eぶらあぼ 2014.11月号
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第3回ダンスのDNAは、決して奪われはしないのだ 突然だが、東京に国際ダンスフェスティバルがいくつあるかご存じだろうか。答えは一つ。アジアのコンテンポラリー・ダンスの先駆けであり、経済大国である日本の首都に、たったひとつしかないのだ。かつてそれは青山円形劇場とスパイラルホールが中心となって進めていた『ダンストリエンナーレトーキョー』だった。しかし2012年に厚生労働省が青山劇場・青山円形劇場を「老朽化」などの理由で2015年3月に閉鎖すると発表(築わずか30年なのだが)。とうぜん各方面から反対運動も起こったが、閉鎖への準備は粛々と進められている。それなら閉鎖される前にトリエンナーレの魂を継承する新しいダンスフェスティバルを立ち上げてやる! と、ほぼ同じスタッフで今年開催されたのが『Dance New Air ダンスの明日』である(略してDNA)。9月から10月にかけて24日間という、わが国最大規模のフェス。小野晋司プロデューサー兼プログラム・ディレクターを中心に世界各国とのコラボレート作品の公演、さらにシンポジウム、ワークショップ、ダンス映画、ブックフェアなど様々な角度からダンスを見つめるプログラムが組まれた。 掉尾を飾ったのはフランソワ・シェニョー&セシリア・ベンゴレア『ダンス・イン・クラブナイト』。ディスコの曲がガンガン流れる中でケバい化粧のお姉さん達がグルグル回転し続ける。しかしやがてセクシーな衣裳になるにつれ、お姉さん達の股間には「お兄さん」がいらっしゃることが明らかになってくるのである。トランス・ジェンダーにまつわる様々な思いが、アートに昇華した形で提示され、フェスの最後を大いに盛り上げた。こういう「単独公演では呼びづらいが、意義のある作品」を招聘し、ダンスの可能性を提示するのもフェスの仕事だ。人は、ときに立ち止まってあらためてダンスについて考え、楽しみ、交流する場が必要なのである。 じつはオレも実行委員なので、酒を飲みながら行うオレのダンス講座「酔話会」を2部構成4時間というかつてない規模でやったし、シンポジウムに出席、そして現在ルーマニアのアーティストと進めている交流プログラム「イースタン・コネクション」のショウイングでは、舞台上で朗読したりしゃべくったりと頑張ったのだった。 そんな感無量のDNA終了間際、さらに素敵な報せが舞い込んできた。2012年のトリエンナーレが世界的ピアニストの向井山朋子らと共同制作、2013年にオランダでも上演した『シロクロ』という作品が「最も国際舞台にふさわしい作品」に贈られる、権威あるオランダのディオラフテ賞を受賞したのだ。短い作品ばかり量産するコンペティションも若手にチャンスを与える意義はあるが、腰を据えて後世に残る作品を生み出すフェスティバルの重要性は、今後ますます増していくだろう。そしてDNAは2年後の開催を目指してすでにスタートを切っている。劇場が潰されても、ダンスを愛する気持ちは潰されやしないぜ!Prifileのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。乗越たかお288

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