eぶらあぼ 2014.10月号
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84ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団2つの“第1番”に興味津々文:山崎浩太郎マーク・パドモア(テノール)&ポール・ルイス(ピアノ) シューベルト 三大歌曲集全曲演奏会“対話”が織り成す深い世界文:宮本 明第853回 サントリー定期シリーズ 10/21(火)19:00 サントリーホール 第88回 東京オペラシティ定期シリーズ10/24(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp12/4(木)19:00 「美しき水車屋の娘」12/5(金)19:00 「冬の旅」12/7(日)15:00 「白鳥の歌」 他王子ホール問 王子ホールチケットセンター  03-3567-9990 http://www.ojihall.jp 近年は指揮者として世界的に活躍するミハイル・プレトニョフが東京フィルハーモニー交響楽団の定期に登場、韓国の若きピアニスト、チョ・ソンジンと共演する。 チョ・ソンジンの名が日本で知られたのは2009年、第7回浜松国際ピアノコンクールで最年少の15歳で優勝したときだった。ブレハッチ、ガヴリリュク、コブリンなど、歴代の最上位に俊才のならぶコンクールだけに、この1994年ソウル生まれの少年も、以後の活躍が大いに期待されることになった。その期待を裏切ることなく、2年後のチャイコフスキー国際コンクールでは17歳の若さで3位を獲得、いまはパリに留学して、名ピアニストのミシェル・ベロフのもとで研鑽を重ねている。 今回取りあげるのはショパンのピアノ協奏曲第1番。オーケストレーションの弱さを指摘されることが多いショパンのピアノ協奏曲だが、今回はプレト 2011年から昨年まで2年間かけて、シューベルトが晩年の6年間に作曲した全ピアノ作品を弾くツィクルスを、王子ホールを含む世界の複数の都市で並行して完遂したポール・ルイス。今度はテノールのマーク・パドモアとともにシューベルトの三大歌曲を連続演奏する。三大歌曲、特に「冬の旅」はバリトンのレパートリーというイメージが定着しているかもしれないが、もともとはテノールの音域の作品だ。パドモアは、低い調で歌うと暗くまろやかな響きになりがちで作品本来の音色の透明さが失われると語っている。 バロック・オペラやバッハの福音史家でも活躍するパドモアがシューベルトを歌い始めたのは40歳を過ぎてからだが、すでに優れたシューベルティアンとして世界の注目を集める存在。この二人がハルモニア・ムンディに録音した三大歌曲は高い評価を得ており、特に「冬の旅」は2010年の英グラモフォン誌の「ヴォーカル・ソロ・アワード」をニョフが手を加えたバージョンを演奏するという。自身も名ピアニストであるプレトニョフが、若い才能をどのように引き立てるか、そしてどんなアレンジを聴かせてくれるのか、興味津々である。 そして後半はスクリャービンの交響曲第1番。スクリャービンの交響曲といえば第4番「法悦の詩」や第5番「プロメ受賞している現代の名盤だ。 旋律とテキストが拮抗する、あるいは言葉のほうに重心が置かれるシューベルトの歌曲。歌詞のないピアノもまた、“語る”ことが求められている。音楽と言葉の、二人の英国人演奏者とシューベルトの、そしてもちろん歌手とピアニストの、緻密に行き交うそれぞれの“対話”に慎重に耳を傾けたい。なテウス」などはときどき演奏会でも取りあげられるけれど、第1番はとても珍しい。最後の第6楽章には小山由美(メゾソプラノ)、福井敬(テノール)と新国立劇場合唱団が加わり、スクリャービン自作の“芸術讃歌”を高らかに歌う。実演でその響きに接する機会の少ない作品だけに、聴きのがせないコンサートだ。おツィクルス最終日の「白鳥の歌」の前には、〈遥かなる恋人に寄す〉などベートーヴェンの歌曲数曲が歌われる。チョ・ソンジン Photo:Ramistudio.comミハイル・プレトニョフ左:マーク・パドモア 右:ポール・ルイス ©Marco Borggreve courtesy of harmonia mundi usa

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