォン・レーベルから2枚のCDをリリースするのと同時に初来日ツアーを行い、「ウィーン・フィルにはこんなアンサンブルもあるのか!」と多くの聴衆を驚かせた7人組。それが「ザ・フィルハーモニクス」。正確にはウィーン・フィルのメンバー4人に加え、ベルリン・フィルから1人、ロマ(ジプシー)音楽の最高峰に位置する音楽家2人という顔ぶれなのだが、それは些細なことだ。注目すべきは全員がスーパー級の音楽家であり、洗練されたバラエティ感にあふれる「ウィーン・スタイルの音楽」を私たちに届けてくれるということなのである。 彼らが聴かせてくれる音楽は、かつてウィーンに住んだベートーヴェンやブラームスが、ウィンナ・ワルツを定着させたシュトラウス一家が、さらには観光などで訪れる世界中の人たちが味わった「気取らない街」の姿なのかもしれない。およそ1年半ぶり、2回目の来日ツアーと いま在京オーケストラの公演の中でも特に聴き逃せないのが、東京フィルとバッティストーニのコラボだ。1987年生まれの彼は、20代にしてスカラ座はじめ欧州の著名歌劇場で活躍するイタリアの天才指揮者。日本ではまず、2012年二期会公演の《ナブッコ》と、13年の東京フィル定期の「ローマ三部作」の壮絶な名演で皆を驚嘆させた。以来次々に快演を展開。今年から首席客演指揮者に就任し、5月には《トゥーランドット》全曲で圧倒的なインパクトを与えた。その演奏は、サウンドの熱量が凄まじく、音楽が光彩を放ちながらアグレッシヴに躍動する。しかも音作りは緻密で、構成は堅牢かつ壮大だから恐れ入る。 さて今度は9月定期だ。演目は、ヴェルディ《運命の力》序曲、ラフマニノフ(レスピーギ編)「5つの絵画的練習曲」(9/10)または、「パガニーニの主題による狂詩曲」(9/11)、ムソルグスキー(ラヴェル編)「展覧会の絵」。色彩的で華なる今回。披露してくれるのは、J.シュトラウスⅡやブラームスほかによる名曲をザ・フィルハーモニクス風にアレンジしたスペシャル・プログラム。かしこまった雰囲気のアンサンブルではなく、妙技にうっとりとし、目を見張り、気が付くと気品のあるウィーンのサロンにいるのではないかと思えるほど、極上の音楽に魅了されていることだろう。麗な作品が並ぶだけに、前記の特長が全開となること必至。生気漲る音と音楽の奔流を全身で体感したい。しかもこのプログラム、サンクトペテルブルグで初演された《運命の力》を含めて、ロシアとラテンの融合作品ばかり。この熱い発想も妙味充分だ。もう1つの注目点が反田恭平の抜擢。1994年生まれ 前回の来日時は聴くことができなかった方も、今年は見逃すことがありませんよう。の彼は、高校在学中に日本音楽コンクールで優勝後、モスクワ音楽院で学ぶ話題沸騰のピアニスト。今年海外のコンクールでも優勝した昇り龍で、鮮烈な音による大胆な演奏が心を鷲掴みにする。彼が弾く「パガニーニ狂詩曲」も必聴! 今年28歳の指揮者と21歳のソリスト…。ここは時代を先取りしよう!©Maria Svarbova反田恭平 写真提供:日本コロムビアアンドレア・バッティストーニ ©Fabio Parenzan10/26(月)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール問ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演10/25(日)よこすか芸術劇場(046-823-9999)10/29(木)ハーモニーホールふくい(0776-38-8282)

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