eぶらあぼ 2014.9月号
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 東京バレエ団のプリンシパルとして輝かしい活躍を続ける上野水香。今年11月には、はじめてのプロデュース公演『Jewels from MIZUKA』が神奈川県民ホールで開催される。神奈川県出身の上野は、県民ホールとの縁も深く、2008年からは『ファンタスティック・ガラコンサート』にも出演している。「県民ホールは、子供のころバレエ公演を観に行く劇場でしたし、コール・ド・バレエだったころから数え切れないほどその舞台にも立ってきました。港が近い独特のロケーションで、楽屋にいると船の汽笛が聞こえてくるんです。あの音を聞くと、県民ホールにいると実感します」 ウラジーミル・マラーホフ、マニュエル・ルグリをはじめとする世界的スターのプロデュース公演に参加してきた。その経験から、いつか自分のプロデュース公演ができたら、と想いが膨らんでいったという。「夢が叶いとても幸せです。プロデュース公演は、座長のエッセンスが舞台に表れるもの、お客様がお帰りになるときには、来たときよりも足どりが軽くなっている、そんな私らしい明るい舞台を創りたいです。タイトルにはキラキラしたイメージが欲しくて、私の好きな言葉でもある “Jewels”を入れています。 オープニング作品は高岸直樹さんにお願いしました。おしゃれな雰囲気で、ピアノ曲を使う作品になる予定です。元・東京バレエ団の高橋竜太さん振付のコンテンポラリーは、新しい風を吹かせてくれるでしょう。『ドン・キホーテ』は、私なりのアイディアも入れてアレンジした作品になります」 秋から東京バレエ団のアーティスティック・アドバイザーに就任するマラーホフをはじめ、ルイジ・ボニーノ、東京バレエ団のベテランから若手まで、多彩な魅力を持ったダンサーが集まった。「1月と3月にベルリンでマラーホフさんのガラ公演に参加したときに、出演を快諾していただきました。マラーホフさんは偉大なアーティスト、たくさんの引き出しがある方です。そして周りにいる人の気持ちをあたたかくしてくださいます。同じ舞台に出ることで吸収できることがたくさんあると思います。シェルカウイさん振付の『イカロス』をベルリンで拝見し、マラーホフさんの今までとは違う“味”を感じたので、このガラでぜひ踊って欲しいとお願いしました。日本初演になります」 誰が何を踊るべきか、各自の魅力が生き、かつプログラム全体として観客が楽しめるもの。プログラム構成を見ると、様々なことを考慮し練り上げたことがわかる。 彼女自身はプティ作品を3つ、そして『ドン・キホーテ』を踊る。「若いころプティさんの作品を踊ったことで、新しい自分の可能性をみつけることができました。12年の世界バレエフェスティバルで久しぶりに踊り、彼の作品は私にとって原点であることを再確認しましたし、今の私が踊ることでアーティストとして大人になったところを出せると思いました。今回は『チーク・トゥ・チーク』をボニーノさんと、『ジムノペディ』、『シャブリエ・ダンス』を柄本弾さんと踊ります。様々な経験を積んだことで、私のダンスがどう変わるのか自分でも楽しみです。柄本さんがプティ作品を踊るのははじめてですが、いい感性を持った方なので、エスプリやエレガンスを表現してくれると思います」 取材中、上野は何度も、“若いダンサー”という言葉を口にした。「私はずっと上の世代から学ぶばかりでしたが、いつのまにか状況が変わり、バレエ団の中でも上の世代になってきました。若い世代のダンサーと一緒に踊るとフレッシュな気持ちになれます。触発されることもたくさんあります。それを舞台にも生かしたいですね」 ダンサーとして成熟期を迎えた上野水香。今彼女の目指すものとは?「私も年齢を重ね、自分なりの芸術の個性、味わいをさらに深めていく時期にきています。目が離せないダンサー、芸の深さでお客様を惹きつけられるダンサーでありたいです」プロデュースは夢でした上野水香プロデュース・バレエJewels from MIZUKA11/29(土)15:00 神奈川県民ホール出/上野水香 ウラジーミル・マラーホフ ルイジ・ボニーノ   東京バレエ団 他問 チケットかながわ0570-015-415http://www.kanagawa-kenminhall.com ※その他、上野水香出演公演東京バレエ団『ドン・キホーテ』9/20(土)14:00 ゆうぽうとホール出/上野水香 柄本弾 他問 NBSチケットセンター03-3791-8888http://www.nbs.or.jp取材・文:守山実花 写真:藤本史昭245

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