eぶらあぼ 2015.1月号
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44 ©中村 治次代へ伝えたい名曲 第3回 堀米ゆず子 ヴァイオリン・リサイタル2015.1/10(土)14:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール問 彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939 http://www.saf.or.jp/arthall円熟の名奏者が名品に託す深き思い取材・文:柴田克彦Interview堀米ゆず子(ヴァイオリン) 日本屈指の実力派ヴァイオリニスト・堀米ゆず子が、1月10日、彩の国さいたま芸術劇場のシリーズ『次代へ伝えたい名曲』に出演する。彼女が今回選んだのは、モーツァルト、ドビュッシー、三善晃、フランクの作品。この構成は「三善晃から始まった」という。 「公演の日は2013年に亡くなられた三善先生の誕生日。まずは追悼の意味もあって『ヴァイオリンのための鏡』を伝えたいと考えました。そして、先生が影響を受けたフランス系の音楽で、私が住むベルギー出身でもあるフランクのソナタで締めくくり、新春に相応しいモーツァルトのソナタK.454と、『鏡』への流れからドビュッシーのソナタを前半に置きました。これらは『伝えたい』というよりも『伝わる』曲だと思います」 三善晃の無伴奏曲「鏡」への想いは強い。 「桐朋時代の7年間に、先生から密接な指導を受け、学長として助けても頂きました。『鏡』は、その時期の1981年=最盛期の作。先生とは卒業後も親交を深めましたし、お別れの会でもこれを弾きました。20世紀の無伴奏曲の中で技術的に最も難しいのですが、とても緻密で、バッハの対位法を思わせる面もあります。『鏡』とは“自者と他者”“バッハと自分”などの意味。曲全体が大きくクレッシェンドしながら、三善先生らしい激しさ、衝撃、驚きや静謐な部分が現れる、変化に富んだ作品です」 また今回は、「美しさと陰影。構成力を持ちつつ、あくまでピュアな音楽」がコンセプトでもある。 「モーツァルトのK.454は、第2楽章をはじめ、後期特有の陰影がありますし、ヴァイオリン・ソナタとしては稀にみる大曲で、構成感がしっかりしています。ドビュッシーのソナタは、各楽章がひとつの小品ともいえる面白さと陰影を持ちながら、構成力のある傑作。フランクのソナタも、ドイツの構成感とフランスの和声感を併せ持ち、レチタティーヴォなど陰影が多く含まれています」 加えて「ベルギーはフランスとは気質が全く違うし、フランクにはベルギーらしい重い和声感もある」というから、そのソナタでは、約30年同地に暮らす堀米ならではの表現が期待される。 またこれらはピアノの比重が高い。その点、今回共演する津田裕也は「5年ほど前から再三共演している頼もしい仲間。音楽作りが自然で、何でも弾ける」ので、実に心強い。 彼女は、10年ほどブリュッセル王立音楽院で教授を務め、「ヴァイオリンのパートを弾くのは氷山の一角に過ぎない。音楽は少なくともピアノ譜から読み、作曲家の僕(しもべ)として深く感じ、喜びを見出すよう」指導しているとのこと。今回は、そんな堀米の“伝えたい音楽”を、ぜひ肌で感じたい。2015.1/24(土)15:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.comおとなの直球勝負 14 伊藤 恵(ピアノ)深い共感で迫るシューマン夫妻の世界文:高坂はる香 ©武藤 章 シューマンという果てしなく豊かな想像力を持つ作曲家に、長きにわたり向き合い続けて来たピアニストの伊藤恵。“脂ののりきったアーティストが考え抜いたプログラムで真価を聴かせる”トッパンホール「おとなの直球勝負」シリーズで、これまで培ったシューマンへの深い理解を披露する。 演奏されるのは、若き日のシューマンの創作の源となった妻クララへの想い、ふたりの絆が感じられる作品ばかり。シューマンからは、「クライスレリアーナ」と「幻想曲」。ロマンあふれる2つの大曲を1夜にして聴くことができるのは貴重な機会だ。それぞれの作品の前には、そこから少しの時を経てクララが作曲した「ロベルト・シューマンの主題による変奏曲」、「4つの束の間の小品」が置かれる。シューマンの音楽への尊敬と理解が伝わる作品が、彼のファンタジーに満ちた音楽の世界をより身近に感じさせてくれるだろう。 伊藤が深い共感とともに迫る、シューマンの幻想の世界。必聴のリサイタルだ。

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