eぶらあぼ 2015.3月号
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50河村尚子(ピアノ) 日本デビュー10周年記念公演新たなる飛翔を告げるリサイタル文:宮本 明ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団いよいよ大作《パルジファル》に挑む文:飯尾洋一3/13(金)19:00 東京オペラシティコンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp他公演3/15(日)京都コンサートホール(小)(京都ミューズ075-441-1567)第49回 川崎定期演奏会3/13(金)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール第628回 定期演奏会3/14(土)18:00 サントリーホール問 TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp 豊かな感性により、あたかも深い遠近法を用いるように音楽を紡ぐ河村尚子。2004年11月に小林研一郎指 ジョナサン・ノットのもと、快進撃を続ける東京交響楽団。いよいよこの3月にはワーグナーの舞台神聖祝典劇《パルジファル》(抜粋)に挑む。ノット新音楽監督の最初のシーズンの締めくくりにふさわしい、特別な作品が取りあげられることになる。 もっともノットは東京交響楽団の音楽監督に就任して以来、ずっと“特別な作品”ばかりを取りあげてきたともいえる。マーラーの交響曲第8番「千人の交響曲」や、同じくマーラーの交響曲第9番、シューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」等々。最初のシーズンを、まずは慎重なプログラムで始めるのではなく、いきなりその作曲家の集大成的な傑作を選んで、スロットルを全開にしてオーケストラとの結びつきを強めてきた。その成果がワーグナーの《パルジファル》抜粋で発揮される。独唱者はパルジファル役のテノール、クリスティアン・エルスナーと、クンドリ役のソ揮の東京フィル定期演奏会でショパンのピアノ協奏曲第2番を弾いた日本デビューから、早いものでもう10年。5歳から暮らしているドイツを拠点に活動しつつ、ソロ、協奏曲、室内楽、そしてレコーディングと、国内でもその足取りを順調に示してくれているのはうれしいかぎり。3月に10周年記念リサイタルを行なう。 プログラムは、彼女のコンサートに通うファンならおなじみであろうブゾーニ編曲のJ.S.バッハから「シャコンヌ」、国内デビュー盤以来CDでも繰り返し取り上げている代表的なレパートリーのショパンからは「マズルカ第13番」「ワルツ第5番」「ノクターン第8番」プラノ、アレックス・ペンダの二人。 ノットは驚嘆すべき幅広いレパートリーの持ち主である。現代音楽にも並ならぬ意欲を持つ一方で、歌劇場でオペラの豊富な経験も持つ指揮者は決して多くはない。2013年のルツェルン音楽祭ではワーグナーの《ニーベルングの指環》全曲を演奏会形式で上演している。今回演奏されるベルクの「抒情組曲」からの3つの小品とワーグナーの《パルジファル》という組合せは、ノットの魅力を最大限に伝えてくれるものとなるだろう。©Hirofumi Isakaジョナサン・ノット ©K.Miuraクリスティアン・エルスナー©Anne Homannアレックス・ペンダ©Mat Hennek「舟歌」とたっぷり。さらに、昨秋リリースした10周年記念のオール・ラフマニノフアルバムで協奏曲のカップリングとしても収められ、豊かな表現が魅力的だった「前奏曲op.23 第10番」と、今回新たに「同第7番」も披露。2011年に他界した恩師ウラディーミル・クライネフが愛したレパートリーでもあるプロコフィエフの第6番「戦争ソナタ」と、ロシア音楽も並ぶ。まさにこれまでの彼女の歩みを振り返りつつ、その着実な成果の集積である現在を再確認するような選曲だ。次の新たな10年へ踏み出す彼女の一歩を、ぜひ会場で共有したい。なお東京の2日後には京都でも同プログラムを弾く。

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