eぶらあぼ 2015.1月号
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78黒い薔薇歌劇団 旗揚げ公演 モーツァルト《魔笛》楽しい工夫が仕掛けられたステージに期待文:宮本 明サッシャ・ゲッツェル(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団胸に染み渡る巨匠最晩年の至高の境地文:柴田克彦2015.1/17(土)15:00 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール問 かつしかシンフォニーヒルズ03-5670-2233 http://www.k-mil.gr.jp第305回 定期演奏会 みなとみらいシリーズ2015.1/24(土)14:00 横浜みなとみらいホール問 神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 http://www.kanaphil.or.jp 「黒い薔薇歌劇団」? モーツァルト《魔笛》で旗揚げ公演を行なうこの怪しげな団体は、バリトン宮本益光が主宰する新しいオペラ・カンパニー。奇妙な名は二ノ宮知子のコミック『のだめカンタービレ』の「アンコール オペラ編」(単行本24&25巻)に登場する市民オペラ団体「白い薔薇歌劇団」から想を得ている。『のだめ』に取材協力していた宮本は二ノ宮とは既知の間柄だから、もちろん許可を得ての命名であるだけでなく、公演チラシは二ノ宮の描き下ろしによる出演者の似顔絵イラストをあしらった貴重版! 主宰の宮本によれば、所属や構成員を定義していない団体とのことだが、旗揚げ公演に集まった顔ぶれは豪華だ。宮本がパパゲーノ役と構成を務め、鈴木准(タミーノ)、砂川涼子(パミーナ)、鵜木絵里(パパゲーナ)、塩田美奈子(夜の女王)、大塚博章(ザラス 軽やかなニューイヤー・コンサートもいいが、1月も後半になれば重厚な音楽も聴きたい…。そんなファンにお薦めなのが、神奈川フィルの1月定期「みなとみらいシリーズ」。本公演では後期ロマン派の大家、R.シュトラウスとブルックナーの最晩年の深遠な世界を堪能できる。 指揮は、ウィーン生まれのサッシャ・ゲッツェル。ウィーン・フィルのヴァイオリン奏者から指揮者に転身した彼は、クオピオ響ほか複数のポストをもち、バーミンガム市響やウィーン国立歌劇場などに客演している。2013年より神奈川フィルの首席客演指揮者に就任。本場の香り溢れる瀟洒な音楽を聴かせているから、今回の独襖ものへの期待も大きい。 幕開けは、映画音楽で知られるコルンゴルトが書いた、J.シュトラウスへのオマージュ「シュトラウシアーナ」。捻りを加えて新年を祝う粋なセンスが光る。次はR.シュトラウスの「4つの最トロ)といった、人気・実力・実績ともに充実のメンバーたち。字幕付き原語上演に加えて、よりわかりやすくという意図だろう、ナレーションも付く。そのナレーションを俳優・長谷川初範が務めるのも、これまた豪華。石野真穂のピアノ伴奏による上演だが、公演チラシ後の歌」。華麗な交響詩やオペラで名高い作曲者が、死の直前に残した同曲は、人生への別れを清澄なトーンで描いた美品。巨匠達観の境地が、万人の胸に染み渡る。ウィーンで学び、当地の歌劇場やボン・ベートーヴェン音楽祭の「第九」などに出演しているソプラノ、チーデム・ソヤルスランの歌声も要注目だ。そして、未完ながら至高の完には「魔法の笛:難波薫(フルート)」「魔法の鈴:髙島美沙(ダンサー)」と、音楽スタッフなのかキャストなのか判別しづらい名前も。多彩な活動を繰り広げるアイディア豊富な宮本だけに、なにやら楽しげな工夫を仕掛けているようだ。そこは観てのお楽しみ!成度をもったブルックナー最後の交響曲第9番。重厚さも激しさも彼岸へと浄化されるこの音楽を、ウィーン出身のゲッツェルが響きの柔らかな神奈川フィルと奏でれば、ピュアな感動が衒いなくもたらされるに違いない。 稀代の名作で新年を飾る意気込みや良し。ここは聴く側も深みを味わい尽くそう。鈴木 准砂川涼子塩田美奈子宮本益光チーデム・ソヤルスランサッシャ・ゲッツェル

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