eぶらあぼ 2014.9月号
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51©西野正将神奈川県民ホールリニューアル&開館40周年記念マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」10/5(日)15:00 神奈川県民ホール問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-kenminhall.com現田茂夫(指揮)“宇宙の響き”でホールの新たな一歩を祝う取材・文:宮本 明Interview 来年1月に開館40周年を迎える神奈川県民ホールは現在休館中だが、いよいよ今年の10月5日、『第21回神奈川国際芸術フェスティバル』のラインナップの一つでもある、現田茂夫と神奈川フィルによるマーラーの交響曲第8番で開館する。 「マーラー自身が『宇宙が鳴り響く』と言っているように、まさに宇宙のような曲です。万華鏡をそっとゆするだけでも模様がぱっと変わるように、和音が瞬時に移り変わっていく。スコアで音を想像するだけで涙が出そうになります」 ホールの新たな一歩をなるべく大勢で祝おうと、1975年の開館以来最大という、500人規模の合唱団を含む総勢600人超の演奏者が舞台に立つ。 「合唱含め、声楽の占める比重が大きい曲なので、まずはそこをちゃんと作らない限りは形になりません。今回、歌詞の言語指導を三ヶ尻正さんにお願いして、第1部のラテン語の讃歌も第2部のドイツ語の『ファウスト』も、初演された20世紀初頭のドイツでどう発音されていたのか? という視点から、実に丁寧に教えていただきました。マーラーも言葉の響きのイメージで音を作ったわけですから、とても重要なことです。ずっと気になっていた疑問が解けて、僕もとても勉強になりました」 現田にとって神奈川フィルは、1996年から13年間指揮者・常任指揮者を務めた関わりの深い楽団だ。 「僕のいた頃より格段にレベルが上がっています。今は名誉指揮者として年に数回の付き合いですが、普段離れているぶん、その成長が余計にはっきりとわかります。しかも、数年前に金聖響さんとマーラー・ツィクルスを行っているおかげで、プレイヤーの一人ひとりがマーラーの弾き方を理解しているのが心強いですね」 その神奈川フィルにとって『千人』は初めて。現田自身もこれが2度目の演奏機会だそう。 「バブル景気の頃は頻繁に上演された印象もありますが、僕の世代の指揮者にはなかなか順番が回ってこない作品なので楽しみですし、40周年で新しくなった県民ホールに神奈川の皆さんの力を結集して、次の未来に向けてもう一度新たに発信するためにも、これしかないぐらいにふさわしい選曲だと思っています。あとは本番を成功させるだけ。良い演奏になるはずです」 500人の大合唱が一斉に「来たれ!」と歌い始めるトリハダものの瞬間を味わえる機会は貴重だ。マーラーが「宇宙」を封じ込めたこの作品を体感するのに、空と地上が交わる「海」に臨むホールは、なんと似つかわしいではないか!10/8(水)18:30 日経ホール問 日経ミューズサロン事務局03-3943-7066 http://www.nikkei-hall.com第429回 日経ミューズサロン セルゲイ・マーロフ(ヴァイオリン)&セルゲイ・アントノフ(チェロ)デュオ若き名手たちの魅惑の競演文:笹田和人左:セルゲイ・マーロフ 右:セルゲイ・アントノフ かたや、ハイフェッツ国際ヴァイオリン・コンクールと東京国際ヴィオラ・コンクールを制し、ふたつの楽器を持ち替える異色のソリストとして活躍するセルゲイ・マーロフ。かたや、チャイコフスキー国際コンクールのチェロ部門を制し、スマートかつ洗練されたプレイぶりで人気を博すセルゲイ・アントノフ。同じロシア出身で同世代でもあり、共に楽壇に旋風を巻き起こす“2人のセルゲイ”が、揃って日経ミューズサロンに登場する。ステージではまず、オネゲルの「ヴァイオリンとチェロのためのソナチネ」をデュオで披露。続いて、マーロフがヴァイオリンで、バッハの「パルティータ第2番」、アントノフが同じく「チェロ組曲第3番」を、それぞれ無伴奏で弾き、最後はラヴェルの難曲「ヴァイオリンとチェロのためソナタ」で締め括る。マーロフはバロックを得意としている一方、アントノフは無伴奏作品は日本での初披露とあって、特にバッハは要注目。2人の俊英の、熱き想いがほとばしるステージとなろう。

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