eぶらあぼ 2015.8月号
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215京都バレエ団特別公演『ロミオとジュリエット』パリ・オペラ座バレエ団のスターを迎えての華麗なるステージ文:高橋森彦ロベール・ルパージュ『針とアヘン̶マイルス・デイヴィスとジャン・コクトーの幻影』時空を超えて展開されるマジカルな内面劇文:渡辺真弓8/2(日)14:30 ゆうぽうとホール 8/9(日)14:30 びわ湖ホール問 京都バレエ団075-701-6026 http://www.kyoto-ballet-academy.com10/9(金)~10/12(月・祝) 世田谷パブリックシアター問 世田谷パブリックシアターチケットセンター03-5432-1515 “バレエの殿堂”パリ・オペラ座バレエ団のエスプリを存分に味わいたい―。京都バレエ団特別公演『ロミオとジュリエット』全幕は、オペラ座フリークならずとも見逃せない、この夏屈指の話題作である。 キャストが凄い! なんとオペラ座から新旧8名のスターが招聘される。ロミオを人気エトワールのカール・パケット、ジュリエットを新進気鋭のスジェ、エロイーズ・ブルドンが踊るほか、ジュリエットの母と父を往年の名エトワールのモニク・ルディエール、シリル・アタナソフが務めるというから驚きだ。前身の有馬龍子バレエ団時代から長年オペラ座の指導者やダンサーを招いてきた伝統と実績があって実現する夢の饗宴である。オペラ座のかぐわしい香気が立ち上がり舞台を満たすことだろう。 オリジナル新作としても注目を集め 超幻想的な舞台を生み出す「映像の魔術師」として名高いカナダ・ケベック出身の演出家ロベール・ルパージュ。日本のダンス・ファンには、バレエ界の女王シルヴィ・ギエムが演じた『エオンナガタ』(2011年来日)の変幻自在の舞台などが記憶に新しいかもしれない。このルパージュの作品の中から一人芝居シリーズを中心に上演してきた世田谷パブリックシアターが、今秋、代表作の『針とアヘン』を招聘するのが今話題となっている。 初演は1991年、舞台と映像を融合させた“ルパージュ・マジック”の魅力を知らしめた記念碑的作品で、93年に来日。その後、最新の映像テクノロジーを駆使し、2013年に二人芝居として完全リニューアル。副題にあるように、ジャズ・トランペットの王者マイルス・デイヴィスとフランスの生んだ異才ジャン・コクトーという二人の天才をモティーフに、一人の男性の内面を多層的に描いたもので、失意のどん底でパリに到着した現代のカナダ人男性の脳裏にコクトーのアヘン依存とデイヴィる。「ジュリエットの死を悼む父の語りから幕が上がる極上の感動と驚き!」というのが謳い文句だ。演出・振付のファブリス・ブルジョアはオペラ座の教師として団員からの信頼が厚い。3年前の有馬龍子バレエ団『ドン・キホーテ』全幕もブルジョアのステージングだったが、キューピッドを男性が踊るというアッと驚く独創的な趣向なども織り交ぜつつ垢抜けていた。今回も独自の魅力あふれるステージとなるに違いない。スのヘロイン中毒(注射針)のイメージが駆け巡り、現代と1949年に活躍した二人の芸術家の世界を自由に行き来するという、想像しただけでワクワクするようなスペクタクルだ。 東京公演、京都公演ともにオーケストラ生演奏が入る本格派。オペラ座の息吹を色濃く伝える豪華で洗練されたグランド・バレエに心ゆくまで酔いしれたい。 世界を巡演し、各地で賞賛の嵐を巻き起こしての日本上陸。まだルパージュの舞台に接したことのない人はぜひ公演に足を運んでほしい。そこには魅惑のマジックの世界が広がっていることだろう。エロイーズ・ブルドンカール・パケット©Nicola Frank Vachon

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