eぶらあぼ 2015.1月号
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170CDCDCDCDR.シュトラウス:4つの最後の歌、英雄の生涯/ネトレプコ&バレンボイムシューベルト:ピアノ・ソナタ第18番「幻想」・第9番/高橋アキじゅうもんめコンサート/栗友会メンデルスゾーン&ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲集/松本蘭&水野由紀&村松亜紀R.シュトラウス:4つの最後の歌、交響詩「英雄の生涯」アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)ダニエル・バレンボイム(指揮)シュターツカペレ・ベルリンシューベルト:ピアノ・ソナタ第18番「幻想」・第9番高橋アキ(ピアノ)寺嶋陸也:エチュードとインヴェンション/三善晃:月夜三唱/鶴見幸代:八重山民謡「ムル焼け」/木下牧子:ソルシコス的夜/新実徳英:憶良の詠へる 他栗山文昭(指揮)浅井道子、寺嶋陸也(ピアノ)栗友会 他メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番「大公」松本蘭(ヴァイオリン)水野由紀(チェロ)村松亜紀(ピアノ)収録:2014年8月、ベルリン(ライヴ)ユニバーサルミュージックUCCG-1690 ¥2800+税カメラータ・トウキョウCMCD-28316 ¥2800+税収録:2014年3月、東京(ライヴ)日本アコースティックレコーズNARC-2114 ¥2500+税オクタヴィア・レコードOVCL-00556 ¥3000+税2曲とも実に見事な演奏である。「4つの最後の歌」は、いまや絶好調と思われるネトレプコの豊穣な声量による表情豊かな歌に魅せられる。この曲に内包されているある種の“枯れた”演奏でこそないが、声楽的には完璧。この作品としては、最も聴き映えするものの1つと断言しよう。「英雄の生涯」では、野太さがありながら適度にシェイプアップされた響きが作られているのが興味深い。ディテールの鮮明さと見通しの良さが抜群で、バレンボイムならではの重量感ある響きがプラスされているのも、この演奏の大いなる美点である。中でも「英雄の戦場」が白眉だ。(藤原 聡)高橋アキによるシューベルトシリーズの第4弾。現代音楽の名手である彼女が原点に帰るように演奏する、余分なものがすべてそぎ落とされたシューベルトは、純度の高い音で心に深くしみこむ。ソナタ第18番「幻想」は一切の角のないなめらかな起伏で奏でられ、ほのかな甘さとともにストレートに語りかけてくる。第9番では、静かに歌うピアノが、移り気に表情を変える作品の魅力を存分に描き出す。ゆるやかなテンポで奏でられることで、ベーゼンドルファーのクリアで温かい響きが織りなす綾を細部まで聴くことができる。2編の美しく穏やかなドラマが収められたアルバムだ。(高坂はる香)合唱指揮者・栗山文昭率いる3つの女声合唱団の演奏会記録。先年他界した三善晃と、幅広い世代の作曲家による2012〜13年に初演された新しい作品が並び、このジャンルの“現在”を切り取ったようで、多様な感興を与える。栗山や彼に続く人たちがエネルギッシュに委嘱を重ねて新しい合唱曲を定着させてきた成果を再確認。これを歌う彼女らの次の世代が活躍する頃には、女声合唱のレパートリーも様変わりしているのかもしれない。鶴見幸代の「ムル焼け」の、伝承歌謡のシンプルな旋律をベースに、抑えた感情の中で女性たちの生きる強さが立ちのぼってくるような風情が印象的だった。(宮本 明)美しいジャケット写真から3人の華々しい“競演”を予想したが、実際はその真逆のまさに“共演”で驚いた。松本と水野はこれが初共演だそうだが、お互いの音をよく聴き合って、アンアンブルを追求する。メンデルスゾーンの第1番は、4つの楽章の性格を明快に描き分けながら、端正に格調高くまとめ上げた。続くベートーヴェン「大公」では、この傑作に挑む気負いや固さが皆無なのがみごと。終始瑞々しい感興を湛えており、村松の巧みなピアノに伴われたアンサンブルの精度も申し分ない。彼女たちのライヴと次回作が一日も早く実現するよう祈りたい。(渡辺謙太郎)

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