eぶらあぼ 2015.4月号
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49大萩康司 プロデュース 「ギターと声」Vol.1 ~ギターが紡ぐ美しき日本のことば~ Guitar & Voice息の合ったデュオが織り成す繊細なニュアンス文:オヤマダアツシレイフ・オヴェ・アンスネス(指揮/ピアノ) マーラー・チェンバー・オーケストラ ベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲演奏会“グレート・ジャーニー”のクライマックス文:柴田克彦5/22(金)19:00 Hakuju Hall問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700 http://www.hakujuhall.jp5/15(金)19:00 第2番・第3番・第4番 5/17(日)14:00 第1番・第5番「皇帝」東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp 歌とギターによるデュオは数あれど、コンサートのタイトルを見て「ん?」と思わせてくれ、じっくりと歌の素晴らしさが味わえる選曲に感嘆し、独特の落ち着いた雰囲気で聴き手を包んでくれるコンサートは満足感が高い。東京・渋谷のHakuju Hallで5月からスタートするシリーズ「ギターと声」(なんというシンプルでド・ストライクなタイトル!)は、ギタリストの大萩康司がプロデュースする全3回のシリーズ。このホールの夏フェスとも言える『ギター・フェスタ』などにも出演し、ホールの響きを熟知している大萩だが、だからこそのオリジナル企画に期待してしまうのだ。 第1回のゲストに迎えるのは、メゾソプラノの林美智子。Hakuju Hallでこの2人といえば、2008年の秋に行われた「おはぎとおみち」をはじめ、ガラ・コンサートやロビー・コンサートなども合わせると共演は多数。まさに「息の合った」デュオが今回のコンサートで取 ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会は、決して珍しくない。だがこの公演は意味が違う。抜群のテクニックと綿密な解釈で世界的評価を得てり上げるのは、日本語のさまざまな形をメロディに乗せて歌われる歌曲たちだ。別宮貞雄、山田耕筰、中田喜直、そして2人が共演したCDやコンサートも好評だった武満徹。約300席という空間だからこそ伝わる繊細なニュアンスいるトップ・ピアニスト、レイフ・オヴェ・アンスネスが、4年をかけて行ってきたプロジェクトのクライマックスなのだ。彼は、2012年からベートーヴェンのピアノ協奏曲を世界各地で演奏する『ベートーヴェンへの旅』を開始した。それは55都市で150回以上の公演を開催する一大プロジェクト。しかも、12年は1&3番、13年は2&4番、14年前半は5番を、弾き振り及び様々な指揮者&楽団との共演で演奏し、14年後半からマーラー・チェンバー・オーケストラ(MCO)を弾き振りして全曲ツィクルスを行うという周到な段取りで実施してきた。そして5月の日本公演は、MCOとの全曲演奏の8回目にあたる。つまり今回は、多様な経験を踏まえて練り上げられた究極の解釈を耳にするが、このシリーズならではの“宝物”かもしれない。それゆえに2人が表現できる世界もあるのだから。コンサートの前半には大萩のソロによる日本のギター作品も4曲。じっと耳を澄ませて、空気の振動さえも聴きたい一夜だ。ことになる。 道中でCD録音も行われ、昨秋完結した。それを聴くと、明確にして清冽なタッチで紡がれるニュアンスに富んだ演奏に感嘆させられる。情感豊かでのびやかな、雄弁さと美しさを併せ持つベートーヴェン…。これは滅多に聴けるものではない。亡きアバドの信頼を得ていた実力派集団MCOとの自然な呼吸感も特筆もの。今回はこの名奏を、いや更に深化した音楽を生で味わえる。 「ベートーヴェンの協奏曲は、あらゆるフレーズに意味があり、驚きもある」とアンスネスは言う。最高のピアニストが、最高の作曲家の名作を、最高の状態で聴かせる本公演は、聴き手にとっても記念碑的な体験となるに違いない。林 美智子 ©Toru Hiraiwa大萩康司 ©Ryotaro Horiuchiレイフ・オヴェ・アンスネス ©Özgür Albayrak

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