eぶらあぼ 2015.4月号
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247マリインスキー・バレエ『愛の伝説』など、4つの名作にみる高貴な華文:守山実花 変わらぬスタイルを守りながら、進化を続けるマリインスキー・バレエがこの秋来日、4作品を上演する。まず注目したいのは、グリゴローヴィチ振付の『愛の伝説』。グリゴローヴィチというと、ボリショイ・バレエの印象が強いが、その出発点はサンクトペテルブルク。この『愛の伝説』も1961年、当時のキーロフ劇場で初演され、後にボリショイで上演された。マイムによる説明的な表現に頼ることなく、ダンスの力でドラマを展開させていく、グリゴローヴィチ初期の傑作だ。スケールの大きな群舞と叙情性にすぐれた繊細な表現で、自己犠牲、献身、愛、嫉妬、苦悩…さまざまな感情渦巻く激烈な愛憎劇が生成されていく。必見だ。 やはりこの劇場で初演され、クランコ、マクミランら西側の振付家にも大きな影響を与えた、ラヴロフスキー版の『ロミオとジュリエット』。優美で抑制の効いた振付から、しっとりとした情感『ジュエルズ』11/26(木)18:30 文京シビックホール 『愛の伝説』11/27(金)18:30、11/28(土)13:00 東京文化会館 『ロミオとジュリエット』11/30(月)~12/2(水) 東京文化会館 『白鳥の湖』12/4(金)~12/6(日) 東京文化会館問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jpがたちのぼっていく。 一夜限りの贅沢なステージは、マリインスキーにルーツを持つバランシン振付『ジュエルズ』。煌く宝石の輝きに寄せて、フランス、アメリカ、ロシア、それぞれのバレエへのオマージュが捧げられる。 音楽性に優れたダンサーたちの表 『春の祭典』から ©羽鳥直志Co.山田うん『春の祭典』『七つの大罪』20世紀の問題作を一挙上演文:高橋彩子 ハードな動きから躍動感あふれる世界を作り出し、命の炎を煌めかせる振付家・山田うん。彼女の振付・演出による『春の祭典』『七つの大罪』が、今春の「Co.山田うん」公演で連続上演される。 ストラヴィンスキーが作曲し、1913年にニジンスキーの振付で初演された『春の祭典』。Co.山田うん版は2013年に発表され、大きな話題を呼んだ。音楽には、ゲルギエフ指揮&キーロフ歌劇場管弦楽団による1999年の録音を使用。激しく濃密な音楽と向き合って作り上げた、緻密にして立体的な振付と、そこに命を吹き込む肉体のパワーは圧巻だ。 一方、『七つの大罪』は、ブレヒト歌詞&クルト・ワイル作曲の歌付きバレエとして33年に初演された作品(振付はバランシン)。Co.山田うん版としては、今回が初演の新作となる。物語は、田舎から出て来た娘アンナが、7都市を巡り、金をためて田舎に家を建てるまで。キリスト教の概念である七つの大罪=怠惰・高慢・激怒・飽食・姦淫・貪欲・嫉妬をキーワードにしつつ、資本主義社会を風刺する作品だ。アンナは二人一役で、本来は理性的側面を歌い手が、感情的側面を踊り手が担うのだが、今回の舞台では川合ロンと山田うんの二人が踊り、歌い、台詞も話すという。音楽は芳垣安洋の編曲の下、4名の音楽家が生演奏で送る。 ともにシャンゼリゼ劇場で世界初演され、20世紀のエポックメイキングな作品となった2作は、21世紀の今、Co.山田うんを通して私達にどう響くだろうか。3/21(土)、3/22(日)各15:00 アイホール(伊丹市立演劇ホール) 問 アイホール072-782-20004/24(金)~4/26(日) 東京芸術劇場シアターイースト 問 Co.山田うん080-9640-5361 office.coyamadaun@gmail.com現力と妙技を堪能できる作品だ。お家芸『白鳥の湖』については、もはや言葉を重ねる必要はないだろう。 至宝ロパートキナを筆頭に、充実期のテリョーシキナ、シクリャローフ、ソーモワ、さらに若い世代まで、ダンサーたちがつくりあげる彫琢された究極の美の世界に浸りたい。テリョーシキナシクリャローフソーモワロパートキナ

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