eぶらあぼ 2014.6月号
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《ラ・ボエーム》から始まった輝かしい歴史 日本のオペラ界の屋台骨を支えてきた藤原歌劇団が、今年、創立80周年を迎えている。 カンパニーの名は、“吾等のテナー”と呼ばれて愛され、欧米で活躍した初代総監督・藤原義江(1898~1976)に由来する。記念すべき第1回公演は1934年6月7・8日、日比谷公会堂でのプッチーニ《ラ・ボエーム》。公演の5日前には新聞に異例の全面広告も掲載された派手な旗揚げ公演は、上演クォリティの面でも集客面でも大成功だったという。 これまでに上演した演目は80作品以上。戦後まもない時期の帝国劇場での、1興行あたり20~30公演という凄まじい連続上演の数々や、サンフランシスコ条約が結ばれたばかりの1952年からの3度の渡米公演などは快挙としか言いようがないし、現在では当たり前になっている日本語字幕を初めて導入したのも藤原歌劇団だった(1986年)。 近年、意欲的に取り組んでいるのが、ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバル芸術監督アルベルト・ゼッダを招いてのロッシーニ上演。その世界的権威によって鍛え抜かれた実力をあらためて見せつけたのが今年1月のロッシーニ《オリィ伯爵》だった。当代きってのロッシーニ歌手シラグーザの圧巻の歌唱はもちろん、緻密なアンサンブルによる上演で、80周年イヤーの幕を開けた。豪華な歌手陣が結集してアニバーサリーを祝う 6月、旗揚げ公演と同日、同会場で行なわれるのが80周年記念コンサート。所属歌手が勢揃いのガラで祝う。終演後には、晩年の藤原義江が住まいとして利用していた帝国ホテルで記念パーティも開かれる。 同じく6月に上演する《蝶々夫人》は、《ラ・トラヴィアータ》と並んで、藤原歌劇団の最多上演作品の一つ。なかでも、日本の伝統美が薫る故・粟國安彦演出の舞台は、同団を代表する名プロダクションだ。題名役の清水知子、山口安紀子、佐藤康子という、次代を担う期待のソプラノと、ステファノ・セッコ、笛田博昭の二人のピンカートンが歌声を競う。指揮は、こちらも注目の若手実力派・園田隆一郎。 旗揚げ演目と同じ11月の《ラ・ボエーム》では、創立80周年の藤原歌劇団アニバーサリーにふさわしい話題の公演が目白押し特 集笛田博昭《蝶々夫人》粟國安彦藤原義江2007年の《蝶々夫人》公演から

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