eぶらあぼ 2014.11月号
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54週末の午後、俊才たちの辣腕に酔う文:柴田克彦新・クラシックへの扉 #43川瀬賢太郎(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団ザ・ライジング・スターズ スーパーコンチェルト3人の若手実力派の競演!文:高坂はる香11/2(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール問 藍インターナショナル03-6228-3732http://www.ai-international.co.jp 欧米で活躍中の“ライジング・スター”をソリストに迎え、3つの協奏曲の名作を一夜にして楽しむ、『スーパーコンチェルト』。毎年秋に行われるこの企画も、今回で3度目を迎えた。 シベリウスのヴァイオリン協奏曲を演奏するのは、過去に共演したヨーヨー・マや内田光子が絶賛しているという、ジョセフ・リン。ジュリアード音楽院プレカレッジの後ハーバード大学の神学部で学ぶという珍しい経歴を歩み、また現在ジュリアード弦楽四重奏団でベテラン名奏者にまじって第1ヴァイオリンを務める逸材だ。 そして2人のピアニストはともに、ドイツ人と日本人のハーフ。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏するのは、マリオ・へリング。ヴァイオリニストの両親を持ち、正統派ドイツ・ピア二ズムの流れを受け継ぐ注目株。スケール大きく、緻密に構築されたラフマニノフが期待できそうだ。 もう一人のモナ=飛鳥・オットは、13歳のオーケストラデビュー以来幾度も演奏しているという得意のレパートリー、グリーグのピアノ協奏曲で登場する。姉のアリス=紗良とともに人気上昇中のピアニスト。彼女ならではの、爽やかで溌剌とした音の美点が存分に発揮されるだろう。 共演は、Kバレエカンパニー公演の演奏でも評価が高いシアターオーケストラトーキョー。指揮はパリ・オペラ座副指揮者、将来を嘱望されるバスク地方生まれのイニャキ・エンシーナ・オヨン。生演奏を聴いておきたい実力派が顔を揃える、楽しみな演奏会だ。11/21(金)14:00、11/22(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス  03-5610-3815 http://www.njp.or.jp 今年30歳の指揮者と23歳の管楽器奏者…。11月の新日本フィル『新・クラシックの扉』の主役たちは、とびきり若い。指揮は活躍目覚ましい川瀬賢太郎。2006年東京国際音楽コンクール<指揮>で2位(1位なし)を受賞後、著名楽団に次々と客演し、現在は神奈川フィルの常任指揮者と名古屋フィルの指揮者を務める文句なしのホープだ。今回のメインは「展覧会の絵」。精緻な彫琢の中に生気を吹き込む辣腕の彼が、この名曲にいかなる輝きを与えるか? 新日本フィルの妙技ともども耳目を離せない。前半にロシア国民楽派リャードフのおとぎ話的交響詩を並べた選曲も光る。その繊細で機智に富んだ音画は、小粒ながらセンス抜群。「キキモラ」「魔法にかけられた湖」「バーバ・ヤガー」の代表作3曲をまとめて生で聴く機会など日本では稀だから、実に嬉しい。 ソリストはファゴットの小山莉絵。大注目株だ。ドイツ生まれで、著名ファゴット奏者・小山昭雄を父にもつ彼女は、驚くことに参加した24のコンクール全てで最高位を受賞している。なかでも2013年ミュンヘン国際音楽コンクールの最高位(2位)は、最上級の実力の証し(同率2位はベルリン・フィルの現役奏者)。すでに欧州の第一線で活動を続けているが、在京オーケストラとの共演は貴重であり、演目が超難曲であるジョリヴェの協奏曲なのも凄い。既にリリースしている同曲のCDでは、鮮やかなソロを聴かせている。破格の技巧はもとより、豊麗な音色と雄弁な表現力で一頭地を抜く彼女の協奏曲は必聴! 俊英たちが躍動するオーケストラ公演で、心弾む午後を過ごそう。小山莉絵 ©Dorothee Falke川瀬賢太郎 ©井村重人モナ=飛鳥・オット ©Marie Staggatマリオ・へリング ©Nikolaj Lundジョセフ・リン©Koichi Miura

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