eぶらあぼ 2015.2月号
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34トップに据えた特別編成の管弦楽と地元市民らの合唱が参加する。 本当の「地方創生」はこうした挑戦から始まるのだろう。左より:パーヴォ・ヤルヴィ©Julia Bayer/アリサ・ワイラースタイン©Jamie Jung庄司紗矢香©Julien Mignol/ピョートル・アンデルジェフスキ©K.MiuraNHK交響楽団 定期公演第1802回 Aプログラム 2/7(土)18:00、2/8(日)15:00 NHKホール第1803回 Cプログラム 2/13(金)19:00、2/14(土)15:00 NHKホール第1804回 Bプログラム 2/18(水)19:00、2/19(木)19:00 サントリーホール問 N響ガイド03-3465-1780 http://www.nhkso.or.jpNHK交響楽団 横浜定期演奏会 2/21(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmhNHK交響楽団 定期演奏会 愛知県芸術劇場シリーズ2/22(日)15:00 愛知県芸術劇場コンサートホール問 愛知県芸術文化センター052-972-0430 http://www.aac.pref.aichi.jpパーヴォ・ヤルヴィ(指揮) NHK交響楽団パーヴォの就任は時代を画する“事件”文:江藤光紀 さあ、いよいよ日本の音楽シーンに今を時めくトップ指揮者が乗り込んでくる。今年9月のシーズンから、NHK交響楽団の首席指揮者にパーヴォ・ヤルヴィが就任するのだ。 この20年ほどの間に東京のオーケストラのグローバル化は一気に進み、外国人スター指揮者が次々に主要ポストについた。しかし多くはキャリアの固まった大ベテランであった。これが新日本フィルのダニエル・ハーディングや、東響のジョナサン・ノットの音楽監督就任あたりから、変わってきた。グローバルな音楽シーンの動向を決める旬の指揮者が、楽団運営に参画するようになったのである。東京は激動する世界の音楽シーンの中心の一角に浮上しつつある。パーヴォのN響着任はそうした流れを象徴する、時代を画する“事件”だと筆者は思う。 なにせこの10年間のパーヴォの快進撃振りはすごかった。名門パリ管から色彩感豊かな音楽を引き出し、ドイツ・カンマーフィルとはピリオド・スタイルを応用した電撃的なベートーヴェン演奏で大きな反響を呼んだ。その仕事が2000年代の演奏史の中核に位置することは間違いないが、彼は現在も進化している。私たちはここ日本で、パーヴォがN響とともに21世紀の演奏史を作っていくのを目の当たりにすることになる。 9月の就任披露を控え、2月にはその前哨戦ともいえる公演が行われる。今後を占う重要な試金石となろう。東京定期、横浜と愛知で3プログラムが用意されているが、曲目も目配りが効いている。まずメイン曲を見ていくと、2月7日、8日はマーラーの「巨人」。13日、14日はショスタコーヴィチ「交響曲第5番」、18日、19日と横浜、愛知の公演はR.シュトラウス「ドン・ファン」と「英雄の生涯」。19世紀末から20世紀前半にかけての重要曲で、当然N響との今後の協働においても中心になるであろうレパートリー群だ。パーヴォの前任先、シンシナティ響やフランクフルト放送響では、重厚な作品でも躍動感あふれる演奏を聴かせてくれた。今後、それらがN響の持ち味と合わさってどう表現されるのだろうか。興味は尽きることがない。 各日に配されたソリストも豪華だ。エルガーの協奏曲を弾くチェロのアリサ・ワイラースタイン(2/7,2/8)はデッカの専属録音アーティスト、バルセロナ響のアーティスト・イン・レジデンスなどを務めている。庄司紗矢香(2/13,2/14)はシベリウスのヴァイオリン協奏曲、ピョートル・アンデルジェフスキ(2/18,2/19,2/21, 2/22)はモーツァルトのピアノ協奏曲第25番と、いずれも得意曲で登場。ソリストとの協働が滅法うまいパーヴォだけに、水を得た魚のように生き生きとした名手たちのパフォーマンスが楽しめるだろう。2/13(金)18:30、2/15(日)15:00 飛驒市文化交流センター スピリットガーデンホール問 オペラ天生プロジェクト事務局0577-73-0180 http://www.kouryu-c.com飛驒市文化交流センター開館10周年記念事業 オペラ《天あもう生》 世界初演人間愛と自然愛を描くドラマ文:宮本 明水口 聡 Photo:K.Miura 飛驒市文化交流センターが10周年記念事業として新作オペラ《天生》を上演する。同センターがある飛驒市古川町では1970年代から国際音楽祭を開催。また、88年には飛騨古川音楽大賞を制定するなど、音楽への関わりも活発な町だ。 《天生》は同市西端の天生峠一帯を舞台に、主人公の男女が神々らに導かれ、村人と力を合わせて自然災害から村を救う。自然との共生や、隣接する白川郷の合掌集落に残る住民の協力精神「結(ゆい)」をテーマにした、全2幕・約85分の作品だ。作曲は吹奏楽界のカリスマとしても知られる伊藤康英。市が、「日本語の美しさを大切に、お客さんが帰り道にメロディを口ずさめるような作品を」という彼の姿勢に共鳴した。 飛驒市出身のテノール水口聡(神々の長)はじめ、オーディション選抜による若手、ベテランの歌手たちが名を連ねる。指揮は高橋勇太で、礒絵里子を

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