eぶらあぼ 2014.10月号
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70みろくのみりょくシリーズ オペラ宅配便シリーズⅩⅢ メノッティ:《泥棒とオールドミス》9/28(日)16:00 ヨコスカ・ベイサイド・ポケット問 横須賀芸術劇場046-823-9999 http://www.yokosuka-arts.or.jp取材・文:岸 純信(オペラ研究家)“あの”オペラがパワーアップして帰ってくる!Interview彌勒忠史(企画・演出) カウンターテナー界の第一人者であり、演出家や著述家としても引っ張りだこの彌勒忠史。この秋には開館20周年になる横須賀芸術劇場のキーマンとして、2011年に大好評を得たオペラ《泥棒とオールドミス》の再演など一連の企画を手掛けるという。 「千葉大学で歌舞伎の歴史を研究し、そこでオペラの面白さに目覚めまして、東京芸術大学に入って声楽を学びました。子供の頃から好奇心が人一倍強く、いろんなことをやってみたいタイプですが、どれも自分の中から自然に湧き出る思いなんです。例えば演出家の職って、いわば近代の『発明品』ですね。歌舞伎の古典作でも当時は演出家などいなくて、座長の俳優が舞台でいろいろ指示していたはずです。だから、逆に考えたなら、歌い手の自分が演出に携わってもそんなに不思議ではないでしょう。現代ではいろんな仕事が細分化し過ぎで、その中で駒になっているだけで良いのかなと疑問にも思います。そこで、何かを表現したいなら、その時に一番上手く出来る手段を通じて自分の感覚を打ち出そうと考えるようになりました。つまりは、僕という素材を使っていろんなパフォーミングアーツをやってゆくだけ。文章を書くのもオペラを演出するのもその一環です!」 彌勒のこの独創性をいち早く見抜いたのが、数々の名物企画を誇る横須賀芸術劇場。20年前の開場時には、まだ学生ながら歌手としてコンサートに参加していたので、この劇場と共に歩んだという思いは強い、という。 「今回は『みろくのみりょくシリーズ』と銘打ち、ジャズと初期バロックの融合コンサートや、子供たちと『劇場で遊ぶ一日』も開催しますが、第1弾はやはりオペラでと思い、2011年に好評を博したメノッティの《泥棒とオールドミス》を再演します。闖入者の青年ボブを巡ってオールドミスの二人や若いお手伝いが繰り広げる騒動を描くオペラですが、今回も、主演の金子美香さんの『歌うコメディエンヌ』ぶりが、黒幕として動くクールな小川里美さんとの対照の妙で凸凹コンビの面白さを大いに発揮してくれるでしょう。また、初参加の吉原圭子さんにはハンサムな男にひたすら憧れる娘心を追求してもらいたいですね」 登場人物としては唯一の男性である与那城敬については。 「与那城君には『生真面目な取り組みが余計に可笑しさを誘う』彼の真骨頂をあらためて発揮して欲しいです! 前回、彼の“熱演ぶり”がそれこそ毎回爆笑を招くので、リハーサルがなかなか進まなかったんです(笑)。今回も、皆さまに思い切り笑って頂けるよう、さらに工夫を凝らします!」第91回 定期演奏会10/4(土)18:30、10/5(日)14:00 水戸芸術館コンサートホールATM問 水戸芸術館チケット予約センター  029-231-8000 http://arttowermito.or.jpハインツ・ホリガー(指揮) 水戸室内管弦楽団指揮と独奏で堪能するホリガーの世界文:江藤光紀 名オーボエ奏者としてだけでなく、今や指揮者、作曲家としての顔もすっかり定着したハインツ・ホリガー。水戸室内管との初共演から2年、10月の同団定期演奏会に再び登場する。聴きものはホリガー自身の独奏によるルトスワフスキ「オーボエ、ハープと室内管弦楽のための二重協奏曲」だ。ホリガー夫妻(妻ウルズラはハープ奏者)のために書かれたこの曲は前回の来日時に演奏されるはずだったが、ウルズラの病気のために変更となり、その後彼女は帰らぬ人となってしまった。今回はホリガーの信任も厚いシャンタル・マテューが参加する。またドビュッシー最晩年のバレエ音楽「おもちゃ箱」にも注目だ。ここでは原作に添えられたト書きを語ることで、音楽の流れにあわせてストーリーも楽しめるという趣向だ。語りには落語界の鬼才・柳家花緑が登場。魅惑の話術も堪能したい。冒頭には古典派・ハイドンの交響曲第103番「太鼓連打」を、水戸室内管の名手たちが爽やかに聴かせてくれるはずだ。芸術の秋の幕開けを三曲三様の名人芸が飾ることだろう。左から:ハインツ・ホリガー/シャンタル・マテュー/柳家花緑

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