eぶらあぼ 2014.8月号
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2810/8(水)19:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.comトッパンホール エスポワール シリーズ 10 北村朋幹(ピアノ) Vol.2 ̶室内楽俊才の新境地&異才の初ソロを一夜で堪能文:柴田克彦北村朋幹ダニエル・ゼペック佐藤しのぶ ソプラノ・リサイタル 2014 ~歌に生き 愛に生き~9/15(月・祝)15:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp佐藤しのぶ(ソプラノ)トスカと私の人生を重ねて歌います取材・文:小田島久恵Interview 今年でデビュー30周年を迎える佐藤しのぶが、人生とともに役を深めてきた《トスカ》をリサイタル形式で歌う。共演はメトロポリタン・オペラなど世界的な歌劇場で主役級のパートをこなしてきたテノールの市原多朗と、《ラ・ボエーム》《ドン・カルロス》など大作オペラへの出演が続くバリトンの堀内康雄。輝かしいスター歌手たちが集う、稀有な演奏会となる。 「このプログラムは演奏会形式で《トスカ》の全幕を歌うのではなく、佐藤しのぶという歌手とトスカを重ねて、1人の歌姫のドラマを2部構成で描こうという試みです。ドラマ形式のリサイタルとでもいいましょうか。第1部はオペラの2幕で、トスカがカンタータを歌い、スカルピアが食事をしながら聴いているシーンから始まり、堀内さんがスカルピアの〈テ・デウム〉を歌うところが最後になります。第2部ではトスカがスカルピアを殺害するシーンから、カヴァラドッシと逃亡しようとするところまで一気に歌います。最後のシーンで私は飛び降りませんが、ずっと歌っているので大変です(笑)」 尊敬する先輩である市原多朗との共演は、佐藤にとっても大きな喜びだと語る。 「本当に夢のようで、私はなんて幸せ者なんだ! と皆に感謝しています。市原さんとは以前にも共演させていただいたことはありますが、こういう形で《トスカ》を一緒に歌えるのは感無量です。しかも大活躍中のバリトン、堀内康雄さんとの共演が実現するなんて! ピアノの森島英子さんも、全員が尊敬する芸術家です」 ソプラノ歌手にとっては「声が成熟しなければ歌うのは危険」と言われているプッチーニの《トスカ》だが、佐藤はキャリアの初期の段階でこの役を歌うことを決意した。 「27、8年前に歌いましたが、そのときは若くて、トスカがものすごく大きな存在で、こんな大人の女性をどうやって歌えるのか、と思ったものです。憧れが大きすぎて…歌唱や演技もヴェリズモの様式で難しいですしね。海外でもたくさん歌わせていただきました。ペーター・ドヴォルスキーとシェリル・ミルンズと一緒に行ったツアーは、素晴らしい経験でした」 デビュー30周年はひとつの節目を 北村朋幹は才気溢れるピアニストだ。今年23歳ながら、10代半ばから第一線に立ち、どこか余裕すらも感じさせてきた。その彼が、昨年10月のトッパンホール〈エスポワール シリーズ〉第1回「ソロ」では、自己の限界に迫らんとする渾身の演奏を聴かせた。これぞ若手に飛躍の機会(と責任)を与える当シリーズの妙味。今秋行われる第2回「室内楽」への期待も当然大きい。しかも今回は、彼が共演を切望したドイツのヴァイオリニスト、ダニエル・ゼペックの日本初リサイタルを兼ねる、注目度2倍の公演だ。ゼペックは、アルカント・カルテットやドイツ・カンマーフィル(コンサートマスター)でも活躍する、モダンと古楽両刀の名ソリス感じる、と佐藤。 「これまでの30年は、まわりがキャリアを作ってきてくださった。今からは私の生き方が歌い手という“道”を示していくことになると思うのです。色々な幸運に恵まれてきましたが、それに本当に報いるためには、これからの生き方が大事だと感じています」ト。ベートーヴェンのソナタ第7番&第4番という短調の2曲に、俊英オリヴィエ・マロンのチェロも加わった三重奏曲「幽霊」が並ぶプロも示唆に富んでいる。 「この3曲については、私が大のファンであるゼペックのCDを愛聴している」と語っていた北村の夢叶う喜びとそれゆえの精進、さらには2011年以来ベルリンでの古楽を含めた研鑽と相まって、刮目すべき一夜となる。

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