eぶらあぼ 2015.2月号
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36ジャン=クリストフ・スピノジ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団今年も春を呼ぶ指揮者がやってくる文:山崎浩太郎シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団全ては刺激的な“新世界”へと向う文:柴田克彦#535 定期演奏会 2/20(金)19:15 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp第545回 定期演奏会 2/13(金)19:00 サントリーホール第174回 東京芸術劇場マチネーシリーズ 2/15(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp 指揮者ジャン=クリストフ・スピノジは“春を告げるひと”、私は勝手にそう思っている。 2010年に新日本フィルの指揮台に初登場してハイドンの交響曲「雌鳥」や「熊」の生気あふれる演奏を聴かせてくれたのは6月、初夏の時期のことだったが、その次の登場は2年後の3月で、ここから新日本フィルに“春の到来をつげる指揮者”としての活躍が始まった。 このときはバロック音楽を得意とするピリオド系の指揮者、というイメージを軽やかに裏切って、ドヴォルザークの「新世界より」を躍動的に聴かせた。以前の日本では年末に「第九」で新年が「新世界より」という演奏会がよくあったが、この曲は寒い1月よりも花が芽吹く春にこそふさわしいと、教えてくれるような演奏だった。 昨年は2月の末。お国もののフランス音楽から、ビゼーの《カルメン》の合唱つき抜粋とラヴェルにドビュッシー カンブルラン&読響は、いま成熟の域に入っている。昨年12月のメシアン「トゥーランガリラ交響曲」は、それを確信させる名演だった。美しくも密度の濃い響きで、音の綾を精妙に描いたこの演奏は、作品のクラシカルな美感を炙り出し、両者の充実ぶりを如実に知らしめた。彼らは来る3月、同じプログラム(前半は酒井健治の新作)を携えて、12年ぶりの欧州公演に挑む。実にチャレンジングだが、2月に披露されるもう1つのツアー・プログラムも、それに劣らぬほど意欲的だ。 ひと言で言えば“新世界”プログラム。メインのドヴォルザーク「新世界より」は、作曲者が新天地アメリカから故郷へ宛てた“音楽レター”であり、言うまでもなく日本人の琴線を刺激してきた超名曲である。だが、いかなる曲をも耳新たな音楽としてしまうカンブルランだけに、想像を超えた「新世界」出現の予感が漂う。一方の目玉、バルトークのヴィオラ協奏曲も、母国ハンガリーからアメリカに移った作曲者が、馴染めぬ生活のを聴かせた。《カルメン》では会場のサントリーホールがまるでスペインの街角に変身。生き生きとさんざめく群衆の豊かな表情も素晴らしく、ドラマに対するスピノジの鋭敏なセンスを実感させたものだった。そして不思議にも、この日から陽気はどんどん春めいていった。 さて今回のプログラムはロッシーニの《チェネレントラ》序曲、シューベルトの交響曲第3番、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付」。19世紀前半の前二者はいかにもスピノジ向きだし、最期に遺した名品。こちらはソロを弾くニルス・メンケマイヤーが大注目だ。1978年ドイツ生まれの彼は、巨匠バシュメットも一目置く新世代の実力派。先頃ソニーからリリースされたCDも雄弁かつナチュラルな妙演ゆえに、ヴィオラの協奏曲の最高傑作を弾く今回は、ぜひ耳にしたい。さらには武満徹「鳥は星サン=サーンスの壮大な「オルガン付」(オルガン:松居直美)ではどんな響きを聴かせるのか、胸が躍る。今度もきっと、春を告げてくれるはずだ。形の庭に降りる」とアイヴズ「答えのない質問」も華を添える。共に20世紀音楽に新世界を切り開いた作曲家&作品。これはもう全てが示唆に富んでいる。 この刺激的なプログラムを、欧州旅行を前にした覇気漲るコンビで聴くことは、間違いなくエキサイティングな体験となる。ジャン=クリストフ・スピノジニルス・メンケマイヤー ©Irene Zandelシルヴァン・カンブルラン ©読響

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