eぶらあぼ 2015.5月号
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56エイヴィン・グルベルグ・イェンセン(指揮) 読売日本交響楽団新たな才能、無類の名手がもたらす多彩な喜び文:柴田克彦ベルトラン・ド・ビリー(指揮) 東京都交響楽団“ダブル”の快感文:山崎浩太郎第548回 定期演奏会 5/13(水)19:00 サントリーホール第177回 東京芸術劇場マチネーシリーズ 5/17(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp第788回 定期演奏会 Aシリーズ 5/13(水)19:00 東京文化会館問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp ベルリン・フィル、パリ管、ミュンヘン・フィル等で評価を上げている指揮者の初登場となれば、期待して当然だろう。読響の5月公演は、そのエイヴィン・グルベルグ・イェンセンが2つのプログラムを振る。ノルウェー生まれの彼は、2009~14年ハノーファー北ドイツ放送フィルの首席指揮者を務め、数々の一流楽団やバイエルン国立歌劇場ほか各地の歌劇場に客演し、ウィーン国立歌劇場への出演も決まっている。12年のパシフィック・ミュージック・フェスティバルに客演しているものの、今回が本格的な日本デビュー。3月の欧州ツアーを成功裏に終えた実力派オーケストラとのコラボが、大いに注目される。 5月13日のプログラムは、ショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」。戦いをテーマにした壮大な同曲では、オペラの実績を生かしたドラマティックな表現が期待されるし、読響一流の重量感も聴きものとなる。前半のモーツァルトのピアノ協奏曲第17番も、ピリオド楽器の第一人者、アンドレアス・シュタイアーが、モダン・ピアノで プログラムは2曲。デュティユーとブラームス、交響曲第2番が2つ。つまりダブル。さらに前者の副題は「ル・ドゥーブル」、すなわち“ダブル”という意味のフランス語。この“ダブりだらけ”の演奏会を指揮するのは、ベルトラン・ダ・ブルならぬ、ベルトラン・ド・ビリー。この指揮者らしい、ユーモアと几帳面さの両面が見える、二重性のあるプログラムだ。 デュティユーは1916年生まれ、97歳まで長命して2013年に没したフランスの作曲家で、ドビュッシーやラヴェルなど近代フランスの伝統を受け継ぐ、色彩的で華麗なオーケストレーションに特色がある。1959年にシャルル・ミュンシュ指揮のボストン響が初演した「ル・ドゥーブル」は、オーケストラのなかにもう一つ小さなオーケストラが作られ、その二つが対話することで大と小を対比させるという、二重性をきわソロを弾くとあっては、絶対に聴き逃せない。軽妙で変化に富んだ曲だけに、自在の名奏が我々に極上の愉悦感を与えてくれること必至だ。 もう1つのプログラム(5/17)は、イェンセンのお国もののグリーグ「ペール・ギュント」第1組曲、そして、ニールセンのクラリネット協奏曲、ブラームスのめる傑作。 都響には初登場のド・ビリーはパリ生まれのフランス人だが、ウィーン放送響やウィーン国立歌劇場など、長くウィーンを拠点に活躍してきた。パリの粋とウィーンの艶、優れたセンスで両者を融合し、生き生きとした音楽を聴かせることに定評がある。その彼が、パリに暮らしたデュティユーとウィーンを愛したブラームス、両者の交響曲第2番を組みあわせる。それは、ド・ビリー自身の人生の二重性を示しているのかもしれない。これはいわば、彼の名刺のようなプログラムなのではないか。“ダブルの快感”、じつに面白そう。交響曲第2番。名うての超難曲であるニールセンでは、読響首席クラリネット金子平のクリアなソロが楽曲の真価を明らかにし、ブラームスの名作では、ウィーンで学び、ハノーファーで培ったイェンセンのドイツものへの造詣の深さが披露される。話題に溢れた、必聴の2公演だ。エイヴィン・グルベルグ・イェンセン ©Mat Hennekアンドレアス・シュタイアー ©Eric Manasベルトラン・ド・ビリー ©Marco Borggreve

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