eぶらあぼ 2014.10月号
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34 アントニオ・パッパーノが2005年に音楽監督に就任して以来、世界的に注目度を高めているローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団。この秋の来日公演では、R.シュトラウスの《アルプス交響曲》とブラームスの交響曲第2番というドイツ音楽をメインに据える。「今年はR.シュトラウスの生誕150年に当たります。マーラーやプロコフィエフといった大作曲家たちと同様、かつてR.シュトラウスは、サンタ・チェチーリア管を何度も指揮しました。すでに私たちは、『英雄の生涯』、『ツァラトゥストラはかく語りき』、『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』をはじめ、彼の交響詩を積極的に取り上げています。2014/15シーズンの開幕公演では、『アルプス交響曲』を演奏します。これを日本の皆様にお届けするというわけです」 パッパーノにとってR.シュトラウスとは?「私にとって、若い頃にコレペティトゥールを務めていた時からシュトラウスのオペラは近しい存在であり続けていますし、モネ劇場や現在音楽監督を務めている英国ロイヤル・オペラ・ハウスでも積極的に取り上げてきました」 『アルプス交響曲』に魅力を感じているという。「『アルプス交響曲』は、交響曲と命名されていますが、彼の“最後の交響詩”と位置づけることができるでしょう。題材は『自然』です。彼はもともと自然を愛し、とりわけ山に愛着がありましたが、この作品では、自然を単に表層的に描写することに満足せず、自然崇拝の念にニーチェから影響を受けた哲学的な思想を――『ツァラトゥストラ~』とは異なる形で――結びつけています。サンタ・チェチーリア管の管楽器はこの上なく優秀ですから、『アルプス交響曲』に潜むあらゆる表現の可能性を音にすることができるはずです」 一方、ブラームスについてはどうだろうか。「近年、私たちは集中してブラームスに取り組んでいます。2013/14シーズンにはヴァイオリン協奏曲(独奏:カヴァコス)、ピアノ協奏曲第2番(独奏:ブッフビンダー)、そして交響曲第1・2・4番を演奏しました。日本の聴衆の皆様にその成果をご披露したいと思います。ブラームスはサンタ・チェチーリア管のレパートリーの大きな柱のひとつなのです。多くの北ヨーロッパ出身の作曲家たちと同様に、ブラームスは南ヨーロッパの陽光やメロディ・ラインに憧れを抱いていました。特に交響曲第2番にはそうした雰囲気があり、私たちが演奏するのに最適だと思います」 ブラームスの交響曲第2番の前には、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を取り上げる。「この2曲は“カンタービレ”を追求するという点で共通しています。ところで、サンタ・チェチーリア管には、他の楽団には模倣することのできない、極上のカンタービレのセンスが本能的に備わっています」 マリオ・ブルネロとのドヴォルザークのチェロ協奏曲はCDとしてもリリースされている。「私たちは2012年の公演(録音)の折に初めて共演しました。同じくイタリアを故郷とするソリストと、日本でもコラボレーションを披露できることは喜びです。彼の演奏は非常に表情豊かでありながら、決して表面的な表現にとどまりません」 最後にマエストロにサンタ・チェチーリア管の魅力について語ってもらった。「私はロンドンで生まれアメリカで主な教育を受けましたが、それでも南イタリア出身の両親の元に生まれましたので、私とオーケストラは“芸術的なDNA”で結ばれています。人間的にも、また色彩に対する趣味や反応の仕方においても、私たちの相性は抜群です。『音楽をどのように語るか』という演劇的な感覚も見事に一致します。そして世界トップクラスの名手たちが揃っています。クラリネットのカルボナーレ、ホルンのアレグリーニ、チェロのピオヴァーノ、ティンパニのカリーニ…。まさに夢の共演です!」アントニオ・パッパーノAntonio Pappano/指揮私とオーケストラは“芸術的なDNA”で結ばれています取材・文:山田治生

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