eぶらあぼ 2015.6月号
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57CD『ノクターナル~イギリス音楽集~』マイスター・ミュージックMM-3047¥2816+税©Takanori Ishii福田進一(ギター)イギリス音楽特有の“ウィット”取材・文:渡辺謙太郎Interview 「編集作業に携わる中で、ハイレゾの音質のよさにビックリしました。指使いや息遣いが録音時そのままに記録されている。これは自宅にもハイレゾが聴ける機材を導入しなければいけないなと、改めて強く思いました」 そう笑顔で満足気に語るのは、今年12月に還暦を迎える日本ギター界の巨匠・福田進一。4月にマイスター・ミュージックから発表した最新盤『ノクターナル』はCDの他に、e-オンキョー、HQM store、highresaudio.jp、mora(モーラ)といったハイレゾ音源サイトでも購入可能。また、福田初のイギリス音楽集ということでも注目を集めている。 「イギリス音楽は昔からお気に入りの作品がたくさんありました。でも、1970年代にリュートの名手ポール・オデットがパリで弾いたダウランドや、ジュリアン・ブリームによるブリテン『ノクターナル』といった実演に圧倒されて…。以来、デビューLPに収録したウォルトン『5つのバガテル』を除き、最近まで人前で演奏する機会はほとんどありませんでした。しかし、今年還暦を迎えるにあたり、これらの素晴らしい作品を自分が元気なうちに残しておきたいという気持ちが強くなり、録音を決意したんです」 収録されているのは、ダウランド、パーセル、ブリテン、ウォルトンといったルネサンスから現代の巨匠が残した作品。曲想や構成は多彩だが、福田の温かく切れ味のある演奏は、どの作品にもイギリス音楽特有の荘重さとノスタルジーを備えた“ウイット”が宿って6/14(日)15:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 http://www.yokosuka-arts.or.jp横須賀芸術劇場リサイタル・シリーズ43 竹澤恭子(ヴァイオリン) × 堤 剛(チェロ) × 児玉 桃(ピアノ)名手3人による華麗なる饗宴文:笹田和人児玉 桃 ©Marco Borggreve堤 剛 ©鍋島徳恭竹澤恭子 ©Tetsuro Takai 国際的に活躍する名演奏家の出逢いが、一体どのような“化学変化”を起こすのか。しなやかな音楽性と確かな技巧で、世界の第一線で活躍を続ける、ヴァイオリンの竹澤恭子とピアノの児玉桃。そして、温かな音色と深い精神性で聴衆を魅了し続ける、日本チェロ界の重鎮・堤剛。3人によって紡がれるのは、チャイコフスキーのピアノ三重奏曲の佳品「偉大なる芸術家の想い出に」。作曲家が盟友の名ピアニスト、ニコライ・ルビンシテインを追悼して綴った大作は、世代を超え、音楽という共通の言葉で語り合う名演奏家たちには相応しい。そして、堤は半世紀以上にわたる演奏家人生の中で熟成を重ねてきた、バッハの無伴奏チェロ組曲から、第3番のプレリュード、サラバンド、ブーレ、ジーグを。そして、児玉が得意とするラヴェルの作品から「鏡」の「悲しげな鳥たち」「道化師の朝の歌」、さらに竹澤との共演でヴァイオリン・ソナタを披露。名ソリストとしての3人の魅力も、たっぷりと味わえる。いることを教えてくれる。 「ダウランドでは原曲のリュートにはない力強さと音色の変化を、ブリテン『ノクターナル』ではシェイクスピア『真夏の夜の夢』を現代に蘇らせた夢のような世界を、それぞれお楽しみください。パーセルの美しい小品は、巨匠セゴビアのロマンティックな演奏がおなじみかもしれませんが、今回はあえてオリジナルに忠実なテンポと音色を採用しました」 当盤制作の決意を強く後押しし、録音でも福田の期待に見事に応えたのが、使用楽器のホセ・ルビオだという。 「1966年製で、前述のブリームが67年に『ノクターナル』を世界初録音時に使用したのと同タイプの楽器なんです。ちょうど今回の録音を考えていた昨年夏、友人の楽器屋さんから偶然紹介されて、これはもう運命だなと(笑)。録音でも、作曲家や作品に応じ、まるでカメレオンのように表情を変えながら、僕にしなやかに寄り添ってくれました。今後もさらに弾き込んで、機会があれば実演でも使ってみたいですね」

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