eぶらあぼ 2015.5月号
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186CDSACDCDCDブルックナー:交響曲第0番/スクロヴァチェフスキ&読響現代日本マンドリン・オーケストラ作品集Ⅱ/メトロポリタン・マンドリン・オーケストラムソルグスキー:展覧会の絵 他/長谷正一Little by Little~池辺晋一郎自作自演合唱曲集/東京混声合唱団ブルックナー:交響曲第0番スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮)読売日本交響楽団松平頼暁:Bee in the Cage/湯浅譲二:エレジイ・哀歌、「サーカス・ヴァリエーション」より/南聡:調和の習作Ⅰ(前奏、小唄と舞曲)、彩色計画Ⅵ/北爪道夫:青い宇宙の庭Ⅲ小出雄聖(指揮)メトロポリタン・マンドリン・オーケストラ太田真紀(ソプラノ)福田進一(ギター) 他ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番リスト:オーベルマンの谷ベルク:ピアノ・ソナタ 他長谷正一(ピアノ)池辺晋一郎:五つの無伴奏混声合唱曲「Little by Little」、「窓の声、光の声」、「六つの子守歌」 ほか池辺晋一郎(指揮)東京混声合唱団浅井道子(ピアノ)収録:2014年10月、東京(ライヴ)日本コロムビアCOGQ-75 ¥3000+税カメラータ・トウキョウCDT-1098 ¥2800+税ナミ・レコードWWCC-7780~1(2枚組) ¥3000+税収録:2014年9月、東京(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00562 ¥3000+税90歳を越えてなお躍進を続けるスクロヴァチェフスキ。昨年10月のライヴ録音だが、来日するだけで大変なはずなのに、この気骨ある指揮ぶりはどうだろう。特に弦から引き締まった芯のある音を引き出し、迷いのないリードで道をつけて、がしがしと巨大な聖堂を建設していくのである。所々で挟まれるジューシーな歌、金管楽器によって降り注がれる音のシャワーは聴き手を飽きさせることがない。第2楽章の大船に乗った気分を味わわせてくれる歌や、畳み掛けるように進む終楽章など聴きどころ満載だ。後年に直接つながる作風を示した直截・明快な解釈は、初期ブルックナーへと蒙を啓いてくれる。(江藤光紀)明治の開国と共に伝わったマンドリン。そのアンサンブルは、わが国独自の進化を遂げた。1986年に結成された「メトロポリタン・マンドリン・オーケストラ」は、その音楽の可能性の探究を目標として、先鋭的に活動。既存のレパートリーに飽き足らず、現代の作曲家へ新作を委嘱していることも、その顕れだ。湯浅譲二ら錚々たる顔ぶれによる作品集は、時に福田進一のギターなど異種の楽器や声を交えつつ、それぞれが全く違う個性を持つ。メンバーは気迫みなぎる熱演で、その陰影をつぶさに表現。マンドリンが我々に抱かせるノスタルジックなイメージを、鮮やかに裏切ってみせる。(笹田和人)「展覧会の絵」のプロムナードに、静謐さを聴く。そして、ベートーヴェンのソナタには、清冽さが湧き上がる。名匠ゲルバーの薫陶を受け、国際的に活躍する長谷正一。一見、関連性が薄くも思える作品を並べ、演じ手の個性によって、巧みに互いを結び付ける。長谷が録音でとるのは、かつての大巨匠のステージ構成のごとき手法。もちろん、時代ごとの様式感をきっちり踏まえながらも、そこへ常に存在するのは、知的で洞察力に満ちた彼の個性。ムソルグスキーの情景も、ベートーヴェンの壮大なフーガも、リストの哲学も、ベルクの秘めた感情も、全ては彼の感性へと収斂されてゆく。(笹田和人)池辺自身の指揮による演奏会のライヴ収録。コンサートでは池辺のトーク付きだった。演奏全体をその和らいだ空気が包んでいるのも感じられると思う。リラックスして楽しむ一枚。冒頭は1980年代に定期演奏会のたびに書き溜められていったアンコール曲集(昨年出版された)。池澤夏樹訳詞のビートルズは30年前の初演以来初めての貴重な再演。「窓の声、光の声」は2012年の新しい作品。「六つの子守歌」は池辺の代表的定番合唱曲。懐かしい安らぎ。東混は以前よりずっと親しみやすいサウンドになっていると感じるが、こういう選曲だとそれが顕著。もちろん良い意味で。(宮本 明)

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