eぶらあぼ 2014.8月号
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46チョン・ミョンフン(指揮) アジア・フィルハーモニー管弦楽団国境を越えて感動を届けるドリーム・オーケストラ文:柴田克彦9/4(木)19:00 サントリーホール問 キョードー東京0570-550-799他公演 9/3(水) 福岡シンフォニーホール(092-725-9112)、9/8(月)オーバード・ホール(富山市民文化事業団076-445-5610)東京フィルハーモニー交響楽団 ハートフル コンサート2014平和への祈りを音楽に託して文:江藤光紀8/15(金)18:30 東京芸術劇場コンサートホール問 東京フィルチケットサービス03-5353-9522 http://www.tpo.or.jp 今こそこのオーケストラが必要だろう。世界的指揮者チョン・ミョンフンが主宰するアジア・フィルハーモニー管弦楽団だ。「アジアの演奏家たちが、ひとつのオーケストラの中で調和を図ることで、世界に向けて友好と平和を発信する」との主旨で1997年に創立された同楽団は、2000年代初頭の中断後、06年韓国・仁川(インチョン)市の支援で復活し、シカゴ響、ニューヨーク・フィル等を含む35の楽団から音楽家が集結。以後日本でも公演を行い、中国公演では「韓、中、日が音楽を通じて友達になった。魔術のようだ」と賞賛されている。さらにアジア勢の優秀さは欧米楽団の構成を見ても明らか。それゆえ実力も世界レベルと評され、実際公演を聴いても音楽的水準と完成度の高さに驚嘆させられる。 今年は9月に、ベートーヴェン「三重協奏曲」とドヴォルザーク「交響曲第7番」のプログラムで日本公演を行う。 8月15日は終戦記念日だが、東京フィルは今年もこの日に平和を願い、楽団副理事長の黒柳徹子と『ハートフル コンサート』と題したトーク&コンサートを開く。すでにご存じの方も多いと思うが、黒柳の父は元N響のコンマスまで務めた人物で、彼女自身も音楽一家に育ち声楽を学んだ。軽快で滑らかなトークは80歳を超えた今も健在だが、あのリズミカルな語り口にはどこか音楽的な心地よさがあるようにも思う。 黒柳はまた長年ユニセフの親善大使として、恵まれない子供たちが暮らす場所に毎年のように出かけ、現地の状況を世界に知らせる活動を続けている。昨年は長い内戦に苦しむ南スーダンに出かけたという。かつては日本でも戦争によって多くの尊い命が失われたが、まだ世界には混迷に包まれた地域がたくさんあるのだ。 そうしたことを頭のどこかに置きつつ、平和に感謝しながらクラシック音楽前者では、チョン自らピアノを弾き、台湾出身のシカゴ響のコンサートマスター、ロバート・チェン、別府アルゲリッチ音楽祭出演等でおなじみの韓国のチェリスト、ソン・ヨンフン(ユンソン)と共演。丁々発止か三位一体か? この敏腕3名のソロは実に楽しみだ。ドヴォルザークの7番は、エーテボリ響及びウィーン・フィルとCD録音を行っているに耳を傾ける『ハートフル コンサート』も今年で25周年。こういう企画は長く続けてこそ意義がある。区切りの年に登場するのは黒柳と同世代の外山雄三だ。黒柳ともゆかりの深いN響を外山は若い頃から振り、また以前はテレビで冠番組を持っていたほどトークもうまい。身内に音楽家の多い黒柳のこと、チョンの隠れた(?)十八番。重厚さと哀愁を併せ持つ名曲ながら、8、9番に比べて演奏機会が少ないので、これもぜひ生体験したい。 「音楽こそが、国境や理念、宗教や文化の違いを越えて、世界に平和をもたらす唯一の手段である」─緊張関係が強まる今、このチョンの言葉を、熱き名演と共に噛みしめよう。大ベテランを相手に昔話に花が咲きそうだ。音楽は外山の指揮で《魔弾の射手》序曲に始まり、「時の踊り」(《ジョコンダ》より)、《マドンナの宝石》より間奏曲、ワルツ「金と銀」など、肩の凝らないライトな選曲となっている。「ボレロ」(ラヴェル)ではオーケストラの華麗なサウンドも堪能できるだろう。黒柳徹子外山雄三 Photo:三浦興一左から:チョン・ミョンフンとアジア・フィルハーモニー管弦楽団/ロバート・チェン/ソン・ヨンフン

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