eぶらあぼ 2015.5月号
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265牧阿佐美バレヱ団 60周年記念公演シリーズⅠ 『Unforgettable Evening』バレエとヴォーカルの華麗なる融合文:守山実花 あなたの周りに、「バレエにはなんとなく興味はあるんだけど、でも…」と重い腰のあがらない人はいないだろうか。そんな彼らを誘うなら、牧阿佐美バレヱ団が幅広い観客に劇場に足を運んでほしいと企画したこの公演はどうだろう。バレエの多彩な魅力が一夜にして味わえるだけでなく、男性ヴォーカルグループの声も楽しめる、新しい感覚の公演だ。 第1部では、厳格なクラシックバレエの様式性で魅せる、華やかで祝祭性に溢れる 「ライモンダ」第3幕を上演。異国情緒も盛り込まれた色彩豊かな音楽は、グラズノフによる。 叙情性豊かで、甘く美しい旋律とバレエの華麗なる融合だ。 第2部は歌曲とバレエの共演。LE VELVETS(ル ヴェルヴェッツ)は、テノールとバリトンで構成された男性5人のヴォーカル・グループ。メンバーにはバレエ経験者もいるという。人気レパートリーを、艶やかな歌声でたっぷりと聴かせてくれるほか、芸術監督三谷恭三の振付によるバレエと、新しいステージを作り上げる。バレエとヴォーカル、それぞれが刺激しあうことで、どんな化学反応が生まれるのだろうか。 そして第3部は現代のバレエ。ラヴェルの「ボレロ」に、ザルツブルクバレエ団芸術監督ピーター・ブロイヤーが振付けた作品が日本初演される。2002年に初演され、各地で上演された本作、今回は通常よりもダンサーの数を増やし、スケールアップしての上演となる。 16年に創立60周年を迎える牧阿佐美バレヱ団。60周年をひとつの節目に、さらに進化していこうとするカンパニーの新たな挑戦に期待したい。5/30(土)18:00、5/31(日)15:00 文京シビックホール 問 牧阿佐美バレヱ団公演事務局0570-03-2222 http://www.ambt.jpLE VELVETS『ライモンダ』『ボレロ』Noism1 近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』金森穣が生み出す新たな“童話劇”文:高橋彩子  金森穣率いるNoism1が設立11年目の今年、スタジオ規模の小空間での“近代童話劇シリーズ”をスタートさせる。第一弾は新作『箱入り娘』。原作はバルトーク作曲&バラージュ台本による1917年初演のバレエ『かかし王子』だ。金森は「サイトウ・キネン・フェスティバル・松本2011」で、同じバルトーク&バラージュのオペラ『青ひげ公の城』とバルトークの舞台音楽『中国の不思議な役人』を演出・振付している。『かかし王子』では、王子が王女の気を引くために自身に似せたかかしを作るが、王女はかかしに魅了され、王子に目もくれない。やがてハッピーエンドを迎えるものの、ここには芸術家と作品の皮肉な関係が暗示されている。金森はそうした原作を踏まえつつ、独自の6/6(土)〜15(月)、7/24(金)〜8/1(土) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 スタジオB 問 りゅーとぴあ025-224-55216/22(月)〜6/28(日) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ 問 チケットかながわ 0570-015-4157/18(土)18:00、7/19(日)17:00 金沢21世紀美術館 シアター21 問 金沢21世紀美術館 交流課076-220-2811 http://noism.jp解釈と登場人物を加えるという。 100年前に比べて現代では「一つの箱の位相、すなわち自己を形成する家族、村、国家といった箱の位相が外側に広がった」とする金森は、今回の『箱入り娘』で、“箱入り娘”と“無職のゲイジツカ”を登場させる。「2人は仮想空間で出会い、現実空間で傷つけあい、宇宙空間ですれ違います。彼らの心(箱)は行くあてもなく、理想(箱)と現実(箱)の間を彷徨います」(プレスリリースより)。1936年にベンヤミンは『複製技術時代の芸術』を著したが、ネット社会では、作者/作品の関係もオリジナル/見世物小屋シリーズ第3弾『Nameless Hands〜水の庭、砂の家』©Kishin Shinoyamaコピーの違いも、より混迷化・複雑化している。そんな現代が、ある意味ではアナログな芸術とも言えるダンスでどのように表現され、遠藤龍の映像はどう作用するのか? 新たな“童話劇”の誕生に期待したい。

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