eぶらあぼ 2014.10月号
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60国際的名手が織り成す音色美文:寺西 肇ジョン・エルウィス(テノール) & 渡邊順生(フォルテピアノ)シューベルト 「白鳥の歌」長野に響く“久石サウンド”文:飯尾洋一長野市芸術館 開館記念プレイベント久石譲 × 新日本フィルハーモニー交響楽団10/12(日)16:00 ホクト文化ホール(長野県県民文化会館)問 長野市文化芸術振興財団026-219-3100*都合により「弦楽オーケストラのための《螺旋》」に変更される場合もあり 2016年春にオープン予定の長野市芸術館。その開館プレイベントとして、同館芸術監督の久石譲がホクト文化ホールで新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮する。作曲家として活躍する一方、近年はクラシック音楽の指揮者として舞台に立つ機会も多い久石が、自作とベートーヴェンの「英雄」を披露するとあって、大いに注目を浴びそうだ。 久石の自作は2曲が演奏される。1曲はピアノと弦楽オーケストラのための新作*。いまだだれも耳にしていない作品を最初に聴けるのだから、ファンにとってはこれほどワクワクできる体験もない。 もう1曲は、バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲。映画「風立ちぬ」は言わずと知れた2013年公開の宮崎駿監督作品だが、そのサウンドトラックを演奏会用に再構築したのがこの組曲である。バヤンとはロシアのアコーディオン型の民族楽器のこと。生のオーケストラとコンサートホールが生み出す自然な響きは、映画館で聴くサウンドとはひとあじ違った味わいをもたらしてくれることだろう。 ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」では、久石と新日本フィルとのあうんの呼吸が、この記念碑的名作の魅力を存分に伝えてくれることを期待したい。久石の多才が長野の音楽界に新時代の到来を告げる。久石 譲10/18(土)15:00 横浜みなとみらいホール(小)問 横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000 http://www.yaf.or.jp/mmh 伝統あるイギリス声楽界のみならず、全ヨーロッパを代表する名テノールとして君臨し続けているジョン・エルウィス。そして、わが国が生んだ歴史的鍵盤楽器の達人の1人であり、国際的な演奏活動を展開する渡邊順生。これまでにもシューマンのリートなどで秀演を重ねて来た名コンビが、今度はシューベルトの佳品「白鳥の歌」とベートーヴェンの歌曲集「遥かなる恋人に寄す」に対峙する。 「白鳥の歌」は、シューベルトの死後に出版された遺作の歌曲集。今回は歌曲集の核を成している、ハインリヒ・ハイネの詩集「歌の本」中の「帰郷」に基づく6つの作品全てを含む全曲を披露する。歌詞への音楽のマッチングや作曲技法の面からも、夭折の作曲家が晩年に成し遂げた円熟の境地。一方の「遥かなる恋人に寄す」は、シューベルトも愛したという、ベートーヴェンのロマンティシズム溢れる佳品だ。 シギスヴァルト・クイケンら古楽界の先駆者らと共演しての名演が特に目立つエルウィスだが、本人は「古楽もまた、イギリスの音楽文化の一部」と発言し、モダン楽器との共演にも積極的だ。そういった意味では、もはや楽壇全体をリードする存在。フォルテピアノを弾く渡邊も、自らアンサンブルを指揮して宗教声楽作品やオペラを上演、楽器学など学術分野でも業績を上げるなど、今や古楽界全体の牽引役に。そんな2人の名手によって、2人の大作曲家による歌曲から、まったく新たな魅力が紡ぎ出されるに違いない。渡邊順生ジョン・エルウィス

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