eぶらあぼ 2015.1月号
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240ものだという。 「僕とラルビとBunkamuraさんで何かやろうという話は前からあったのですが、多忙なラルビとタイミングを合わせるのが難しくて。僕が文化交流使をしている間にベルギーで彼の新しい作品が開幕するというので、プレミアを観に行って挨拶したんです。そうしたらその後、ちょうど彼のスケジュールが空き、今回の公演が決まりました。メールや電話ではなく、実際に顔を見せてお互いの存在を認識し合うことが大事なんだと、改めて感じました」舞台ならではの面白さ これは、パフォーマーと観客とがその日限りの上演に立ち会う生の舞台にも、通じる話なのではないだろうか。 「そうですよね。僕は映像ももちろん好きですが、何を見せるかは監督が決めるもので、視点は自ずと絞られていく。でも舞台では、舞台上のキャッチボール、そして舞台と客席のキャッチボールが楽しめる。そこが良いのでしょうね」 森山のほか、永作博美、柄本明、吉見一豊、松重豊、寺脇康文らが出演者として名を連ねるこの作品は、いわゆるダンス公演ではない。ラルビのクレジットも「演出・振付」だ。一体、どんな作品ができあがるのか? 「まだまだ今は素材作りの段階です。光るダンスセンス 2014年、ダンスフェスティバル“Dance New Air”において上演された『談ス』で、あるいは、東京都現代美術館でのインバル・ピント&アブシャロム・ポラックダンス・カンパニー『ウォールフラワー』で、森山未來の踊りに目を見張った観客は少なくないだろう。 もともと身体表現でのセンスが光る人で、スティーブン・バーコフ演出『変身』、インバル&アブシャロム演出・振付・美術『100万回生きたねこ』、シディ・ラルビ・シェルカウイ振付『テ ヅカTeZukA』といった大舞台で、その才能は発揮されていた。 一方、ダンサーたちとのSTUDIO MODERN MILLIE DANCE LIVEや、きゅうかくうしお vol.0『素晴らしい偶然をもとめて』といったコンパクトな舞台では、踊りへの変わらぬ情熱を感じ取ることもできた。ラルビとタッグを組む新作 そんな彼が、13年10月から1年間、文化交流使として主にイスラエルのインバルたちの下で活動し、よりタフでオープンなパフォーマーとなって帰ってきたのだ。そして15年1月、新作『プルートゥ』で、彼は『テ ヅカTeZukA』に続いてラルビとタッグを組む。 『プルートゥ』とは手塚治虫の漫画『鉄腕アトム―地上最大のロボット』を、漫画家の浦沢直樹とストーリー共同制作者の長崎尚志がリメイクした長編漫画。その舞台化というユニークな企画は、アトム役を演じる森山自身が実現させた2015.1/9(金)~2/1(日) Bunkamuraシアターコクーン 問 Bunkamuraチケットセンター03-3477-99992015.2/6(金)~2/11(水・祝) 森ノ宮ピロティホール 問 キョードーインフォメーション06-7732-8888 http://www.pluto-stage.jp森山未來 『プルートゥ PLUTO』ジャンルを超えたエンターテイメント出動!取材・文:高橋彩子InterviewCatch Upラルビは、身体だろうが音楽だろうが、すべてを素材としてフラットに扱う。一個一個の情報なりビジュアルなり、その本質を受け止めて、どう組み合わせるか?といった遊び方をするんです。そういう作業ってコンセプチュアルにもなり得るけれど、彼は同時にエンターテインメントが好きでもある。彼をピックアップした振付家アラン・プラテルが徹底的に行くところまで行っちゃう方なのに対し――僕はプラテルもメチャクチャ好きですが――最終的に作品をポップなものに昇華させるラルビは、とても信頼できる存在です」 表現者としてのセンサーに磨きをかけた森山が信頼を寄せる相手と作り上げる舞台。しかと見届けたい。

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