eぶらあぼ 2015.6月号
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187コンサートギャラリーチケット発売情報News & TopicsNew Release Selection新譜情報TV&FMBooks海外公演情報ぶらPAL今月の注目公演公演情報8月+「夏の音楽祭」(その2)の見もの・聴きもの曽そし雌裕ひろかず一 編 本号では前号に引き続き、夏の音楽祭を中心としたコメントを掲載しますが、スペースの関係で取り上げられなかった音楽祭、コメントできなかった要注目公演もたくさんあります。ご容赦のほどお願いいたします。●【夏の音楽祭】(8月分)〔Ⅰ〕オーストリア アレキサンダー・ペレイラが昨年限りで芸術監督を降板した「ザルツブルク音楽祭」は、とりあえず2015年と16年の芸術的プランについては、演出家のスヴェン=エリック・ベヒトルフが責任を負っている。ベヒトルフは指揮者のウェルザー=メストとチューリッヒ歌劇場以来の「相棒」とも言える関係にあり、今夏も、ベートーヴェンの「フィデリオ」新演出でコンビを組んでいる。人気歌手であるカウフマンやピエチョンカをキャストに配し、手堅く高評価を狙ったプランニングとも言えよう。リームの現代オペラ「メキシコの征服」の演出家が当初のボンディからコンヴィチュニーに変わった経緯はよく分からないが、近年、コンヴィチュニーの新演出が激減している現況にあっては、彼の新しい演出が見られることは大きな楽しみ。他にも、新校訂版の「ノルマ」やグルックの「トーリードのイフィジェニー」をバルトリが歌ったり、昨年、意表を突く演出で「通」を唸らせたヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」(ネトレプコ出演)の再演、ヘンゲルブロック指揮のパーセル「ディドとエネアス」、才人HK.グルーバー指揮のワイル「三文オペラ」、ムーティの登場(ヴェルディ『エルナーニ』)など、今ひとつインパクトに欠けるとも言われる今年のオペラ公演も、よく見ると結構楽しめる要素がある。逆にオーケストラの方は、ブーレーズ生誕90年を祝うシリーズに健康上の理由でブーレーズ自身が指揮者として参加できないという現実がいかにも残念。その中で、同じく90歳に近づきつつある(現在86歳)ハイティンクが振るウィーン・フィル、チェロのヨーヨー・マがソリストを務めるボストン響、ショスタコーヴィチの交響曲4番を披露するラトル=ベルリン・フィルあたりが、意外性のあるプロではないものの、熟練した味を提供する「間違いのない」公演となろう。器楽のジャンルでは、ピアノのソコロフやエマール、シフ、ポリーニ、内田光子、ヴァイオリンのテツラフ、チェロのヨーヨー・マ、声楽のフローレス、室内楽ではトリオ・ツィンマーマンといったお馴染みのアーティストたちの公演がやはり存在感を示しているが、ソプラノのデノーケが歌う「クルト・ワイルとその時代」といった企画公演も見落とせない。 「ブレゲンツ音楽祭」では、エトヴェシュの現代オペラ「黄金の竜」がどのようなものか興味津々。「インスブルック音楽祭」では、ポルポラ「ゲルマン人」とヨンメッリ「ドン・トラストゥッロ」の舞台公演2演目のほか、アーノルト・シェーンベルク合唱団のミサのための音楽を中心とした演奏会が聴きものだ。〔Ⅱ〕ドイツ 「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭」、「MDR音楽の夏」、「ラインガウ音楽祭」は、共に性格の似た広域音楽祭。本欄では主要公演しか取り上げていないので、公演の全容や公演地・会場の詳細は、是非音楽祭HP等でご確認いただきたい。なお「ラインガウ音楽祭」では、本文に取り上げた地区の他にも、ヴィースバーデンから西に約20キロ離れたヨハニスブルク城(ガイゼンハイムの郊外)で、室内楽の優れた演奏会も数多く開かれている。「ブレーメン音楽祭」(8月分)では、ダントーネ指揮アカデミア・ビザンティナの古楽演奏会とアンドラーシュ・シフの「変奏曲」にこだわったピアノ・リサイタルが聴きもの。「バイロイト音楽祭」については、先月も触れたが、今年はティーレマン指揮、カタリーナ・ワーグナー演出の「トリスタンとイゾルデ」が話題の中心。「リング」を振るキリル・ペトレンコは今夏が最後で、来年からヤノフスキが後を引き継ぐ。〔Ⅲ〕スイス 「ルツェルン国際音楽祭」は、故アバドの後を受けた中心指揮者のアンドリス・ネルソンスよりも、「ザルツブルク音楽祭」の項で名を挙げた86歳のベルナルド・ハイティンクの活躍の方が目立つ。特にヨーロッパ室内管を振ってピアノのピリスや、ヴァイオリンのイザベル・ファウストと共演する演奏会は要注目。また、ファウストは、自らが中心となった演奏会でも、ストラヴィンスキー「兵士の物語」のソロ・ヴァイオリンを担当したり、バッハのヴァイオリン・ソナタをベズイデンホウトのチェンバロ伴奏で弾いたり、と旺盛な演奏活動を展開する。〔Ⅳ〕イタリア 夏の間「カラカラ浴場でのオペラ」として公演を行うローマ歌劇場については先月号の本欄でも触れたが、ヴェローナやトーレ・デル・ラーゴ、マチェラータなど、イタリアの夏の音楽祭は野外ステージでの公演に有名どころが多い。そうした中、通常の室内劇場で繰り広げられるロッシーニの饗宴が「ペーザロ・ロッシーニ・フェスティヴァル」。今年も「どろぼうかささぎ」「新聞」「幸せな間違い」など、いずれもエキサイティングなロッシーニのオペラ上演となるに違いない。〔Ⅴ〕フランス・〔Ⅵ〕ベネルクス フランスやベネルクス地域の8月の音楽祭は、実は本稿中に掲載しただけでは十分ではなく、特に古楽を中心とした魅力的な音楽祭がフランスのサブレ=シュル=サルテ、ベルギーのアントワープやブリュージュ、オランダのユトレヒトなどでいくつも開催されている。これらは、恐縮ながら、それぞれのHPに是非直接当たってみていただきたい。http://www.lentracte-sable.fr/festival.htmlhttp://www.amuz.be/http://www.mafestival.be/http://www.oudemuziek.nl/〔Ⅶ〕イギリス 「グラインドボーン・オペラ・フェスティヴァル」(8月分)では、ボルトン指揮、コスキー演出のヘンデル「サウル」のほか、ラヴェルのオペラ2作品には、ティッチアーティとのローテーションで、大野和士も指揮台に立つ。「エディンバラ国際フェスティバル」では、サヴァール、クリスティ、ガーディナーといった古楽系アーティストの活躍が序盤期間で目立つが、中盤に入ると、サロネン指揮フィルハーモニア管や内田光子のピアノが要注目公演。「プロムス」は、今年も圧倒的な物量音楽祭。連日有名アーティストの演奏会が続き、ここでもサロネン、ハイティンクなどの名前が見える(特にサロネンは、ショスタコーヴィチの未完オペラ「オランゴ」のプロローグを取り上げる)が、7月から8月にかけて行われるイブラギモヴァのバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ/パルティータ集を音楽祭前半の要注目公演として敢えてピックアップしておこう。今年30歳になる若手ながら、キャリア・実力ともに図抜けており、来日公演もすでに数回に及んでいるので、ファンになられた方も多かろう。〔Ⅷ〕北欧(〔Ⅸ〕東欧は省略) スウェーデンの「ドロットニングホルム・オペラ・フェスティヴァル」には、ミンコフスキが登場してモーツァルト「フィガロの結婚」を振る。なお、彼はこの音楽祭に今後3年間連続で出演し、ダ・ポンテ三部作(2015年「フィガロの結婚」、2016年「ドン・ジョヴァンニ」、2017年「コジ・ファン・トゥッテ」。最終年には三部作一挙上演も予定)を指揮することが発表されている。要注目!(曽雌裕一・そしひろかず)(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)2015年8月の

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