eぶらあぼ 2015.3月号
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35全国共同制作プロジェクト モーツァルト《フィガロの結婚》井上×野田の異色タッグが巻き起こす“フィガロ旋風”文:江藤光紀第一生命ホール ライフサイクルコンサートオペラの楽しみ ~避暑地で乾杯! 恋のカクテルオペラで描く人生模様文:宮本 明【春期】5/26(火)金沢歌劇座(金沢芸術創造財団076-223-9898)、6/6(土)・6/7(日)兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)、6/10(水)サンポートホール高松(087-825-5008)、6/17(水)ミューザ川崎シンフォニーホール(044-520-0200) 関連公演:5/30(土)・5/31(日)フェスティバルホール【後期】東京・山形・宮城・宮崎・熊本3/1(日)14:00 第一生命ホール問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 http://www.triton-arts.net 指揮者・井上道義と演出家・野田秀樹。活躍するフィールドは違えど、奇才と誰しも認める二人が、モーツァルトのオペラで初コラボする。30年近い昔、井上が野田に宛てた一通の手紙に込められた思いが、とうとう実現するというわけなのだ。 この間、二人はそれぞれの世界で押しも押されもせぬ大家となった。井上は大病からも見事に復活を遂げた。異色タッグの才気走ったアイディアの融合、そして彼らが培ってきた経験、人間としての厚みが、今回の《フィガロの結婚》にどう反映されてくるのだろうか。 キャストはナターレ・デ・カロリス(アルマヴィーヴァ伯爵)、テオドラ・ゲオルギュー(伯爵夫人)、マルテン・エンゲルチェズ(ケルビーノ)といった世界で活躍する歌手を中核に据える一方、日本の若手も積極的に起用している。しかし、井上&野田のコンビでは、通り一遍の上演で済むはずもなかろう。詳細は明らかではないが、舞台は日本に移し これは面白そう。さまざまなオペラの名曲を、新たなストーリーに組み込んで楽しく聴かせる『オペラの楽しみ』。2013年に行なわれた初回公演の好評を受けての第2弾だ。前回に続いてオリジナルの脚本を手がけたのは、メゾソプラノの牧野真由美。もちろん彼女も出演する。 物語は、避暑地の小さなホテル「ブロンズ・リリー」を舞台に、二人の女性客とホテルの支配人、その従兄弟が絡んで繰り広げる恋模様。ホテルの客・掘美留子にソプラノの光岡暁恵、もう一人の客・安土恵那に牧野、支配替えられ日本語が飛び交う箇所もあるという。その奇想天外な波瀾万丈ぶりは、それぞれの配役に割り振られた日本名からもうかがえる。フィガロは「フィガ郎」(大山大輔)、スザンナは「スザ女」(小林沙羅)、クルツィオは「狂っちゃ男」(三浦大喜)で、マルチェリーナは「マルチェ里奈」(森山京子)。これだけでも、なにやらとんでもないことが起こりそうな気配が漂ってくるではないか。 井上×野田版《フィガロ》は金沢を皮人・蒲原徹にバリトンの大石洋史、従兄弟の鳥井銅太郎にテノールの澤﨑一了と、藤原歌劇団のメンバーたちが顔を揃えるほか、ホテルのピアニスト役に実際のピアニスト瀧田亮子が当てられている。 避暑地を舞台にしたオペラといえば、すぐに思い浮かぶのがロッシーニの《ランスへの旅》。あそこに登場するのが「金の百合亭」だから、「ブロンズ・リリー」はきっと2ランクばかり下の宿切りに、春期・秋期と合わせ、全国10都市で上演予定。2015年、日本全国に新たな“フィガロ旋風”が巻き起こる!なのだろう。登場人物たちの変わった名前も、どうやらオペラ作品の役名に関係がありそうだ。それはきっと、当日歌われる曲目にもリンクしているはず…。そんなことにも考えを巡らせつつ、気楽に楽しみに出かけたいエンタテインメントだ。演奏曲は《フィガロの結婚》《ランスへの旅》《愛の妙薬》《カヴァレリア・ルスティカーナ》《カルメン》などから、有名なアリアや二重唱が選ばれている。井上道義 ©加納典明野田秀樹光岡暁恵牧野真由美澤﨑一了大石洋史瀧田亮子

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