eぶらあぼ 2014.10月号
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214CDCDCDCD山内雅弘:オーケストラ作品集ライヴ・イン・東京 2013/妻屋秀和ラ・ルーチェ/土田聡子シェエラザード&春の祭典/マルケヴィッチ&日本フィル山内雅弘:風の糸、宙の形象、管弦楽のための協奏曲、宙の記憶十束尚宏(指揮) 大井剛史(指揮)東京交響楽団新日本フィルハーモニー交響楽団松原勝也(ヴァイオリン)石橋史生(ピアノ) 他ベートーヴェン:この暗い墓の中で/リスト:ペトラルカの3つのソネット(第2版)/モーツァルト:アリア〈この美しい手と麗しい瞳に〉/ラフマニノフ:アレコのカヴァティーナ/R.シュトラウス:《無口な女》より〈音楽とはなんと美しいものだろう〉 他妻屋秀和(バス) 園田隆一郎(ピアノ) 他サン=サーンス:夜鳴きうぐいすとバラ/プッチーニ:《つばめ》より〈ドレッタの夢〉/ドリーブ:カディスの娘たち、《ラクメ》より〈鐘の歌〉/ベッリーニ:喜ばせてあげて、《清教徒》より〈あなたの優しい声が〉 他土田聡子(ソプラノ)田中梢(ピアノ)リムスキー=コルサコフ:シェエラザードベートーヴェン:交響曲第6番「田園」ストラヴィンスキー:春の祭典イゴール・マルケヴィッチ(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団コジマ録音 ALCD-99 ¥2500+税収録:2013年12月、Hakuju Hall (ライヴ)ナミ・レコード WWCC-7761 ¥2500+税DISC CLASSICADCJA-21025 ¥2500+税TOWER RECORDSTWCO-1016/7(2枚組) ¥2700+税2011年の芥川作曲賞受賞で一躍注目されるようになった山内雅弘。本盤収録の4曲は、地道な創作が迎えた実りの時を伝えている。山内の作風はコンセプトや主義主張を押し出すタイプではないが、自由で多彩な語り口が魅力だ。どの瞬間にもアイディアがあって緻密に作りこまれている。受賞作「宙の形象」は2台のピアノがヘテロフォニックな効果を生む力作。「管弦楽のための協奏曲」ではユーモラスな身振りをみせる一方、「宙の記憶」では末尾に意外なカタルシスが訪れる。90年代の「風の糸」では独奏ヴァイオリンがロマンティックで粘着力のある歌を聴かせている。(江藤光紀)1993年にウィーンで開かれた国際ベルヴェデーレ声楽コンクールで注目を集め、ライプツィヒ歌劇場やワイマールのドイツ国民劇場で専属歌手を務める一方、ベルリン・ドイツ・オペラなどへも客演を重ねている妻屋。昨年末に東京で開いた自身初となるリサイタルでは、ドイツ系はもちろん、イタリアやロシアのオペラからの名アリアに、ベートーヴェンやリストのリートを交えたユニークな、しかし自らのステージ人生を俯瞰するような選曲で臨んだ。そのライヴ盤からは、抜群の安定感を誇る美声と高い表現力、深い精神性がダイレクトに伝わって来るだけでなく、妻屋の歌への熱い愛情が迸り出る。(笹田和人)土田は東京芸大で学んだのち、7年間ミラノに留学し、コンクールや各地の劇場で経験を積んだ。解説で本人が、恩師から「心地よい響き」が大事だと教えられたと書いているように、コロラトゥーラの華やかな技巧だけをひけらかすよりも、声の美しい響きを保つことを重視したアルバムであることを、選曲や、なによりその歌唱から察することができる。レッジェーロの高域もさることながら、中域のリリコの声域でも響きの密度が濃いので、歌の形が空疎になることがない。なかでは《清教徒》のアリアに、彼女の美質が最も表れているように聴いた。(宮本 明)ショルティ、ヴァント、チェリビダッケなどと同じ「1912年組」のなかで、誰よりも早く頭角を現した鬼才マルケヴィッチは、1960年から5回にわたり日本フィルに客演、鮮烈な印象を与えた。これはその最後の機会となった80年のライヴ。十八番の「春の祭典」と「シェエラザード」、自ら実践的で優れた校訂譜を残したベートーヴェンの交響曲から「田園」、いずれもじっくりと、克明に細部を浮かびあがらせて、手に汗握るような緊張感に満ちた鋭利な音楽を聴かせる。「シェエラザード」の独奏ヴァイオリンは無記名だが、コンサートマスターの大川内弘だろうか。(山崎浩太郎)

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