eぶらあぼ 2015.5月号
171/225

182SACDCDCDCDベートーヴェン「英雄」/山田一雄&大阪センチュリー交響楽団宇宙の音楽/剣と王冠/ボストック&東京佼成ウインドオーケストラベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲/シュナイダーハン&フルトヴェングラーベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集第4巻「超越」/小菅優ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」モーツァルト:歌劇《イドメネオ》のためのバレエ音楽より第4曲ガヴォット山田一雄(指揮)大阪センチュリー交響楽団(現・日本センチュリー交響楽団)ヴォーン=ウィリアムズ:トッカータ・マルツィアーレ/グレインジャー:リンカーンシャーの花束、コロニアル・ソング/グレッグスン:剣と王冠/スパーク:宇宙の音楽 他ダグラス・ボストック(指揮)東京佼成ウインドオーケストラベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲マルタン:ヴァイオリン協奏曲ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、エルネスト・アンセルメ(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団スイス・ロマンド管弦楽団ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第5番~第7番・第11番・第29番「ハンマークラヴィーア」小菅優(ピアノ)収録:1991年3月、大阪(ライヴ)ナミ・レコードWWCC-7782 ¥2000+税収録:2014年9月、東京(ライヴ)日本コロムビアCOCQ-85255 ¥2000+税収録:1953年5月、ベルリン(ライヴ) 他TOWER RECORDSPROC-1651 ¥1143+税ソニーミュージックSICC-10216~7(2枚組) ¥3800+税貴重な初出録音だ。山田一雄が亡くなる約5ヵ月前の1991年3月に大阪センチュリー交響楽団(現・日本センチュリー交響楽団)を振ったライヴで、楽団の記録録音からのCD化。素晴らしくゆったりとしたテンポによる悠揚迫らぬ表現。深い呼吸と慈愛に満ちている第1楽章、葬送行進曲はさらに「申し分なく」遅いテンポを取りながらも緊張感は全く途切れない。打ってかわって軽快な後半2楽章、このコントラストもまた見事。同団の良さを最大限に引き出して、このような名演奏を遺したヤマカズの力量に改めて感嘆。アンコールはヴァイオリンのソノリティが本当に美しい。(藤原 聡)東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の定期演奏会ライヴの第8弾。以前常任指揮者を務めた英国人ボストックによる英国オリジナル作品集で、TKWOにも作品にもゆかりの深いフェネルの生誕100年に因んだプログラムでもある。古典と近年の定番曲がミックスされた選曲も演奏も極めて秀逸。「リンカーンシャーの花束」の柔らかな自然情緒、「剣と王冠」の鋭いリズムやサウンド効果、「宇宙の音楽」の圧倒的なスケール感と迫力など、全てが聴き応え充分だし、何より全体に英国の薫りと品格が漂っている。センスの良い英国音楽集として座右に置きたい1枚。(柴田克彦)今年生誕100周年のシュナイダーハンは、若くしてウィーン・フィルのコンマスを務めた後ソリストとして活躍した、ウィーンの天才ヴァイオリニスト。当盤はかのフルトヴェングラーとのベートーヴェンのライヴで、オーケストラの熱く濃厚な演奏に対し、ソロは気魄を端正なフォルムに込め、気品と艶のある美音で渡り合う。豊かに響く第1楽章、静かな歌が深く胸に迫る第2楽章、技巧が冴えわたる第3楽章と、年月を経ても瑞々しい名演だ。マルタン作品で聴かせる精妙な音色と完璧な技術も格別。今日でも規範となり得るシュナイダーハンの芸術が、記念年を契機に広く再評価されることを期待したい。(林 昌英)小菅優が2010年から取り組んでいるベートーヴェンのソナタ全集の第4弾。作品10の3曲(5・6・7番)は初期作品だからといって、こじんまりまとめるようなことはせず、鋭いフォルテを挟んだり、テクスチュアを大きく膨らませることで、この後に訪れる作曲家の大きな飛躍を予感させる。2枚目は同じ変ロ長調という調を持つ11番と29番「ハンマークラヴィーア」を並べた。29番はまさに宇宙的な広がりを持つが、高い集中力と自在なニュアンスの表現で後期作品の精神に肉薄していく様がスリリング。長大な第3楽章は浄化されるようで、タイトルの「超越」という言葉にも納得。(江藤光紀)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です