eぶらあぼ 2014.10月号
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62ザ・アート・オブ・ワディム・レーピン巨匠への道を進む新しい出発点文:オヤマダアツシ朴パク葵キュヒ姫(ギター) 南米独特の情熱や郷愁を描く文:渡辺謙太郎レーピン with クニャーゼフ&コロベイニコフ 11/27(木)19:00レーピン&新日本フィル 11/28(金)19:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com 1980年代中盤、キーシンと共にロシアの新世代を代表する演奏家として来日し、絶大な人気を誇ったワディム・レーピン。その後も世界各地でのコンサートやCD録音、レパートリーの拡大などを積み重ね、40代となった今では風格と深い音楽性を携えたアーティストになった。まさに“レーピンNOW!”と言える秋の来日公演だが、すみだトリフォニーホールにおける2デイズは、その真価をがっちりと受け止めるプログラムだと言えるだろう。 1日目はチャイコフスキーの大作三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」を軸に、ラフマニノフのピアノ三重奏曲第1番、ラヴェルの「ツィガーヌ」などが演奏される。共演は濃厚な音楽を奏でるアレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ)と、雄大な演奏に定評があるアンドレイ・コロベイニコフ(ピアノ)の2人。ロシア音楽の深みとフランス音楽の粋が交錯し、室内楽奏者レーピンの真価 ギター界で躍進を続ける若手・朴葵姫。多くの主要国際ギターコンクールでの優勝・入賞歴を誇り、2012年にはカーネギーホールで公演を行うなど、その活躍には多くの注目が集まっている。録音にも積極的な彼女の最新作が今月リリースされた『Saudade-ブラジルギター作品集-』だ。これまでの録音では、精確なフレージングとしなやかなトレモロを駆使して、ロマンティックな作品を滑らかに歌うイメージが強かった朴。だが、本作ではそうした持ち味に加え、ヴィラ=ロボス、ジスモンチ、ジョビンなどブラジル人作曲家の作品の数々に込められた南米独特の情熱や郷愁を巧みに描き出している。 こうした彼女の新境地をぜひとも生で聴きたいという方々には、浜離宮朝日ホールで当盤の発売記念リサイタルをおすすめしたい。プログラムは、ジスモンチ「水とワイン」や、ヴィラ=ロボスの前奏曲や練習曲といった、アルバム収録曲が多数。そしてもう1曲、ぜひ注目して欲しいのがアルゼンチンのを目の当たりにするはずだ。 2日目は協奏曲プログラム。レーピンの核心へと切り込むショスタコーヴィチの協奏曲第1番、そしてクニャーゼフとの共演で壮絶かつ深遠な演奏が期待できるブラームスの二重協奏曲だ。2曲で演奏時間は70分ほどだが、凝縮された音楽に圧倒されてしまう巨匠ヒナステラのソナタだ。今回ブラジル音楽に挑戦するに際し、先行して演奏会で取り上げたことで、南米音楽ならではの激しい曲想や変拍子を学ぶだろう。オペラを中心にキャリアを築いてきたロベルト・トレヴィーノ指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団が、レーピンの芸術をサポートする。 もう神童伝説に追われる時期は去った。この2日間が、巨匠への道を進む新しい出発点なのだ。心してその音楽を受け止めたい。のに大いに役立ったという。繰り返し弾き込むことで、今や彼女の十八番のひとつとなったであろうこの傑作の最新像をぜひ確かめてみたい。10/1(水)19:00 浜離宮朝日ホール問 コンサートイマジン03-3235-3777http://www.concert.co.jpCD『Saudade-ブラジルギター作品集-』日本コロムビアCOCQ-85094 ¥2800+税アンドレイ・コロベイニコフ©Irene Zandelアレクサンドル・クニャーゼフ ©James McMillanワディム・レーピン ©Gela Megrelidze

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