eぶらあぼ 2015.4月号
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63シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団リームとブルックナーが出合う時文:山崎浩太郎第547回 定期演奏会4/10(金)19:00 サントリーホール第1回 東京オペラシティ名曲シリーズ4/12(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp 読売日本交響楽団の常任指揮者シルヴァン・カンブルランのプログラムは、つねに一捻りしてあるのが楽しみである。漫然とならべることなく、前後の組合せをしっかりと考え、関連させる。今回も19世紀と20世紀のドイツ語圏、ロマン派と現代音楽の2作品で、いったいどんな結びつきを聴かせてくれるだろうか。 まず、現代ドイツの作曲家ヴォルフガング・リーム(1952~)の「厳粛な歌」。ブラームス最晩年の歌曲「4つの厳粛な歌」に想を得たもので、1996年に管弦楽曲として完成されたのち、翌年にゲオルク・ビュヒナー(『ヴォイツェック』や『ダントンの死』で名高い、19世紀前半のドイツの作家)の詩による歌曲を加えた。管弦楽曲のみの版は日本でも数度演奏されているが、歌曲つきは今回が日本初演となる。独唱は、ドイツの歌劇場で経験をかさねてきた小森輝彦。 そして、後半はブルックナーの交響曲第7番。近年の読響のブルックナーといえば、前の常任指揮者スクロヴァチェフスキによる剛毅な演奏が支持を集めてきたが、フランス人カンブルランのそれは、どんな響きになるのだろう。メシアンを得意とするだけに、透明度の高い、光と色の多彩な変化による新鮮な音楽が聴けるのではないだろうか。この作曲家を読響と演奏するのは今回が初めてとなるが、ドイツでは何度か取りあげ、そのライヴ録音のCDが日本でも好評を得ているだけに、大いに期待したい。シルヴァン・カンブルラン ©読響佐藤卓史(ピアノ) シューベルトツィクルス 第3回 即興曲シューベルトの世界に浸る一夜文:飯田有抄4/16(木)19:00 東京文化会館(小)問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp佐藤卓史 ブログ シューベルティアーデ電子版http://schubertzyklus.blog.fc2.com 昨年の春にスタートした『佐藤卓史シューベルトツィクルス』の第3回が東京文化会館小ホールで開かれる。第1回の「幻想曲」、第2回の「ピアノ・ソナタ I —短調ソナタの世界」に続く今回は「即興曲」がテーマだ。シューベルトはその人生を終える前年の1827年に2つの「即興曲D899、D935」を残した。それぞれ4曲ずつからなる曲集は、ピアニストのリサイタルでも頻繁に演奏されるが、ピアノ愛好家や学習者の間でも、とにかくよく弾かれる人気曲である。多くの人にとって耳馴染みのある作品だけに、佐藤が展開する壮大な「ツィクルス」の流れの中で、あらためてじっくりと耳を傾けることのできる最良の機会だ。 D899は、続けて演奏すると40分近くを要する大曲。シリアスさや、温もりを感じさせる流麗さなど、1曲ごとのヴァリエーションを佐藤がどう聴かせてくれるか楽しみだ。D935は4楽章からなる1つのソナタとして捉えられることもある。情熱的かつ緻密な佐藤のアプローチが冴えわたる4章となりそうだ。 このツィクルスは、15年をかけて室内楽も含むシューベルトの全ピアノ作品を網羅しようとする一大プロジェクトの一環。佐藤卓史本人がシリーズに関して綴るブログ「シューベルティアーデ電子版」では、「即興曲の起源」という意欲的な学術的記事も投稿されている。たっぷりと予習してコンサートに出かけるのも面白いかもしれない。

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