eぶらあぼ 2014.6月号
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48第661回 東京定期演奏会 ★6月27日(金)、28日(土)・サントリーホール ●発売中問 日本フィル・サービスセンター  03-5378-5911 http://www.japanphil.or.jp「作曲家の肖像」シリーズ Vol.97 スーク★6月29日(日)・東京芸術劇場コンサートホール ●発売中他公演 6/24(火)・サントリーホール、6/25(水)・東京芸術劇場コンサートホール(バルトーク:ピアノ協奏曲第3番/共演:ピョートル・アンデルシェフスキ/ストラヴィンスキー:「春の祭典」他)問 都響ガイド03-3822-0727 http://www.tmso.or.jp ドヴォルザーク、スメタナ、ヤナーチェク…に続くチェコの作曲家といえば…ヨゼフ・スーク! ドヴォルザークの生徒であり義理の息子でもあるという彼は、後期ロマン派から近代に至る音楽史の中で「強烈に目立つことはないけれど、気がついた人は幸せになれる」という“四つ葉のクローバー”的な存在。作曲にあたっては民謡などにあまり頼らず、独自のロマン派音楽街道をひた走って、多くの聴き手に「こんないい曲があったとは」というサプライズをプレゼントしているのだ(つまり、まだまだ知られてない作品の宝庫だということ!)。 首席客演指揮者となって早くも4年目のシーズンを迎え、登場するたびに評価を高めているチェコ出身のヤクブ・フルシャも、お国ものだからという関係を飛び越え、音楽そのものに惚れ込んでいる。6月の「作曲家の肖像」シリーズで聴けるのは、見事な音楽の語り部であるスークの2大名作。19世紀の知られざるスークのファンタジーヤクブ・フルシャ(指揮) 東京都交響楽団終わりに書かれた「おとぎ話」は、ラドゥース王子とマフレナ姫の運命的な愛、そして童話のようなファンタジーを4つの作品にした組曲。その約10年後に書かれた「夏の物語」は、5つの曲から成る壮大(しかし牧歌的)な交響詩であり、初夏の香りを漂わせる6月末のコンサートにはぴったりだ。 ドヴォルザーク好きならこの2曲は押さえないと!と声を大にして言いつつ、フルシャの端正な指揮で再構築されるスークの音楽を堪能して欲しい。文:オヤマダアツシヤクブ・フルシャⒸPetra Klačková フィンランド出身の若手指揮者ピエタリ・インキネン。ニュージーランド響の音楽監督を務めると同時に、オペラ上演でも国際的な躍進を続けており、ドラマティックな筋書きを端正にまとめ上げる腕には定評がある。2009年の日本フィル首席客演指揮者の就任“北欧の感性”で挑むマーラーの大作ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団直後から、両者はマーラー撰集と題して交響曲第3番のような大作も含む交響曲群にチャレンジし、第1番「巨人」及び第5番はその成果としてCDリリースもされている。 来る6月の定期で取り上げる交響曲第6番「悲劇的」はそれらに続くもの。実は本来2011年4月に行われるはずだったが、東日本大震災によって流れてしまった演目だ。昨年集中して上演したシベリウス交響曲シリーズも、ナクソスからのCDリリースと並行して大きな評判を呼んでいるが、この間、両者はより絆を強め、満を持してのこのコンサートになったといえよう。いったん流れた演目を3年の月ピエタリ・インキネンⒸ浦野俊之日を経て取り上げる点にも、思い入れがうかがえる。 巨大かつ複雑な「悲劇的」は、オーケストラにとっても指揮者にとっても体力がいるだけではなく、ドラマティックな場面展開や魂をえぐる感情表現を要する点でタフなチャレンジだ。来年からは正指揮者・山田和樹が武満作品と組み合わせた形でマーラー連続上演を行うので、日フィルの今を彩る二人の若手“旬”指揮者の個性を比較しつつ味わうという点でも興味深い。両者ともに抜群の耳をもつが、インキネンの音楽にはいかにも北欧出身らしい透明な空気感がある。「悲劇的」のもつドラマ性が、この空気感を通じてどんなふうに浮かび上がるだろうか。文:江藤光紀

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