eぶらあぼ 2014.6月号
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34スロヴェニア マリボール国立歌劇場《カルメン》★6月7日(土)〜7月2日(水) 全国各地で公演問 コンサート・ドアーズ03-3544-4577詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.concertdoors.com 1991年にザルツブルク音楽祭とウィーン国立歌劇場でセンセーショナルなデビューを飾って以来、現代を代表するメゾソプラノの一人として、第一線で活躍を続けているヴェッセリーナ・カサロヴァ。バロックからモーツァルト、そしてベルカントのメゾとして名声を得たが、近年は《ドン・カルロ》のエボリ公女、《タンホイザー》のヴェーヌスなどより重い役柄に挑戦し、成功を収めている。なかでも《カルメン》のタイトルロールは、長く専属歌手をつとめたホームグラウンドであるチューリヒ歌劇場でヨナス・カウフマンと共演して絶賛されたのをはじめ、世界中で歌っている得意のレパートリーだ。陰影に富んだ声を生かし、場面に応じてパワフルな強音から官能的な語りまでを自在に操るカサロヴァのカルメンは、21世紀の個性的なカルメン像の一つだといえよう。 そのカサロヴァの《カルメン》の舞台上演をようやく日本で体験できる。スロヴェニアを代表する歌劇場、マリボール国立歌劇場と来日するのだ。 「とてもワクワクしています! 日本には何度も行きましたが、世界でもっとも素晴らしく、理解力に富んだ日本の聴衆との再会が本当に楽しみです!」 カルメンという役柄、そしてカルメンという女性を、カサロヴァはどうとらえているのだろう。 「カルメン役は、女性歌手にとってあらゆるオペラのレパートリーのなかでもっとも特別であると同時に、誤解されてきた役柄だと思います。カルメンは、ルールや慣習に従わず、自分の望むものを自分で決める女性です。男性がみなカルメンを求めるのは、彼女が美しいからというだけでなく、すべての男性を拒むからなのです。カルメンは自分で恋人を選ぶ。だからこそ求められるのです」 「カルメンは伝統的に、ネガティヴに解釈されてきました。ある時は野獣のように、ある時はホセを破滅させる“ファム・ファタル”のように。けれどこのオペラの本当の被害者は、ホセに棄てられるミカエラと、別れを受け入れられず、ホセに殺されてしまうカルメンなのです。犯罪者はホセであり、カルメンではありません。だから私は、カルメンにシンパシーを感じるのです」 カルメンは歌手にとって、憧れであると同時に難役でもある。カサロヴァの視点では、カルメン役の難しさはどこにあるのだろう。 「声楽的には、さほど難しい役ではありません。大変なのは、舞台にほぼ出ずっぱりでいなければならないことです。この役をやりとげるには、肉体的にも精神的にも、多くの経験が必要なのです」 新しいカルメン像を描くカサロヴァ、これは見逃せない舞台となりそうだ。取材・文:加藤浩子「カルメン役をやり遂げるには、多くの経験が必要なのです」ヴェッセリーナ・カサロヴァ(メゾソプラノ)インタビューマークのある公演は、「eぶらあぼ」からチケット購入できます(一部購入できない公演、チケット券種がございます) 知将・沼尻竜典の呼びかけにより、NHK交響楽団をはじめ国内外のオーケストラから選りすぐりの若き名手たちを集めて、1995年に結成されたトウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ。今回の定期では、音楽監督の沼尻のタクトで、日本を代表する作曲家である武満徹と、夭折の天才作曲家モーツァルトによる2つの「レクイエム」を核に据えた。武満の「弦楽のためのレクイエム」は、濃密な弦の響きが感動を呼ぶ初期の傑作。ここに、バロック期以来の伝統が生きる“モツレク”が、時空を超えて共鳴する。モーツァルトで共演する栗友会合唱団とは、やはり武満の「混声合唱のための『うた』」か共鳴しあう2つのレクイエム沼尻竜典(指揮)トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズら「翼」も。さらに、沼尻自身の編曲で武満の「MI・YO・TA」と、やはり日本を代表する作曲家で、沼尻の師でもある三善晃がカーネギーホール100周年記念で委嘱された「弦の星たち」(ヴァイオリン独奏・水谷晃)を組み合わせる。古典と現代、器楽と声楽に精通した沼尻ならではのラインナップ。多彩な響きの波に揺られよう。文:笹田和人第67回定期演奏会 ★7月27日(日)・三鷹市芸術文化センター風のホール ●発売中問 三鷹市芸術文化振興財団0422-47-5122 http://mitaka-art.jp/ticket沼尻竜典ⒸK.Miuraトウキョウ・モーツァルトプレーヤーズⒸMarco Borggreve

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