eぶらあぼ 2014.10月号
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 県民ホールのマーラー交響曲第8番(現田茂夫指揮・神奈川フィル)で幕を開けるフェスティバル期間中、6作品20公演が繰り広げられるのが2011年オープンのKAATだ。12月の「スペイン国立ダンスカンパニー」は、クラシックからコンテンポラリーまでを自由に横断する、世界屈指のバレエ団。今回は、芸術監督である元パリ・オペラ座エト この10~12月に13企画27公演を上演して開催される「第21回神奈川国際芸術フェスティバル(芸術総監督:一柳慧)」は、神奈川芸術文化財団傘下の3つの施設、「神奈川県民ホール」「KAAT神奈川芸術劇場」「神奈川県立音楽堂」がひとつになって発信するアート・イベントだ。今回のテーマは「祝祭 円熟の未来へ」。県民ホールが開館40周年(2015年1月)、県立音楽堂が開館60周年(2014年11月)、さらにKAATは今年4月に俳優・演出家の白井晃がアーティスティック・スーパーバイザーに就任して新体制がスタートと、3つの施設それぞれの新たな未来への一歩が重なって、お祝い気分満載の賑やかなフェスティバルとなる。そのなかでもとくに注目の公演にスポットをあててみたい。神奈川国際芸術フェスティバル祝祭 円熟の未来へ─ 一方、開館記念日の11月4日の前後1週間を「還暦!記念週間」と銘打ったのが県立音楽堂。11月9日のオーケストラ・コンサート(篠﨑靖男指揮・神奈川フィル)は、その掉尾を飾るメイン・イベントだ。60年前、建築家・前川國男が手がけたぬくもりある美しい「木のホール」に、最初に響いたのもオーケストラのコンサートだった。暦がひと巡りしたいま、新たな歴史を刻む記念公演は、20~21世紀の作品ばかりを集めたイケてるプログラム。笙と管弦楽による武満徹「セレモニアル」(1992)は、第1回サイトウ・キネン・フェスティバル松本の開幕第1曲を飾るために書かれた、こうした「節目」に演奏されるのにふさわしい作品だ。宮田まゆみの笙が、空間をおごそかに清める(ちなみに、中学生の時に横浜に転居したという宮田は、毎年の校内合唱祭の会場が県立音楽堂だったり、さらには音大ピアノ科時代に、ここでソリストとしてリストのピアノ協奏曲を弾いた経験もあるという!)。一柳慧の「マリンバ協奏曲」(2012)は、ジャズ・ピアニスト山下洋輔に書いたピアノ協奏曲第4番と対を成す作品で、ジャズ・フレーバーも取り込マーラー「千人の交響曲」から、「聲明」「バレエ」まで~アニバーサリーにふさわしい公演がずらり!五感を刺激する2ヵ月間。今年の神奈川も熱く大きく盛り上がる!文:宮本明芸術監督マルティネズ自ら登場!「スペイン国立ダンスカンパニー」の魅力新たな一歩を象徴する「60周年記念オーケストラ・コンサート」ワールのジョゼ・カルロス・マルティネズがこの公演のために作った特別プログラムが用意されている。現代の名作5作を並べる興味深いプログラムで、なかでも注目が「天井桟敷の人々」特別改訂版。フランス映画史上に輝く傑作をベースにマルティネズが振り付けたこのバレエは、昨年のパリ・オペラ座バレエ来日公演でも上演され、観客総立ちの大反響によりもはや伝説となった見逃せない演目。他の4本も、イリ・キリアン振付の「堕ちた天使」、ウィリアム・フォーサイス振付の「ヘルマン・シュメルマン」、オハッド・ナハリン振付の「マイナス16」といった現代を代表する巨匠たちの作品に、日本初紹介となるイジック・ガリーリ振付の「Sub」と、コンテンポラリー・バレエの最前線を数時間のうちに一気に堪能できてしまう稀有な機会。さらにマルティネズ自身もダンサーとして踊る予定なので、バレエ・ファンならずとも必見だ。ジョゼ・マルティネズImagen: Diego Hurtado de Mendoza / Fernando Marcos© EmilioTenorio第21回

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