eぶらあぼ 2014.6月号
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54【CD】『アリエ 〜オペラ・アリア集』ソニー・ミュージックダイレクトMECO-1021(SACDハイブリッド盤)¥2857+税 5月21日(水)発売 舞台で今、最も「覇気」を感じさせるバリトン――須藤慎吾の歌を聴くたび、そう思わずにはいられない。藤原歌劇団のホープとして期待の須藤、5月にはCDデビューを果たし7月にはそれを記念してのリサイタル、秋も藤原歌劇団《ラ・ボエーム》(11/2・Bunkamuraオーチャードホール)など大舞台が目白押しである。 「初アルバム『アリエ 〜オペラ・アリア集』では、これまで歌う機会の多かったアリアを11曲収録しました。べッリーニの《清教徒》やドニゼッティの《ルチア》といったベルカントものからヴェルディの《リゴレット》《マクベス》《オテッロ》など、近代からはジョルダーノ《アンドレア・シェニエ》の〈祖国の敵〉も入れました。これは恩師のL.サッコマーニが最もこだわる一曲です。先生は言葉一つの表現についてもすごく厳しかったですね。だから、収録の際も先生の存在を背中に感じながら歌いました。その成果が皆様の耳に届けばと思います」 1999年に渡伊し、師のもとで2年も発声法の習得に努めた須藤。「どこにも出演するな」と厳命され、日々、声の響かせ方のみを追求したという。 「自分の発声に悩みぬいての渡航でしたので、留学仲間から心配されつつも師の教えを信じて頑張り続けました。そして2年後のある日、サッコマーニ先生が突然『お前の声が分かったよ! もうオペラを歌っていいぞ!』と言ってくれたのです。その言葉は本当に嬉しかった。それで、ミラノの小さな劇場からオペラに出演していきました。《オテッロ》のイアーゴや《イル・トロヴァトーレ》のルーナ伯爵もこの時期に習得しました。ルーナの〈君が微笑み〉は本当に難しい一曲ですね。バリトンなら皆そう思うでしょう。CDを聴いて下さる皆様のご感想を楽しみにしています」 ステージの威容とは対照的に、ふだんの物腰はごく控えめな須藤。剛柔併せ持つ個性の成り立ちを詳しく尋ねてみた。 「兄が洋楽好きで、小学生でスコーピオンズを聴かされましたが(笑)、高校の時に県の声楽コンクールで第2位をいただき、そこから歌の道が始まりました。11月の《ラ・ボエーム》で共演するテノールの村上敏明さんとは国立音大の同期です。自分は仲間にも本当に恵まれたと思います。テノールもバリトンも一緒になってアクート(高音)合戦をしたり、酒も無茶苦茶呑んだりしましたが、どれも楽しい思い出です…。ところで、無茶といえば、事務所に内緒で空手を長年続けていたんですよ(笑)。あの佐藤勝昭先生に直に教わったのが自慢でしたが、今年はそれも止めて歌手活動に邁進です!」取材・文:岸 純信(オペラ研究家)CDデビューリサイタル★7月12日(土)・王子ホール ●発売中問 フィオーレ・オペラ協会事務局  070-5582-7491興奮を呼ぶ豊かな声量と深い情感須藤慎吾(バリトン)インタビューマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます) 1984年に結成されたアンサンブル「音楽三昧」は、古楽系の奏者が中心ながら、古典ものではなくむしろ近代音楽の名曲を、メンバーでチェロ/ガンバ奏者の田崎瑞博の編曲で独奏曲から大管弦楽曲まで取り上げ、東西を股にかけた音楽による世界めぐりを縦横無尽に行ってきた。2010年、中心的メンバーの田中潤一が逝去してから、活動は長らく休止に追い込まれていた。しかし今回、古楽から現代まで、幅広いレパートリーを持つ菊池香苗(フルート/リコーダー)の加入によってその大きな穴が埋まり、ようやく再開がかなった。今回のテーマは『露西亜』。5人の異才たちがグリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲、ムソルグス“三昧流”露西亜(ロシア)音楽の愉しみアンサンブル音楽三昧キー「モスクワ河の夜明け」、ハチャトゥリアン「仮面舞踏会」、ラフマニノフ「前奏曲」、プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」と、名曲がこれでもかと詰まったおもちゃ箱のようなプログラムを聴かせてくれる。編成に縛られない“曲”本位の選曲。5人が駆け巡りながら織りなす大交響楽の小宇宙。音楽の快楽主義者たちの三昧を、とくとご堪能あれ。 文:江藤光紀★6月18日(水)・東京オペラシティ リサイタルホール ●発売中問 ビーフラット・ミュージックプロデュース  03-6908-8977http://www.gregorio.jp/zammai

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