eぶらあぼ 2014.8月号
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144 音楽堂ではこの2公演以外にも、「音楽堂で聴く聲明」(11/3)、ナタリー・シュトゥッツマンのコントラルト・リサイタル(11/22)や「メサイア」全曲演奏会(12/14)など、バラエティに富む内容の主催事業が用意されている。また、開館60周年を記念して、エッセイ「私と音楽堂」も募集中。神奈川県立音楽堂60周年記念ラインナップと、エッセイ募集についての詳細は下記のURLを参照のこと。問 神奈川県立音楽堂045-263-2567  http://www.kanagawa-ongakudo.com■楽劇《白峯》会見 9月に名古屋と東京で丹波明の楽劇《白峯》が世界初演(演奏会形式)される。作曲家の丹波明や、崇徳上皇を演じるテノールの大野徹也らが出席して6月26日に記者会見が行われた。 《白峯》は上田秋成『雨月物語』の「白峯」をもとに、メシアンの愛弟子であり欧州で半世紀以上も活躍している丹波明が音楽と台本を書き下ろした楽劇(オペラ)。皇位継承を巡る愛憎と運命に翻弄され、保元の乱(1156年)に敗れ、讃岐に流罪された崇徳上皇の無念を鎮める“レクイエム”のようなものとして作曲された。 「具体的な作曲は2000年ごろから開始しましたが、台本も自分で書くことになりました。どのような文体で書くか迷ったのですが、12〜13世紀の物語ですから“偽古文”(文章の末尾を“〜候”とするなど)で書くことにしました。音楽は能音楽の“序破急”の用法を用い、構成にも能の概念を採用しました。全3幕のうち、第1幕と第3幕は夢玄能(現世の者ではない者が登場する場面)、第2幕は現在能(現世の者たちのみで成り立つ場面)で構成しています」と丹波は語った。 また、テノールの大野は自らのパートについて「音楽は、ほぼ普通の会話のテンポで書かれています。どちらかといえば“歌う”というよりも“語る”といったほうがしっくりするかもしれません」とコメントした。 《白峯》の指揮は井﨑正浩、管弦楽はセントラル愛知交響楽団。崇徳上皇に大野、西行法師に大塚博章(バリトン)、鳥羽上皇に中鉢聡(テノール)、美福門院(鳥羽上皇の第2夫人)に飯田みち代(ソプラノ)など■開館60周年を迎える神奈川県立音楽堂 1954年11月に全国で初めて公共音楽専用ホールとして設立された、神奈川県立音楽堂。優れた音響を誇り、多くの著名な音楽家から高い評価を受けているこのホールが今年開館60周年を迎えた。まさに「還暦」を祝うべく、記念の年にふさわしい公演ラインナップが6月24日に行われた記者会見で発表された。登壇者は、一柳慧(作曲家/神奈川芸術文化財団芸術監督)、篠﨑靖男(指揮者)、彌勒忠史(声楽家/演出家)の3名。 「良い音楽の誕生は優れた建築に触発される要因も大きい。このホールは開館以来、コンセプトや意志がぶれることなく続けてこられた。これは大事なことであり、将来的にもホールを活かす方針を変えずにビジョンを考えていきたい」と一柳が挨拶で述べた。 続いて「神奈川県立音楽堂 還暦!記念週間」の一環である「60周年記念オーケストラ・コンサート」(11/9)で神奈川フィルハーモニー管弦楽団を指揮する篠﨑は「武満徹さんの『セレモニアル─秋の歌』、一柳先生の『マリンバ協奏曲』、そして音楽堂が次の世代に向けてさらに発展することを祈って、ストラヴィンスキーの『火の鳥』などを選んだ。演奏については舞台を最大限に活用したい」と語った。 最後に、開館60周年記念特別企画として上演されるヴィヴァルディのオペラ《メッセニアの神託》(日本初演)(2015/2/28、3/1)を演出する彌勒が「音楽堂の音響空間を活かすには、ヨーロッパの宮廷で上演されていた小編成のバロック・オペラがふさわしいと思った。また、オペラは元来、貴族のお祝いの際に演奏されていたので、音楽堂の60周年という記念に向けて、本来の祝祭性を反映させたい。ファビオ・ビオンディ指揮エウローパ・ガランテらの演奏も楽しんでほしい」と述べた。ちなみに1737年に初演されたこの《メッセニアの神託》、今回はビオンディによる1742年ウィーン版の改訂版での上演となる。《白峯》の楽譜を持つ丹波明左より:篠﨑靖男、一柳慧、彌勒忠史 Photo:M.Terashi/TokyoMDE

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