eぶらあぼ 2014.6月号
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181 わが国では珍しい常設の弦楽四重奏団として、年間70回以上の公演をこなすほか、幼児や学生、地域コミュニティを対象としたコンサートにも力を注ぎ、さらには後進の指導など、多層的な活動を通じて、室内楽の愉悦を伝え続けるクァルテット・エクセルシオ。結成20周年を機にCDシリーズを始動、第1弾にドヴォルザークとボロディンの佳品を選んだ。この20年間で紡ぎ上げられた、音楽上の会話の濃厚さたるや、もはや言うに及ぶまい。それどころか、アルバム全体に満ち溢れ、いつしか聴く者をもそっと包み込んでしまう、温かで幸福な空気は一体どこからやって来るのだろうか。(笹田和人)ボロディン&ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲集/クァルテット・エクセルシオ◎ボロディン:弦楽四重奏曲第2番 ドヴォルザーク:◎同第12番「アメリカ」 ◎「糸杉」より第1曲・第11曲クァルテット・エクセルシオ 1999年以来、クラシック以外の音楽にも積極的に取り組んできたムローヴァ。その集大成の一つになるであろうアルバムだ。かねてからブラジル音楽に傾倒してきた彼女が、海辺の都市リオの強い湿気に屈することなく、愛器ストラディヴァリウスを携えて現地で録音。ブラジルの民衆音楽を代表するショーロ、サンバ、ボサ・ノヴァなど全13曲が収録されている。共演は、夫のマシュー・バーリー(チェロ)、カリオカ・フレイタス(ギター)ら、信頼する名手たち。愛する音楽を心の赴くまま、本当に楽しそうに歌う姿が、映像のような色彩と臨場感で迫ってくる。(渡辺謙太郎)ストラディヴァリウス・イン・リオ/ヴィクトリア・ムローヴァ◎ヴォジレール:きれいな花(アイ・ヨーヨ) ジョビン:◎ジンジ ◎バラに降る雨 ◎愛のことば ◎生涯をこめて ◎デ・アブレウ:チコ・チコ 他ヴィクトリア・ムローヴァ(ヴァイオリン)マシュー・バーリー(チェロ)カリオカ・フレイタス(ギター)ルイス・ゲーロ、ポール・クラルヴィス(パーカッション) これを“日本的”と形容するのが適当かは分らないが、西欧、あるいはロシアの演奏家による「ラフ2」とは一味違う美演。冒頭から細やかな表情付けと抑制された清潔な歌い口が実に美しく、従来聴き慣れた演奏が油彩の重ね塗りだとすれば、まるで水彩画を見るかのような味わいである。と言っても、スケール感の不足は感じられず、第1楽章や第4楽章のクライマックスでは光彩陸離たる大迫力を聴かせてくれる。甘美なアダージョでも常に品格を失わない。この曲のファンには新鮮な感動を、苦手なファンにも大いにアピールできる名盤。仙台フィルの上手さにも驚く。(藤原 聡)ラフマニノフ:交響曲第2番/山田和樹&仙台フィル◎ラフマニノフ:交響曲第2番山田和樹(指揮)仙台フィルハーモニー管弦楽団 吉松隆の初期の作「優しき玩具」はギターとハーモニカによる作品として親しまれてきたが、同時期に作曲されたピアノ小品群が3集からなる同タイトルのピアノ独奏曲集として日の目を見ることになった。「あごのはずれた小さなソナチネ」を加え、2分前後の小曲が実に37曲。曲調は、さわやかなBGM風のものから叙情的でリリカルな旋律、ロック調から現代風のスパイスのきいたバラードまで、おもちゃ箱を開陳したかのようにバラエティ豊かで、随所に耳を心地よくくすぐる工夫がなされている。それぞれの特性をピアノの河村泰子がよく掬い上げていて、イメージが大きく膨らんでいく。(江藤光紀)吉松隆:優しき玩具/河村泰子吉松隆:◎優しき玩具 第1集〜第3集 ◎あごのはずれた小さなソナチネ河村泰子(ピアノ)収録:2013年10月、富士見市民文化会館ナミ・レコードWWCC-7751 ¥2500+税収録:2013年8月、リオ・デ・ジャネイロ、スタジオ・ヴィソム・ディジタル東京エムプラス PONYX-4130 ¥2857+税収録:2013年9月、日立システムズホール(仙台市青年文化センター)(ライヴ)オクタヴィア・レコード OVCL-00532 ¥3000+税収録:2013年11月、埼玉、コピスみよしカメラータ・トウキョウCMCD-28303 ¥2800+税CDCDCDCD

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